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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
349/621

episode 349 「抗い」

ヘルメスは大変満足そうな表情を浮かべながらジャンヌを労う。


「よしよし、よくやった! 流石は俺のコマだ!」


ジャンヌの頭を撫でようと近づくヘルメスだったが、突進してくるリザベルトを見て動きを止める。



「ハァァァァァァぁ!」


ジャンヌを奪われた憎しみ、なにもできなかった不甲斐なさ、倒れていくゼロ、そしてヘルメスへの恐怖。冷静ではない今の状況が、この賢くない選択を産み出した。


敵うはずの無い相手。ジャンヌとのひとときを邪魔されたヘルメスの苛立ちがダイレクトにリザベルトへと伝わっていく。当然死が頭を過るが、それでも足は止められない。



(私は兵士だ! 私は軍人だ! 私は六将軍だ! ここで引かない! ここで逃げない! ここでこの男に立ち向かう!)



あまりの恐怖に感覚が麻痺し、体の震えは一切無い。



「貴様に興味は無いんだよ」



ヘルメスのその一言と殺気で、一気に恐怖が押し寄せるリザベルト。蛇ににらまれたカエルのようにその体は硬直し、足がもつれて転んでしまう。ちょうどヘルメスに頭を垂れる形で。


「顕著な心がけだ」


ヘルメスは紋章から剣を取り寄せる。それを掴み、リザベルトのうなじに狙いを定める。



リザベルトの足は全く言うことを聞かない。まるで地面と一体化してしまったかのように彼女の体は完全に硬直してしまった。


「死ね」


実に冷たい一言と共に刃が振り下ろされる。




「な……」



ヘルメスの剣は彼自身の左腕によって受け止められる。


「何……!」


更には魔族が移動の際に使用するワープゲートがヘルメスの意思とは関係なく出現する。


「まさか、この女ァ!」



ジャンヌの方を振り向くヘルメス。彼女は相変わらず指示待ちの状態でそこに待機していたが、心なしかその顔は微笑んでいるように見えた。


ヘルメスの視線を逃れたリザベルトの体がようやく動き出す。そして瀕死のゼロの体を掴み、ジャンヌが開けてくれたワープゲートへと躊躇なく飛び込んでいく。



(申し訳ございません。そしてありがとうございます、姉上。必ず助けに戻ります!)



「クソがっ!」


二人の逃走に気が付いたヘルメスがワープゲートへと向かおうとするが、自分自身の左腕に引っ張られて身動きできない。そのまま二人はどこかへと消え、ゲートが閉じた後ようやくヘルメスの左腕は持ち主の支配下へと戻っていく。


すぐさまジャンヌへ駆け寄り、頭を鷲掴みにする。そこに心は無いと知りつつも罵詈雑言を浴びせるヘルメス。



「このアバズレが! 腐れ女がっ! 俺を支配する気か!? お前は俺の所有物だ! 下僕が主人に楯突くんじゃない!」


ジャンヌを殴ろうと手を振り上げるが、その顔を見て振り上げた手を下ろす。



「だが、そこがそそられるな」



ヘルメスはジャンヌを連れて屋敷への扉を開ける。


「あ、そういえばゴミが二匹まだ残っていたな……まあもう一匹かもしれないが。ドラゴン、始末しておけ。勿論森は燃やすなよ」


ドラゴンに向けて命令を下す。


(ゼロ、俺はお前を諦めたりはしない。だがもう生きては戻れないだろうな、あの男が相手ではな)



ヘルメスは少し残念そうにうつむきながら扉を閉めた。







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