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スティールスマイル  作者: ガブ
第二章 モルガント帝国
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episode 37 「ゼロ」

レイアは暖かい日差しを全身に浴びて気持ちよく目を覚ました。爺やの煎れたモーニングコーヒーを飲みながら、一日の予定を確認する。


仕事をこなして日課の散歩に出掛けるレイア。今日も街は平和だ。行き交う人々に手を振りながら進む。


何やら人の気配を感じ、後ろを振り返る。そこには悲しげな、そして優しげな青年が立っていた。どこかで見たような気もするが、思い出せない。


「お別れだ。元気な、レイア。」


そう言うと青年はぎこちない笑顔を残してスーと闇の中に消えていく。


その顔を見て一気に記憶が流れ込んでくるレイア。


「ゼロ、さん?」


レイアは青年を追いかけて闇の中に飛び込む。


「ゼロさん!」


青年の姿は見えない。


「行かないで!」





レイアは見知らぬベットで目を覚ました。


記憶が混乱している。ここはどこ?爺やは?そしてあのゼロという青年は?



「お目覚めですか。手荒な真似をお許しください。」


声をかけてきた女の軍人にも見覚えがあった。レイアは段々と思い出す。



屋敷が襲われ、爺やを始め使用人全員が殺されたこと。自らも命を狙われゼロという青年に助けられたこと。一緒に旅をしてヴァルキリア家のある帝都モルガントまで来たこと。ゼロは敵に囲まれ、自分はこのリースに連れ去られたこと。ここはおそらくヴァルキリアの屋敷だろう。


悲しい記憶が一気によみがえり、涙が溢れそうになる。必死にこらえてリースに訪ねる。


「ゼロさんはどこですか?」


その質問に一瞬動揺するリース。


「彼は、役目を終えたと言って去っていきました。」


嘘だ。直感でそう感じるレイア。だが問いただしてもリースは本当の事を言わないだろう。


レイアはベットから立ち上がり、屋敷の外へと向かう。


「どちらにいかれるのですか!」


「自分の目で確かめます。」


リースの手を振りほどき、出入り口へと向かう。ドアを開けようとすると、それはひとりでに開きそこにはローズが立っていた。


「レイア、目覚めたのか。」


ローズは脇から血を流し、全身ボロボロだった。


「大佐、もういいでしょう。手当てを。」


リースはローズに肩をかす。



「ローズ、どうしたのですかその怪我は。」


嫌な予感がする。ローズは何も答えない。外に目をやると明らかに戦闘のあとがある。


レイアは外に落ちているひとつのものに目が釘付けになる。急いで駆け寄り、それを拾う。


ゼロの帽子だった。

帽子には血が滴っており、被っていた本人がどうなったのかは容易に想像がついた。


レイアは帽子を持って、ふらふらと帝都をさ迷った。真っ白な服にはベッタリと血がつき、周囲の人々から異様な目で見られる。



どこを探してもゼロはいなかった。



死の一文字が頭をよぎる。


涙が頬をつたう。ゼロの前では決して見せまいとしていた涙が溢れだす。それを止めることはできなかったし、止める必要もなかった。



レイアは兵士たちによって屋敷に連れ戻された。それからレイアは誰とも口を利かずに部屋に閉じ籠った。




ケイトは屋敷近くの林に身を潜めていた。


ゼロが倒れてからローズに飛びかかったが返り討ちにあい、気づいたときにはもうすでにローズとゼロの姿はなかった。しばらくして血だらけのローズだけが屋敷に戻ってきた。


ゼロの死を悟るケイト。悲しみと怒りに震える身体を必死に押さえて、ローズへの復讐を虎視眈々と狙う。


やがてレイアが飛び出してきた。ゼロの帽子を拾い、どこかへ行ってしまう。無事だったのかと追いかけようとするが、すぐさま兵士が屋敷の中から現れて断念する。


レイアが連れ戻されてから二日後。


レイアはやつれていた。髪の毛の艶は失われ、肌は荒れ、目の下には濃い隈ができていた。



「いい加減何か口にしたらどうですか。」


リースが食事を運んでくる。


「結構です。」


レイアは二日間何も口にしていなかった。



仕方なく食事を下げるリース。後片付けをしていると軍から支給された端末が鳴り響く。



緊急連絡

港に不審人物が現れたとの事。近場の兵士は至急、向かわれたし。



リースはレイアの部屋の鍵をかけ、港へと向かう。






港には棺桶を背負った男が降り立っていた。



「ここがモルガントか。ようやく着いたね、ねぇさん。とりあえずここの人たちに挨拶をしようか。」


銀髪のその青年は眼鏡を拭き、棺桶の蓋をあける。中には桃髪の女性がいた。女性は固まったまま動かない。まるで剥製のようだ。




「ゼロ、ここにいるんだろう?今から二人で会いに行くよ。」



Lの殺し屋、レイリー・メル。そしてMの殺し屋、ムース・メル。二人の悪魔がやって来た。




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