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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
351/621

episode 251 「再開と再戦」

薄暗く、ひんやりとした牢屋。当然ながら娯楽と呼べるものは一つもなく、あるのはトイレと簡易的な寝床のみ。掃除などは全くされておらず、そこらじゅうから悪臭が立ち込めている。明らかに人の体の一部だと思われる物も転がっており、常人ならば発狂しかねない劣悪な環境だ。とても屋敷で暮らしてきた少女に耐えられるレベルではない。


それでもレイアは耐えていた。必ずゼロが助けに現れると信じて。



レイアは先ほど通りかかったアーノルトの事を思い出していた。隣の檻ではフェンリーの文句とそれをなだめるワルターの声が聞こえているが、レイアの耳には入らない。アーノルトの態度とあの顔が引っ掛かっていた。


アーノルトはゼロと同様に感情が乏しく、普通の人間ならば変化など到底読み取ることはできないだろう。だが長い間ゼロと過ごしたレイアにはその力が備わっていた。



(アーノルトさんが、いえあの魔族の方がアーノルトさんとのトレーニングよりも優先する事……それはご自身の事)



ここへ来て数日、オルフェウスの姿を直接見たわけではないが、パーシアスやリラからいくらでもその噂は聞こえてきた。その話から考えるに、オルフェウスはとても自分第一主義で自己中心的な考えの持ち主だという結論に至るレイア。そのオルフェウスが日課をねじ曲げてでも成そうとすることなど自分自身の事以外にはあり得ない。


(一体どのような……)


その結論は直ぐに出た。パーシアスたちの話し声が聞こえてきたからだ。



「まったく、あの男……雑用を押し付けおって!」

「それにしても侵入者なんて初めてね。そもそもどうやって紛れ込んだのかしら」



二人の話し声に必死に耳をたてるレイア。


(侵入者……)



レイアは確信した。ゼロがやって来たのだと。



「ゼロさん!」



気持ちが押さえきれず、大声で叫んでしまう。


「なんだ? 幻覚でも見たか?」


隣のフェンリーがすぐさま突っ込んでくる。


「ゼロを心配するのはいいけれど、妹の事も気にかけてくれよ」


ワルターも不機嫌そうに付け加える。



「す、すみません……」



リースの姿は無い。ここへやった来た初日にセシルと共に何処かへと連れていかれ、それ以降帰ってこない。考えたくはないが、殺されたのだとしたら向こう側から何らかのアクションがあるはずだ。だがそれがないということは二人は生きていると考えているワルター。それでも無事だという保障はどこにもない。


「レイア、君がいっぱいいっぱいなのは俺もわかっている。でもね、俺も君と同じなんだよ」

「はい……」


レイアは飛び上がりたい気持ちを押し込め、ただひたすらに待った。みんなでここを出られる時を。




アーノルトは一足早く荒野へと降り立った。


ここはかつて魔女が破壊したこの星を元に作られているようで、特にオルフェウスのお気に入りの地だ。人工物や生物は全て滅ぼされた後で、見渡す限り平地が広がっている。なのでゼロとリザベルトを発見するのは実にたやすい事だった。


リザベルトは直ぐにアーノルトの気配を察知した。一瞬魔族と間違うほどのその強烈な気配にすぐさま身を隠そうとするが、隠れられそうな場所は何処にもない。



「何をしに来たかはわかっている」



アーノルトが先に口を開く。リザベルトとしては単に逃げてきただけなので言葉の意味がわからない。だがゼロはアーノルトの姿とその言葉を聞いたことで、ここにレイアがいると確信した。


「ゼロ、まだ動いては……」


ゼロは体をふらつかせながらリザベルトのもとを離れる。



「やはりお前か、ゼロ。お前とは何か特別な力で引き合う運命なのかも知れんな」


アーノルトはそれだけ告げ、二人に向かって突っ込んでくる。



「どうでもいい。お前はただ、レイアの場所へと案内すればそれでいい」



ゼロもナイフを握りしめ、アーノルトに向かっていった。




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