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スティールスマイル  作者: ガブ
第一章 ゼロとレイア
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episode 35 「対峙」

帝都の入り口には門番がいた。


「そこで止まれ。お前たち、通行証は持っているか。」


なかに入ろうとすると門番に止められ、通行証とやらの提示を求められる。当然そんなものは持っていない三人。


「無いな。」


ゼロはそう言って何食わぬ顔で中に入ろうとする。門番は槍を取り出し、ゼロに突き付ける。


「貴様、ふざけているのか。何者だ、名を名乗れ!」


「貴様に名乗る名など無いな。」


ゼロは門番を睨み付ける。一瞬怯む門番だが、すぐさまゼロに攻撃を仕掛けようとする。レイアは咄嗟に二人の間に割り込む。


「レイアです。レイア・スチュワート!」


攻撃の手を止める門番。


「スチュワート?どこかで聞いたような・・・」


騒ぎを聞き付けて兵士が駆けてきた。ゼロは銃に手をかけ、ケイトはレイアの影に隠れる。


しかし兵士はレイアの姿を一目みるなり三人を中に入れようとする。それを見て慌てる門番。


「な、勝手なことをされては困ります!通行証を持たないものを中に入れるなど・・・」


その門番を一括する兵士。


「馬鹿者!この方たちはヴァルキリア中尉の御友人だ!」


「し、失礼いたしました!」


門番は頭を下げ、三人を見送る。



中に入り、改めてその巨大さを実感する三人。



ケイトはその巨大さに驚いていた。自分の住んでいた村とは比べ物にならない。人通りの多さも今まで訪れた町を遥かに上回っていた。



三人を中に入れてくれた兵士が敬礼をする。



「申し遅れました。私はヴァルキリア中尉の部下、リース曹長であります。お屋敷まで私がご案内いたします。」


リースは兜を外す。赤いおさげ髪にそばかすが目立つまだあどけなさが目立つ少女だった。


「よろしくお願い致します。わたくしはレイア・スチュワートです。」


二人は握手を交わす。


ケイトも安心したのかレイアの影から出てリースの顔を見る。


「ケイト。」


リースはケイトに向かってにっこり微笑み、よろしくと言葉を返す。


二人との挨拶が終わると今度はゼロの前に立つリース。


「なんだ。」


動こうとしないリースを警戒するゼロ。


「あなた、中尉に勝ったそうですね。私とも手合わせしていただけませんか?」


ため息をつくゼロ。


「断る。なぜ軍人はどいつもこいつも戦いたがる。」


「あなたが中尉に勝ったなど信じられません。私の手で本当かどうか確かめたいのです。」


リースは剣を構える。ゼロは観念したのかリースを見据える。


「リザベルトは強かった。みたところお前も決して弱くはないだろう。だが、お前は見て分からないのか?」


なにが?と思った頃にはすでにリースは地に伏していた。


何が起きたのか全くわからなかったが、激しい痛みと強烈な恐怖が全身を駆け巡る。



「ゼロさん!やりすぎですよ!」


レイアはリースのもとに駆け寄る。


「こういうやからは力の差を示しておかないと何度も挑みかかってくる。これでわかっただろう。」


リースは立ち上がりゼロに頭を下げる。


「ご無礼をいたしました。自分の未熟さを思い知らされました。ですが・・・」



いつの間にか三人は兵士たちに囲まれていた。



「やはりあなたは危険です。ここで消えていただきます。」



ゼロは覚悟を決める。



「レイア、答えは出たか?」


「わ、わたくしは・・・」


ゼロはレイアをリースに向かって突き飛ばす。リースはレイアを連れてその場を去る。



「ゼロさん、ゼロさん!」



レイアの叫びを無視して眼前の敵に集中するゼロ。



「済まないケイト。」


「いい。ゼロと一緒に戦う。」



ケイトはロープを取り出す。





「離してください!ゼロさんが!」


レイアの手を引っ張り走り続けるリース。


「彼の事は忘れるんです!彼は殺し屋です!あなたとは身分が違いすぎる!」


「わたくしはもう貴族ではありません!ゼロさんも、ケイトちゃんだってもう殺し屋ではありません!わたくしの友人です!」


レイアはリースの手を振りほどく。


「ご友人なら、ヴァルキリア中尉が居るではないですか。十分でしょう?」


リースは剣を抜く。


「私に中尉の友人を切らせないでくださいよ。大人しく屋敷まで来てください。」





兵士たちは目の前の子供と青年に手を焼いていた。切り付けるどころか近づく事すら出来ない。


「何をてこずっている!相手は二人だぞ?それも子供だ!こんなことでは曹長に顔向けできんぞ!」


リーダーらしき男が兵士たちに檄を飛ばす。


ゼロはその男の兜を撃ち抜き、怯んだ隙にケイトが首にロープを引っかけて自分達のもとに引き寄せる。


「軍曹!」


兵士たちがうろたえる。


ゼロは軍曹の眉間に銃を突き立てる。


カチ!


銃は弾切れだったが、軍曹を気絶させるには充分な演出だった。統率者を失った兵士たちの動きはバラバラで、彼らの自由を奪うことはそう難しくはなかった。


「ヴァルキリアの屋敷は何処だ!」


震え上がる兵士が丘の上の屋敷を指差す。



「ここは私一人で充分。行って。」


「済まない。」


兵士たちの後始末をケイトに任せてレイアのもとへと急ぐゼロ。




やがて目の前にレイアを抱えるリースを発見する。レイアは気絶しているのか動く気配がない。



「レイアァァァ!」



ゼロに気づいたのか急いで屋敷へと向かうリース。だが、人一人抱えた少女よりゼロの方が明らかに足が速い。すぐに追い付かれそうになるリース。手が届きそうになったその時、人の気配を察知して立ち止まるゼロ。

次の瞬間、先程までゼロが居たところに剣が振り下ろされる。



「気づかれたか。なかなか鋭いじゃないか。」


鎧に身を包んだ女性が立っていた。



「貴様、何者だ。」



ゼロはただならぬ気配を感じていた。まるでフェンリーや、ジャックと対峙した時のような。



「私はローズ。ローズ・ヴァルキリア、ローズ大佐、リザベルトの姉。好きな呼び方で呼ぶといい。君の名は確か・・・なんでもいいか。」




「そこをどけ!」




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