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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
365/621

episode 365 「第二回戦」

その場に居た全員の視線が自然とゼロに集まる。羨望の眼差し、諦めの眼差し、哀れみの眼差し。さまざまな眼差しがゼロを貫く。


「悪いことは言わねぇ、棄権しろ」


レックスが真面目な表情でゼロに語りかける。


「私もそれについては同意見だぜ。君とはいろいろ語り合いたかった。勿論拳でもね。でもここでチャンピオンと戦えば君は絶対死ぬ」


ロミーもレックスと同じようにゼロへ棄権を奨める。



トーナメント方式。そう決まった時点でチャンピオンと同じブロックに選ばれるだろう三人は棄権を余儀なくされる。その証拠に同じブロックのモンスとトッドは既に勝負を諦めている。



「忠告はしたからな、頼むぜ?」


明日の第一試合に決まったレックス。ゼロのことを気にはしていても自分の試合のことに集中したい様子だ。そう言い残して控え室へと帰っていった。


「私もそろそろ帰るよ。お腹もすいたしね」


ロミーは口で言うほどゼロのことは気にしてはいない様子で控え室へと戻っていく。


モンスとトッドが帰り支度をするのに対し、ゼロは勿論棄権すること無く控え室へと入っていく。


(オイゲンに何があったのかを確認するまでここを離れるわけにはいかない。だが彼がオイゲンでは無いとしたら……)


あの男から感じられたオーラは間違いなく怪物級だった。あの腕から放たれる攻撃を一撃でも浴びればさすがのゼロでの戦闘を続行することはできないだろう。


(本気でかからなければ死……本気でかかったところで勝てる可能性はゼロに近い……だが)


不安に陥れば陥るほど、より鮮明にレイアの顔が浮かんでくる。


「オイゲン、お前には悪いが勝たせてもらう」


ゼロは精神を研ぎ澄ませていく。来るべき戦いに備えて。



次の朝、レックスとアルバの第一試合が始まった。試合は終始レックスが主導権を握り、危なげなく勝利した。


そのまま続けて第二試合が行われた。ロミーとキキョウの一戦。ロミーの拳法の腕は素晴らしく、相手の喧嘩じみた攻撃を全ていなし、的確に攻撃を当てていく。


「まだ続ける?」


キキョウは勝負を棄権し、ロミーがコマを進めた。



「よう、試合見たぜ」


試合が終わったばかりのロミーに声をかけるレックス。ロミーは試合のあとだと言うのに汗ひとつかいていない。


「明日は実質決勝戦。楽しみにしてるよ」


ロミーはレックスにそう告げて食堂へと向かっていった。



「ふー、厳しそうだな」


揺さぶりをかけようとしたレックスだったが、ロミーに軽くあしらわれ、逆に萎縮してしまった。




続けて第三試合が始められたが、両選手とも棄権したため試合は行われなかった。


そしてそのままチャンピオンが出場する第四試合が行われようとしていた。だが観客たちはそれほど盛り上がってはいない。どうせ今回もチャンピオンの不戦勝で決まりだと誰しもが考えていたからだ。明日の準決勝に備えて早々と帰り支度をする者も居る。


チャンピオンであるオイゲンも無駄に試合会場を訪れようとはせず、誰も現れないまま第四試合は終わりを告げようとしていた。


しかし、次の瞬間会場ははち切れんばかりの歓声に包まれた。



「あのやろう……死にに行きやがった!」


レックスはその様子を見て顔をしかめる。



ゼロだ。ゼロが会場に姿を現したのだ。チャンピオンのオイゲンもゼロの登場に少し驚きながら会場へと足を踏み入れる。両者がまみえたことで、会場は過去最大の怒号に揺れる。



「殺れ! ぶっ殺せ! 内蔵をぶちまけろ!」

「キャー! 殺戮ショーの始まりよ!」


観客は勝手なことを口々に言っている。



「うるさいハエどもだ」


オイゲンがイライラした様子で呟く。


「逃げずに来るとはな。よっぽどの愚か者か、はたまたただの自殺志願者か」

「そのどちらでもない。お前を倒し、俺は賞金を手に入れる」


ゼロのまさかの返しにオイゲンは目を見開く。


「とても金に執着があるようには見えんがな」

「俺が執着するものは別にある。金はあくまでもそのためだ」


ゼロは構えをとる。オイゲンは一切構えない。



「オイゲン、お前の事情は知らない。だが、俺は俺のためにお前を倒す」

「俺の何を貴様が知っている? 俺はチャンピオンだ。チャンピオンとしての自分の役目を全うして見せる」



会場の盛り上がりは最高潮だ。拡散器の男も一観客としてこの空気を楽しんでいる。



「ではではお待ちかね! 第二回戦第四試合……開始だぁぁぁぁぁ!!!!」


試合が始まった。





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