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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
368/621

episode 368 「VSロミー&レックス」

ロミー・チルッタ。彼女もまたシオンのように剣よりも拳での戦いを得意とする軍人だ。加護はもたず、シオンのような特別な力もない。だが彼女にはそれに相当する技術があった。


(オイゲンにダメージを与えたあの攻撃を食らうわけにはいかない。今の俺が食らえば一撃であの世行きだ)


ゼロの体には未だに無数の破片が刺さっていた。無理に引き抜けば大量出血をまねき、結果としてロミーの攻撃が届くよりも早く死が訪れる。だがゼロはあえてそれを引き抜いた。



「え、何してるのさ。自殺?」



その様子を引き気味に見つめるロミー。


当然ゼロに自殺願望など無い。ゼロはポケットから小瓶を取り出す。


「またなんか取り出した」


ロミーは迂闊に近づくのをやめ、警戒を強める。


(アカネ、使わせてもらうぞ)


ゼロは瓶から取り出した液体を身体中に塗る。中身はほとんど使いきってしまったが、その効果はすさまじく、彼の傷はみるみるうちに塞がっていく。



「なーんだ。薬だったんだ。それにしても凄い回復速度だね。でもそんなことより本気の君と戦える……」

「そうだな」



ゼロはロミーの反応速度を遥かに上回る速度で彼女との距離を詰める。


「え!」


ゼロのナイフでの攻撃を寸でのところで避けるロミー。だが左腕に傷を負ってしまう。


(クソ、避けられたか)


ゼロはすかさず蹴りで追撃するが、ゼロの攻撃に慣れ始めたロミーが身をかわす。



「いったぁあ!」


左腕をおさえるロミー。それほど深くはないが、太い血管を切ったらしく血は止めどなく流れていく。


「諦めろ。その出血じゃ手当てしなければ死ぬ」


ロミーに逃走するようにとすすめるゼロだったが、ロミーに引く様子はない。布を引きちぎり、左腕に巻き付ける。そして再びゼロに向かって構えをとる。


「これは試合じゃない。諦めるってことは死ぬってことだよ」


ロミーは自慢の蹴りをゼロに向かって放つ。


(タイミングドンピシャ! こっちも怪我してるけどあっちもさっきまで重傷だった! 避けられるはずは……)


相手がゼロでなければロミーの想像していた通りの結果と成っていただろう。だが彼女が今戦っているのは元組織最強の男、惨殺のゼロだ。


ゼロはロミーの蹴りを見切り、彼女の顔面にカウンターの蹴りを繰り出す。完全に不意を突かれたロミーに避けることはできず、そのままゼロの攻撃を食らってしまう。


「っ!」


ロミーは鼻から血を流し、そのまま気を失った。



「しばらく寝ていろ」


ゼロはわずかに残ったアカネの薬をロミーの左腕に塗り、オイゲンの方へと向かう。



オイゲンは圧倒的な力でレックスを痛め付けていた。レックスも決して貧弱な肉体をしているというわけではない。実際この国でであった誰よりも屈強で誰よりも逞しい体つきをしていた。一回戦ではその実力を発揮してはいなかったが、二回戦第一試合では相手の攻撃を一切寄せ付けずに勝利を納めていた。だが、オイゲンが相手ではまるで子供のようだった。



「かはっ!」



ヘロヘロになりながらも拳を握りしめるレックス。


「レックス!」


彼に駆け寄るゼロ。


「よう……ロミーは負けたか。決勝進出ってか?」

「バカなことを言うな。すぐに手当てをしなければ……」


薬を使いきってしまった為、直接診療所へレックスを運ぼうとするゼロだったが、背後から近寄ってくるオイゲンがそれを許さない。



「もういいだろう! こいつに敵意はない!」


オイゲンが何をしようとしているか想像がつくゼロは必死でレックスを庇う。


「駄目だ。驚異は全て排除する。ここでこの男を生かしておく理由は何もない。殺す理由はいくらでもあるがな」


オイゲンの容赦ない殺気がレックスを襲う。それはまるで雪山に裸で投げ出されたかのような絶望感だ。耐えることなど到底できず、レックスはガタガタと震え出す。


「死に……たくねぇ!」

「当然だろうな。だがもうお前は死ぬしかない」


オイゲンの腕が振り上げられる。振り下ろされれば一瞬であの世行きだ。


「どけ、ゼロ。貴様はまだ殺すわけにはいかない」

「いいや退かない。レックスは死なせない。お前にも殺させない」


ゼロはオイゲンの前に立ち続ける。しばらく両者のにらみ合いが続いたが、ロミーの一声でこの戦いの幕はおりる。



「帰ろ、レックス」



ロミーは顔を押さえながらレックスに声をかける。腕の傷はアカネの薬によって回復したが、顔からはまだ血が滴っている。


「もう目覚めたのか」

「薬のおかげだね。あーあ、勝ちたかったな」


ロミーはレックスの方に近寄ってくる。だがそこには当然二人をいかせまいとするオイゲンの姿もある。



「おとなしく寝ていれば良かったものを」

「そうもいかないよ。私、軍人だもの」


両者の敵意がぶつかり合う。一触即発の雰囲気だ。


「オイゲン、ここで二人に手を出すなら俺は二人の側につく。三対一だ。流石のお前でも無事では済まない。無論、俺もな」

「……」


オイゲンは少し考えた後、二人への敵意を納める。



「今度また会ったら喧嘩しようね」


ロミーは瀕死のレックスを抱えて、二人の前から姿を消した。



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