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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
361/621

episode 361 「アテーナの都」

「ここか……」


ゼロは巨大な城塞都市の前に居た。その大きさは帝都モルガントと比べても遜色無く、ここテノンの首都でもある。


早速中に入ろうとすると、衛兵が飛んできてゼロの侵入を拒む。



「身分証はあるか?」


衛兵はとても屈強で、完全装備している。


「無い」


ゼロのその言葉を聞くと、衛兵の態度は激しさを増す。



「止まれ! アテーナは厳戒体制を敷いている。身分の分からない者を通すわけにはいかない。早々に立ち去れ!」


だがゼロとて簡単に引き下がるわけにはいかない。ここへ来たのには理由がある。



「これが身分証代わりだ」


ゼロは拾ったチラシを衛兵に見せつける。衛兵はチラシを見て不思議そうな顔を浮かべる。



「ほう、武術大会のチラシか。だがお前のようなモヤシが参加するっていうのか?」


小馬鹿にした態度でゼロに接する衛兵。


「勿論だ。俺はどうしても金がいる」


そこで衛兵は思わず吹き出してしまう。


「ぶはっ! 記念参加じゃなくて優勝を狙う気か!?」


そして真面目な顔でゼロの両肩を掴む衛兵。



「やめておけ、毎回死者が出る危険な大会だ」

「余計なお世話だ。通してもらおう」


ゼロの態度に、言葉で言っても無駄だと悟った衛兵は武器と装備を脱ぎ捨てる。



「俺の仕事は不審者を町へ通さないことだが、お前のような勘違い野郎をみすみす死なせないよう追い返したりもする。ちなみに大会には俺も参加する。俺に勝てないようであれば、当然優勝などでき……」


喋りながら宙を舞う衛兵。


「ないいいいい!!!!」


派手な音をたてて地面に激突する衛兵。



「では通らせてもらう」



ゼロはそう言い残してアテーナの都へと足を踏み入れる。



「お、おい!」


急いで持ち場を他の衛兵に代わってもらい、ゼロを追いかける衛兵。面倒だと感じたゼロは速度をあげて逃げようとするが、衛兵はしつこく追いかけてくる。


(なかなかしぶといな……)


ゼロはそれなりに本気で逃げているつもりだったが、衛兵は見失わない程度についてくる。その様子を見て侵入者を追いかけていると勘違いした他の衛兵たちがゼロの周りに集まってくる。



「そこの男! 止まれ!」


武器を片手に詰め寄ってくる衛兵たち。数はざっと10人は居そうだ。


(くそ、結局騒ぎになってしまったか)


ゼロは穏便に済ませるのを止め、衛兵たちを迎え撃つ準備をする。



「取り押さえろ!」



一斉に襲いかかる衛兵たち。ゼロがナイフに手を伸ばしたその時、例の衛兵がゼロの前に飛び出した。


「はぁはぁ! 待てって!」


息を切らしながら何かを手渡す衛兵。



「おい、レックス! 離れろ!」


駆けつけた衛兵たちはレックスと呼ばれた男に退くように指示をする。


「お前らも待てって! こいつは大会の参加者だ。参加証を渡しそびれちまってよ」



ゼロは受け取ったものを確認する。それは武術大会の参加証だった。


「それがなきゃ出場できねぇぜ?」


レックスはポンとゼロの肩をたたく。



「まったく、紛らわしい!」

「お前もなぜ逃げる?」

「ま、レックスに追い回されたら逃げたくなる気持ちもわかるけどよ」

「ちげえねぇ」



衛兵たちは口々に言い合ったあと、笑いながら持ち場へと戻っていった。



「なぜだ?」



衛兵たちに手を振って見送るレックスに問いかけるゼロ。


「わるかったな。お前には十分参加する資格がある。それが言いたくてよ」


レックスは都の外で会ったときよりもかなり気さくな感じで話しかけてくる。本来の彼の性格はこちら寄りなのだろう。


「それがありゃ宿はただで泊まれる。勿論食事つきだ」


レックスは宿を指差す。


「大会は明日の正午。都の中心地にある闘技場で行われる。絶対来いよ、今度は俺が勝つからな!」


そう言ってレックスは持ち場へと戻っていった。


ゼロはレックスに紹介された宿へと向かう。レックスの言うとおり宿は無料で泊まる事ができ、充分すぎるほどの食事も用意された。


(レックスか。面白い男だが、手加減はしない。俺には金が必要だからな)


レックスのことを思い出しながら食料を口へと運ぶゼロ。味は文句無いものだったが、それでもやはりレイアの料理の方が格段上だと感じる。


(レイア……無事でいてくれ)


ゼロはレイアのことを想いながら、眠りへとついた。




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