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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
355/621

episode 355 「リザベルトVSアーノルト」

リザベルトの加護の正体は「正義」。


悪を憎めば憎むほど、彼女の力は増していく。彼女が悪と認識しさえば、たとえ本質的に悪でなくとのその力は発揮される。彼女自身が自分が正義だと信じなければその力は発揮されず、むしろ弱まる。無論、彼女自身が自分の行動を正義だと信じれば、たとえこの世にとっての悪であっても力は発動される。



加護を得たリザベルトの力は、アーノルトにジャンヌを嫌でも思い出させる。その剣筋はジャンヌに酷似し、神の気配さえ感じさせる。


(すごい、この力があれば……)


リザベルトは高まる力を存分に奮った。目の前の悪を倒し、皆を救出するために。



「脱帽だな。明らかに俺の戦闘力を越えている。だが、その力にお前のその非力な体はどこまで耐えられる?」



アーノルトの言葉の通り、リザベルトの体にはとてつもない負荷がかかっていた。小さな器の中心から水が無限に涌き出ている状態だ。器を大きくするか、どこかへ流さなければ器は破裂してしまうだろう。


そして、リザベルトの体は悲鳴をあげ始めた。


皮膚がはち切れ、血しぶきがあがる。痛みはないが、リザベルトの姿はとても痛々しいものと成っていく。



「時間切れだな」



リザベルトの猛攻によって、体の隅々まで切り裂かれたアーノルトだったが、限界はリザベルトのほうが先に訪れた。


力が完全に空回りし、体がついていけない。動けば動くほど傷口は広がり、その分出血量も増していく。



「ハァ、ハァ、私はまだ、戦える……」


息を切らしながらアーノルトに向かっていくリザベルトだが、足は言うことを聞かない。もつれ、倒れ、そのまま動けなくなってしまった。



「気概は認める。だが、お前はまだ器ではないのだ」



アーノルトの蹴りがリザベルトに繰り出される。もちろん今の彼女では避けることはできず、直撃する。リザベルトはそこで意識を断たれた。



「……神の力、か」



アーノルトのその場に倒れる。出血量は思ったよりも多く、彼の横たわった地面が赤く染まっていく。


「オル、フェウス……」


アーノルトもそこで目をつぶった。




激しい戦いを終え、再び生物の気配が消えた荒野。そこに一人の男が立ち上がった。


「今……行く」


立ち上がっては倒れ、立ち上がっては倒れを繰り返しながら、魔族のゲートへと向かう。


「レイア……今……」


ゲートのふちへと手をかけるが、彼の足にも誰かの手がかかる。



「ゼロ、お前を行かせるわけにはいかない」

「アーノルト……!」



ゼロの足にはアーノルトの手がかかっていた。地面を這い、血だらけの手でゼロの足をしっかりと掴んでいた。


ゼロはバランスを崩し、再び地面と接触する。


「離せっ! 俺はレイアのもとに!」

「行かせはしない、その先には絶対に」


ボロボロの二人は命を振り絞って最後の争いを繰り広げる。はたから見れば子供の喧嘩程度にしか映らないだろう。だが二人は譲れないもののため、戦った。



その戦いは唐突に終わりを告げた。



ゲートから一人の、いや一匹の魔族が姿を現したからだ。


「オルフェウス……!」


見た目は完全にただの霧だった。ゼロには何がこちらにやって来たのか見当とつかなかったが、アーノルトは違った。明らかに態度が急変し、叫び声を上げた。しかし次の瞬間には遥か彼方へと吹き飛ばされていた。


「まさか未だに事態を処理できず、貴様自身も死にかけとはな。期待を裏切るとはいい度胸だ」


何が起きたか理解できないゼロに恐怖だけが襲いかかる。



そして恐怖がゼロの耳元に囁きかける。


「ヨハン、メイザース、ヘルメスはともかく、メディア、レヴィ、マリンと対峙して生き残った人間がいるというから楽しみにしていたが……所詮は人間か」



霧は次第に人の姿へと変化していく。



「オルフェウス……貴様が魔族か……!」


這いつくばりながらオルフェウスに敵意を向けるゼロ。その言葉を受けて、オルフェウスはゼロの頭を踏みつける。



「様をつけろ。虫けら」



今度こそ、ゼロの意識は彼方へと飛ばされた。



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