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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
360/621

episode 360 「別れと旅立ち」

「クソっ! あの野郎……!」



目を覚ましたカズマは、ゼロが居ないのを確認すると地面に拳を叩きつけた。


物心付いたころから喧嘩に明け暮れていたカズマだったが、ここまでこっぴどくやられたのはあのとき以来だった。



「アカネは俺が守るって決めたのによ!」



アカネは以前、汚い大人たちに金儲けの道具として奴隷同然の扱いを受けていた。そこからアカネを助け出すために奮闘したカズマだったが、その時も死の境をさ迷うほどの大怪我を負っていた。今回は外傷はほとんどないが、心傷はあのときのそれ以上だった。


「負けたのは俺だ! なのに何であいつがここを出ていく!? 俺に情けをかけたつもりか!?」


ゼロにコケにされたようで、怒りが溢れるカズマ。いくら地面に発散しても、その怒りはおさまらない。



「別にカズマのためじゃねーよ」


ゼロの居た部屋からひょっこり顔を覗かせるアカネ。彼女は彼女でゼロとの別れにそれ相応の葛藤があったようで、その証拠に彼女の顔は赤く晴れ上がっていた。


「どういうことだよ」


彼女の泣き顔を見て怒りが更に倍増するカズマ。


「アイツは、ゼロは、レイアって娘のために戦ってんだよ。だからこんなところにいつまでもいちゃいけねーんだ」


鼻水をすすりながらアカネが答える。


「クソ……」


ゼロが居なくなったことで内心ほっとしたカズマだったが、それでも心の奥底にポッカリと穴が空いてしまった。



(レイアか……ほんと、羨ましいよ。アタシもそんな風に想ってもらいたかったな)


アカネは涙を拭き取り、前を向く。ゼロは居なくなってしまったが、それでも彼女にはたくさんの仲間がいる。リーダーである彼女がいつまでも下を向いていたら彼らも先へは進めない。アカネは胸を張り、彼らを導くと決意する。



「よっしゃ! カズマ! お前たち! またゼロが来てくれたときのためにも、アタシたちはアタシたちの出来ることをやるよ! まずはこのきったねー神殿の後片付けだ!」


アカネが皆に指示を出す。


「えーかったりーすよ!」


したっぱたちはぐちぐちと文句を垂れる。



「やるったらやるんだよ! わかったか!」


文句を言うしたっぱたちに喝を入れるカズマ。


(見返してやる……そんでもって今度来たときは俺が必ず勝つ!)


闘志を燃やすカズマだった。





ゼロは街道を歩いていた。アカネから餞別で渡された薬のお陰で傷はまた塞がった。



「あの、その、具合が悪かったら飲んでもいいぜ?」


アカネにそう言われ、実際に一口飲んでみると、確かに体調がよくなり、足取りも軽やかになる。


(結局どんな薬か聞きそびれてしまったな)


その質問にだけはなぜかアカネは一切答えてはくれなかった。よっぽど貴重な薬なのだろうと勝手に解釈し、納得するゼロ。


オルフェウスとの戦いですっかりナイフは刃こぼれしてしまったが、幸いアカネたちが所有していたナイフを譲ってもらえた。だが銃の弾はアカネたちは所有しておらず、神殿にも当然ながら備えは無かった。


(急ぎたいところだが仕方がない。どこかの町へ寄らなければな)


だがここでゼロは重大な見落としていたことに気がつく。


「……しまった」


ゼロは一切のお金を持っていなかった。多少持ち合わせはあったものの、全ていざないの森で焼けてしまった。



(どうする、手荒な方法ならいくらでもあるが騒ぎはなるべく起こしたくはない。それに何よりそんな方法でレイアを助けたとして、彼女は何と言うだろうか? 責任感を感じさせてしまう可能性もある。それは絶対に避けたい)


下を向き考えながら歩いていると、足元に何やらチラシが落ちていることに気がつく。それを拾い上げ、しっかりと目を通したあとポケットへとしまうゼロ。


「面白い」


一言呟くと、ゼロは何処かを目指して進んでいった。





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