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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
372/621

episode 372 「光臨」

記憶破壊者、マスターはメディアの忠実なる右腕だった。もともと魔獣だった彼は、メディアの力によって魔族へと昇格した。彼女の力が混ざったことで彼女の力を一部引き継ぎ、記憶を消す術を身につけた。


自分を魔族へと引きあげてくれたメディアに深い感謝を抱いたマスターは、彼女への貢ぎ物をげんせんし、そして育てるために武術大会を開いた。メディアはマスターからの貢ぎ物に大変喜び、またその喜びはマスター自身の喜びでもあった。


だが最近、メディアはマスターの貢ぎ物に興味を示さなくなった。実はそれはゼロに逃げられたことが原因なのだが、マスターは貢ぎ物の質が悪いためだと認識した。そのため以前よりもより一層厳選に厳選を重ね、ようやく砂浜近くで身を潜めていたオイゲンを見つけた。早速彼の記憶を消去し、大会へと出場させた。そしてオイゲンの実力はマスターの想像を遥かに越えていた。


しかし、まだ足りない。何かを求めていたメディアに渡すのにはまだその何かが足りない。そう感じたマスターはオイゲンをチャンピオンとして君臨させ、さらにその質を高めていった。


そして今回の大会を終えたらメディアに渡そう、そう考えていたがそこにゼロたちが現れた。ゼロは他の出場者とは格が違った。オイゲンの最後の相手としては最高級のものだった。


だがオイゲンは負けた。それどころか記憶を取り戻しつつあり、ゼロと共に逃走を図った。


魔族として生まれ変わってから今日ほど絶望した日はなかっただろう。再び記憶消去したオイゲンを従えながら考えるマスター。だがそれと同時にとても喜ばしい日でもある。今自分達から逃げているのはメディアが探していた男、ゼロなのだから。



(やつさえ差し出せばきっとメディア様も元気を取り戻されるだろう。そうすればまた俺に好意を向けてくださるだろう)



来るべき未来の妄想にふけるマスター。


メディアから逃げきるほどゼロの力は強い、それは認めざるを得ない。しかし今自分のとなりにはチャンピオンであるオイゲンがいる。一度ゼロに負けたとはいえ、それは記憶の混濁が原因だ。完全に消去した今、それもない。これほど心強いパートナーは居ない、そう考えるマスター。



「そのゼロとやらを殺せば俺たちは自由なんだな?」

「ああ、そうさ」



オイゲンを含めた数人を罪人として捕らえていると嘘の記憶を植え付け、実質的にオイゲンを操っているマスター。前回のような反逆も無いだろう。


「やつは逃げ出した大罪人だ。今まで何百人もの人間を殺している。油断するな」


あながち間違いでもないゼロの情報をオイゲンに伝えるマスター。


「しかし殺すな。やつは裁判にかけ、罪を償なってもらなわねばならない」

「同感だ」


マスターの提案に頷くオイゲン。だがゼロという言葉にはどこか既聞感があった。



(なぜ記憶を無くしているのかはわからんが、その名には聞き覚えがある。よっぽど世間を騒がせた極悪人なのだろう)


セシルとは違い、ゼロの名を聞いても記憶を呼び覚ますほどの効果はなく、それを確認できたのはマスターにとっても大きな収穫だった。



(やはり俺の力は不完全……本当に大切な記憶は本人の意思とは関係なくバックアップをとっているようだな。そして俺の力ではそこまでしたものを消すことはできない……)


改善点、それはすなわち成長への切符。


(メディア様に与えられたこの命、無駄にはしません。必ずやあなたのお役に……)


再びメディアへの忠誠を誓うマスター。


(まずは目先の問題だ。ゼロを捕らえなければなにも始まらん)


ゼロは既に射程圏内に捉えていた。オイゲンもマスターもそれほど機動力の高い方ではないが、連戦に次ぐ連戦によってボロボロのゼロを追い詰めるのは容易いことだった。



「いたぞ! あそこだ!」



マスターがゼロを指差す。オイゲンがそれに答え、ゼロに向かってスピードを上げたそのときだった。


突如目の前が真っ白に光輝いた。光は辺り一面を包み込み、どんどんと広がっていく。


世界の終わり、オイゲンにそう錯覚させるほどにすさまじい光が止んだ頃、その中心地には一人の女性が立っていた。


全身は鎧に包まれ、とても荒々しい。しかし僅かに覗いたその瞳からは凛々しさと神々しさを感じる。彼女から放たれるオーラは強さという概念を超越したものとなり、オイゲンは自然のうちに膝まづいていた。




「神……」




マスターは答えを得ていた。初めてメディアとあったときと同じ程の衝撃だった。目の前の女性からは魔の気配は一切感じない。だとするならば残された答えは一つ。



「私はアテナ。魔を滅ぼす存在なり」



十闘神アテナが光臨した。

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