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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
367/621

episode 367 「追跡者」

弾は全弾ゼロめがけて飛んでくる。避けきることはできないし、当たればまず助からないだろう。


観客はまだ気がついていない。唯一事情をしる実況だけが固唾を飲んでゼロの行方を見ている。



「さらばだ。強きものよ」



マスターはゼロの死を確信し、自分の席へと戻っていく。そのすぐあと、観客の悲鳴でゼロの死はさらに確立されたものとなる。


「……な」


自分の男は思わず拡散器を手に取り、自分が目にした光景を観客に伝える。



「な、なんということだぁ! 突如狙撃されたゼロをチャンピオンがかばっただとぅ!」



「なに!?」


その声を聞いてマスターは急いで会場を見下ろす。そこにはゼロに覆い被さるオイゲンの姿があった。



オイゲンの鋼の肉体は銃での攻撃を完全に弾き飛ばし、ゼロを死から回避させた。


「……オイゲン。やはりオイゲンなのか?」


ゼロは覆い被さるオイゲンに尋ねる。


「ゼロと言ったな。貴様が先程口にしたセシルとやらについて、どうやら俺は知る必要があるらしい」



オイゲンは若干動揺を見せるゼロに向かって告げる。そしてゼロを持ち上げ、会場の壁に向かって渾身の一撃をはなつ。会場の分厚い壁は簡単に崩れ落ち、オイゲンとゼロはその穴から外へと飛び出す。



「捕えろ! なんとしてもチャンピオンを行かせるな!」


マスターが警備員たちに命令を下す。観客が撃たれたこと、そしてチャンピオンがまさかの逃走で会場は大騒ぎだ。おかげで警備員たちはうまい具合に身動きがとれず、ゼロたちを追いかけることができずにいた。


「どけ! 撃ち殺しても構わん!」


マスターは銃を天に向かって乱射しながら会場に乗り込んでくる。それを見た観客たちはさすがに騒ぐのをやめ、自らの安全を確保する。


マスターはレックスとロミーに近づいてくる。


「貴様ら、チャンピオンとゼロを捕らえてこい! 金ならいくらでも出す! チャンピオンを生かして連れてこい! ゼロはぶち殺して構わん!」


金を地面に投げつけながら二人を怒鳴り付けるマスター。二人はさほど金に興味はなかったが、ここで逆らってもろくなことにはならないと理解していた。



「えらいことになっちまったな!」

「まったく、私の試合はどうなるんだよ!」



レックスとロミーは不満をたらしながらも、楽しげな顔でオイゲンの開けた穴から二人を追いかける。




「下ろせ! 俺は金が必要なんだ!」


オイゲンに抱えられたままのゼロが叫ぶ。


「下ろせば貴様はやつらに捕まる。そうすれば金どころではない。間違いなく殺される」


オイゲンはそう答え、後ろを振り返る。まだ追っ手は来ていないが、ゼロの滴る血が二人の居場所を知らせている。足を止めれば追い付かれるのは時間の問題だ。



「とか思ってる?」



いきなり二人の前で声がする。そこにはロミーが立っていた。


「ロミー・チルッタだったが。一体何のようだ? 返答によっては貴様を殺さねばならん」


オイゲンはロミーに対して敵意を剥き出しにする。



「はぁはぁ、速すぎだぞおめぇ!」


後ろからレックスもやって来る。オイゲンとゼロは二人に完全に挟み撃ちにされてしまった。



「マスターが君たちを捕らえろってさ」


ロミーが構えをとる。



「金か……?」

「んーま、お金は欲しいけどさ……騒ぐんだよね、血が」



ロミーはいきなりオイゲンに襲いかかった。


「一回戦いたかったんだ! 試合じゃなくて、本当の戦いを!」


ロミーの拳がオイゲンの胸に直撃する。実に鋭い突きだったが、ただの突きではオイゲンにダメージを与えることはできない……筈だった。



「ごっ!」


実際はオイゲンは血を吐き出し、胸を押さえる。


「加護……か!?」

「加護? ううん。神様になんか頼らないでも人は人を殺せるんだよ?」


オイゲンに更なる追撃を加えようとするロミー。だが強烈なゼロの殺気に気がつき、後ろへと下がる。



「ゼロ、君にとってもチャンピオンを倒せるいい機会じゃないか。邪魔しないでよ」

「断る。オイゲンは俺の仲間だ。ここで痛め付けられているのをただ見ていることなどできない」


ゼロはポケットから小型のナイフを取り出す。


「あー! 検査で武器はとりあげられたはずでしょ!? なんでもってるんだよう!」

「俺は元殺し屋だ」

「答えになってない!」


ロミーは標的をゼロにかえ、襲ってくる。ゼロもまた、自分の身を守るためにナイフを握りしめる。


「ちょっと待った! そこまでだ!」


レックスが二人の間に割ってはいる。だがゼロとロミーは止まらない。


「ちょっちょっちょ!」


間一髪で二人の攻撃を避けるレックス。しかしすぐにオイゲンの攻撃が飛んでくる。


「どわっ!」


オイゲンの攻撃もまた紙一重で避けるレックス。


「貴様も敵ならここで死んでもらう」

「なんだってんだよ!」


仕方なく拳を構えるレックス。組み合わせは変わってしまったが、奇妙な形で準決勝が始まろうとしていた。

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