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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
370/621

episode 370 「記憶破壊者」

レックスとロミーは完全にゼロのことを忘れていた。二人ともマスターを守るためにゼロを迎え撃つ。



「レックス、引く気は無いんだな?」

「レックス? 誰のことだ?」


ゼロは仕方なくナイフをしまい、拳でレックスに語りかける。レックスの攻撃をかわしながら的確に関節に攻撃を仕掛けていくゼロ。



「ふむ、やはりこの男ではゼロには届かないか」


鈍い音をあげながら倒れていくレックスを無慈悲な表情で見下ろすマスター。



「だがこの女ならどうかな?」


レックスの背後からロミーが飛び出してくる。近接戦闘は分が悪いと感じたゼロはロミーから距離をとり、ナイフを投げつける。


「ロミー、悪いがお前に仲間意識は無い。多少の怪我は覚悟してもらおう」

「なめないで!」


ロミーは立ち止まり、腰を入れながら正拳突きを放つ。


「勢ィ!!」


拳から放たれた衝撃でナイフは弾け飛び、衝撃はその勢いのままゼロを襲った。踏ん張りがきかず、一メートルほど後方に吹き飛ばされるゼロ。


(っ……直接攻撃を食らわなければ何発かは受けきれる。だがあの拳を直に受ければ一発でおしまいだ)


連続して攻撃を受けるのだけは避けたいゼロ。標的になら無いようにすぐに立ち上がる。


「あちゃ、やっぱり拳じゃ無理か……」


ロミーは人差し指を一本立て、先程と同様に拳を突き出す。


(覚悟すれば攻撃は耐えられる。攻撃の動作の後の一瞬の隙、そこを狙い撃つ!)


ロミーに向かっていくゼロ。だが攻撃がくる寸前で悪寒を感じ、横へと体を反らす。



「ん! 勘がいいね!」


ロミーの攻撃はゼロの後方にあった鉄製の街灯に当たった。街灯にダメージはないと思われたが、よく見ると直径一センチ程の穴が開いていた。


「範囲は狭いけど威力は高いよ!」


ロミーは連続して先程の攻撃を繰り出してくる。銃よりも遥かに高いその殺傷能力になすすべもなく逃げ回るゼロ。


「ほらほらほら!」


ロミーは上機嫌で攻撃を続ける。そのため気がつかなかった、騒ぎを聞き付けてやって来た衛兵たちに。



「なんの騒ぎだ!」

「近づくな!」



ゼロが慌てて声を張り上げるが、すでに時遅し。ロミーの繰り出した攻撃によって衛兵たちは血を流しながら倒れていく。


「あ!」


ロミーも一般人を巻き込んでしまったことに動揺し、攻撃を止める。だがマスターはそれを許さない。


「早く攻撃を再開しろ」

「でもマスター! このままじゃあの人たち……」


ロミーはマスターに抵抗する。


「そうだな、このままじゃ苦しめるだけだ。早く止めを刺してやれ」


マスターに一切の慈悲は無い。泣き出しそうなロミーに命令を下す。



「いやだ! 私は軍人だ!」



ロミーはマスターに叫び声をあげる。


「あれ、私……軍人……」


ロミーの頭の中に何が入り込んでくる。


「ちっ……」


マスターは鉄の棒を取り出し、混乱するロミーの頭に振り下ろす。ロミーは小さく悲鳴をあげ、その場に倒れる。



「面倒だ、俺が直接相手をしてやる」

「ならばしてもらおうか!」



マスターの背後からオイゲンが拳を振り下ろす。咄嗟のことに反応しきれなかったマスターはまともにその攻撃を受け、遥か彼方へと吹き飛ばされていく。



「ごばばばばばば!!!」



ゼロはすぐさま衛兵たちの手当てへと移る。だが皆体を貫かれており、医者に見せなければ危ない状況だ。


オイゲンも戦闘を終え、ゼロのもとにやって来る。


「そんな連中は放っておけ」

「俺だってそうしたい。だがそうしてはならない理由がある」


またしてもレイアの顔が頭に浮かぶ。レイアなら絶対に見殺しにはしない、そう確信していた。


「ふざけるな! またあいつらのような連中が来たらどうする!? だいたいこの者たちはもう助からん!」

「あてはある……」


(アカネ。彼女の薬があればきっと助けられる。ここからメイザース大神殿まではそう遠くはない。だが……)


撃たれたのは六人。とてもゼロ一人で運べる人数ではなかった。


「オイゲン、お前の力が必要だ」


ゼロは真剣な眼差しでオイゲンを見つめる。


「だが……」


ゼロの真剣さに心が揺らぐオイゲン。



「行かせないぞ」


聞こえるはずの無いマスターの声に二人は振り返る。


「バカな……」


自慢の一撃を完全に決めたオイゲンは、マスターの姿に驚きおののく。


今までこの腕で倒せなかった敵など居なかった。記憶を無くしてはいるものの、それだけは自信をもって言えた。だが目の前のマスターは、まるで無傷だった。






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