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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
359/621

episode 359 「決闘」

アカネはすっかり顔を腫らして部屋から出てきた。その姿を見た不良の一人はすぐさまゼロの部屋へと向かおうとする。


「ちょっとまちな! どこ行くってのさ!?」


鼻声で叫ぶアカネ。


「あいつ、いい加減我慢できねぇ。助けてやった恩を忘れやがって……」


止めようとするアカネを振りきり、ゼロの休む部屋へと乗り込む男。そこは自分達のアジトだというのに、なぜか別空間のような異様な雰囲気を醸し出していた。



「誰だお前は」



明らかに不機嫌そうなゼロ。少しつつけば敵意をぶつけられそうだ。それでも男は一歩前へと出る。


「泣かせやがったな、アカネを」

「何のことだ?」


まるで見当のついていないゼロの姿に、怒りを隠せない男。思わず胸ぐらを掴み、声を張り上げてしまう。



「決闘だ! 俺と決闘しろ! お前が勝てば俺はひきさがる。だが俺が勝てばお前には直ぐにここを出ていってもらう!」



そんなことを言うつもりはなかった。ただアカネの泣いている理由が知りたいだけだった。だがそれでもこのゼロという男に対しては、決着をつけておかなければならない、そう思った。


「俺が誰だがわかっているのか?」


ギロリと男を睨み付けるゼロ。それだけで格の違いを思い知らされる。


「お前が誰かなんてどうでもいいんだよ、それとも逃げるってのか?」


乗るに足らない実に安い挑発だった。だがそれでもゼロはあえて乗ってみることにした。この男の真剣さが伝わってきたからだ。



「いいだろう。案内しろ」



ゼロは男に連れられて、神殿の祭壇前に案内された。そこは、信者たちが使っていたであろう机や椅子が撤去されており、広い空間ができていた。



「おい、カズマ! ゼロはまだ怪我治ってねーんだぞ!?」


アカネが二人の決闘を止めようとするが、二人に止めるつもりは更々無い。したっぱたちは二人の決闘に大いに盛り上がっており、アカネが無理やり止めようとでもすれば、反乱が起きる可能性は充分にあった。



「やっちまえカズマさん!」

「姉御の隣はカズマさんの席だってんだよ!」

「でてけでてけ!」



神殿内はカズマコール一色となり、ゼロには容赦ない罵声が浴びせられる。


「おまえらっ……」

「黙らねぇか!!」


したっぱたちを止めようとするアカネを遮り、カズマが叫ぶ。



「いいか、これは俺とこいつの決闘だ。お前たちが見物するのは勝手だが、邪魔するってんなら容赦しねぇ。文句があるってんならかかってこい、俺が相手だ」



カズマの一言で神殿内は静まり返り、それ以上騒ぎ立てるものは現れなかった。



「俺は構わないが?」

「俺が構うんだ。お前の為じゃねぇ」


ゼロに中指を立てて見せるカズマ。


空気が張りつめていく。



「あいにく今は本調子じゃない」

「なんだ? 戦う前から言い訳か? 男らしくねぇ」


ゼロを蔑むカズマ。


「いや」


ゼロの姿がカズマの目の前から消える。



「手加減は出来ないということだ」


ゼロの声が聞こえたかと思った次の瞬間、カズマの脇腹を激しい痛みが襲った。


「がっ! てめえ!」


が、ゼロのダメージも思ったより多く、カズマを気絶されるほどの力は無かった。そしてカズマの反撃で、傷口を殴られてしまう。



「ごっ!」


激しく出血するゼロ。傷口が開いてしまったようだ。


「か、カズマ! アンタ……!」


黙って見ていられなくなったアカネが決闘の場に足を踏み入れようとするが、それをゼロが手で制止する。


「大丈夫だ……」


血をぬぐいながらゼロが答える。


「で、でもよ!」

「今は決闘中だ。俺がこいつなら同じ戦法をとる」


二人のやり取りを黙って見ていたカズマがニヤリと笑う。



「男じゃねぇか。いたぶってやろうと思ってたけどよ、次で沈めてやるよ」


カズマは鉄の棒を取り出し、ゼロに向かっていく。


「カズマ! アンタ殺す気かよ!? お前らもとめろっ!」


アカネがしたっぱたちに呼び掛けるが、したっぱたちはそれどころではなかった。



「化け……物」



したっぱたちはゼロから放たれるオーラに圧倒されていた。恐怖し、絶望した。そして心からあそこで向かい合っているのが自分でなくて良かったと胸を撫で下ろした。



「カズマ、と言ったか」

「ああ、それがなんだ!」



一歩も動かないゼロ。



「お前がここを去る必要はない。去るのは俺だ」

「ああ、そんな事言われなくてもわかってるぜ!」


カズマの鉄の棒が振り下ろされる。



「いや、今言っておかなければならない。お前が目覚めたときには、俺は既にここには居ないだろうからな」



それがカズマが聞いたゼロの最後の声だった。







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