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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
356/621

episode 356 「意思」

オルフェウスは地面に転がっているゼロとアーノルトを無視し、リザベルトのもとへと直行する。



「未完成甚だしい。だが、完成すれば偽神どもに一撃を与えるには充分な戦力だ」



リザベルトを乱雑に持ち上げ、連れ帰ろうとするオルフェウス。


「いつまで寝ている?」


アーノルトの前を通りすぎながら吐き捨てるオルフェウス。アーノルトは死にかけの体を叩き起こし、必死でオルフェウスの後についていく。


オルフェウスに抱えられたリザベルトは、ピクリとも動かない。だが、彼女からあふれでるエネルギーはオルフェウスをも感心させるものだった。



「不憫だなアーノルト。お前はいくら努力してもその力はせいぜい人を越える程度のものでしかない。俺様やこの女のように神の領域に足を踏み入れることは決してあり得ない」



微塵も哀れみの表情を見せずにアーノルトに告げるオルフェウス。アーノルトは何のリアクションも起こさず、生き残るために目の前の魔族についていく。



満足そうなオルフェウスだったが、ゲートを潜ろうとした瞬間、急に不機嫌な顔をする。


「……貴様はそこで寝ていろ」



足元を見るオルフェウス。彼の足はしっかりとゼロに掴まれていた。再度ゼロの頭を踏みつけようとするオルフェウスだが、何か異変を感じとる。


「貴様……」


ゼロの意識は途絶えたままだった。リザベルトを連れていかせない、レイアへの手がかりを逃さない、その一心で、信念で、本能でオルフェウスに食らいついていた。



「その意思に免じて、俺様の足を薄汚れた手で二度も触れたことは許してやろう」


そう言ってオルフェウスはゼロの足元にワープホールを出現させる。


「足掻け虫けら。そうやって再度俺様の足元までたどり着けたのなら、その時は相手をしてやる」


ゼロの体はワープホールに吸い込まれていった。


アーノルトはその様子をどこか羨ましそうな表情で見送った。




ゼロが飛ばされた先はメイザース大神殿だった。主を失った神殿は不良たちのたまり場と成っており、傷だらけの男の出現に不良たちはあわてふためいた。



「おいっ! 男が降ってきた!」


明らかにしたっぱといった感じの男がゼロを指差す。その声で他の不良たちも続々とゼロのもとに集まってくる。


「いったい何の騒ぎだ?」

「姉御!」


神殿の祭壇に腰かけたリーダー風の女性が近寄ってくる。美人だが、とても目付きが悪く、髪もボサボサで化粧をしている雰囲気もない。



「たっく、ようやく信者どもを追い払って落ち着いたってのに、また面倒事かよ」



不機嫌そうな表情を浮かべ、タバコをふかしながら近づいてくる。



「どけ」



その一言でゼロに群がる男たちは道を開ける。


「いちいち騒ぐんじゃねーよ。こんな面倒なやつは外へ捨てて……」


ゼロの顔を見て言葉を失う女性。



「……かっけぇ」


「え?」



女性から聞こえてきたまさかの言葉に思わず聞き返してしまう男たち。


「何ぼさっとしてやがる! 早く手当てしろ!」

「は、はいっ!」


女性の指示でゼロは男たちに運ばれていった。


女性は男たちが去ったのを確認して座りこみ、顔を手で覆う。


「ついに、見つけたぜ。あたしの理想のひと……」


顔を赤らめながら呟く女性。



(レイア……)


ゼロは真っ暗な闇の中で離れていくレイアの姿を追いかけていた。




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