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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
352/621

episode 352 「哀れ」

組織に属していた頃、二人は互いに干渉しようとはしなかった。互いに興味がなかったこともそうだが、ぶつかり合えばどのような被害がもたらされるかを理解していたからだ。


だが、今はそんなことを言ってはいられない。ここでアーノルトを倒さなければ、レイアを救うことはできない。


アーノルトもまた、ここでゼロたちを対処できなければ、オルフェウスからどのような仕打ちを受けるかわからない。場合によっては死ぬことすらあるだろう。



リザベルトは援護する気で剣を構える。あくまで援護だ。怪我だらけで満身創痍のゼロが先頭を切って飛び出していくのを止めることもできず、後方で待機せざるを得ないリザベルト。


ゼロは脇腹を押さえつつ、ナイフをアーノルトに投げつける。手負いだからといって、ゼロのナイフを避けられる者はそうそう居ない。


だが、相手はアーノルト・レバーだ。たとえ万全であっても当たるかどうか怪しい。


アーノルトはゼロのナイフをクナイで弾き上げ、それを反対の手でキャッチする。



「それだけか?」


「まさか」



ゼロは小型のナイフを数本取り出し、アーノルトに降り注ぐ形で投げつける。だがアーノルトはそのナイフを一切見ない。ゼロがその隙をついて突っ込んできたからだ。


「お前がこんな小細工にはしるとはな」


降り注ぐナイフをまともに浴びるアーノルト。どうやらおもちゃだということを見抜いていたようだ。


武器を全て使い果たしたゼロに残されたのは己の肉体のみだった。鞭のようにしなる蹴りがアーノルトの脇腹に命中するが、いまのゼロの状態ではアーノルトの鎖かたびらを突破することができない。ほとんどダメージを与えられないまま、一度距離をとる。


地面にポタポタと血を滴ながら後退するゼロ。身のこなしにキレもなく、その常人離れした殺意がなければただの死にかけの青年でしかない。



「哀れだな。女も救えずここで朽ちていくのは」


アーノルトはゼロの息の根を止めようとクナイを手に近づいてくる。



「はぁぁぁぁぁぁ!」


覚悟を決めたリザベルトがアーノルトに斬りかかるが、全く相手にされない。リザベルトの剣は空を斬り、その脇腹にアーノルトの拳がめり込む。


「ゴッ!」


体液を吐き出し、膝をつくリザベルト。



「向かってくれば殺す」


まるで興味がないように吐き捨て、そのままゼロに向かっていく。だが、リザベルトはあきらめない。



「行か……せるか!」



立っているのが精一杯の状況で、剣を杖がわりにしてアーノルトを追いかける。


「なぜそこまでする? 死に行くのが貴様ら軍人の美学とでもいうのか?」

「そんなわけがない。だが、ここでゼロを見捨てておめおめ生き残ってしまえば、私は私が許せなくなる」


リザベルトは自分よりもはるかに格上の相手に自分が持てる精一杯の殺気をぶつけながら答える。



「……そうか。俺はお前を見くびっていた。わかった、お前もあの世へ送ってやろう」



アーノルトの殺意が直接リザベルトに向けられる。まるで体全体に針を突き刺されるかのような鋭い痛みが走る。抵抗すればするほど針は体に食い込んでいき、一度刺さればもう抜けることはない。


リザベルトは激しい痛みに苦しめられながらも、目だけは必死にアーノルトに食らいつく。アーノルトもリザベルトを排除すべき敵と認識し、迎え撃つ姿勢に入る。



「はぁぁぁぁ!」


剣を握りしめ、突撃するリザベルト。アーノルトもクナイを投げながら真っ向から迎え撃つ。


二、三本クナイをはじいたところでリザベルトの剣は手を離れ、無防備な状態になる。


(しまっ!)


「去らばだ」


アーノルトのクナイがリザベルトを襲う。




「お前は俺を哀れと罵ったが、俺から見ればお前の方がよっぽど哀れだ」


突如背後からゼロの声が聞こえ、リザベルトに振り下ろされる筈だったクナイは必然的にゼロの方へと向かう。ゼロはカウンターを完全に捨て、防御のみに徹する。その甲斐あってか、無傷とはいかないまでもアーノルトの攻撃を受け止めることに成功する。



「今だ!」



ゼロが必死な形相でリザベルトに叫ぶ。また逃げろというのか、と反発しようとするリザベルトだが、ゼロのその顔はそうではなかった。


お前がやれ、はっきりとリザベルトにそう伝わった。


リザベルトは剣を剣をしっかりと握りしめ、怒号と共にアーノルトに向かって振り下ろした。



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