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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
346/621

episode 346 「VSドラゴン」

ドラゴンは一般的に蛇、蜥蜴、鳥の親戚などと言われている。確かに蛇のような鱗も、蜥蜴のような手足も、鳥のような翼も生えている。だがどれをとってもその本家とは全く異なり、そのすべてが生物としての次元が一段階上である。


その鱗は炎も水も通さず、その手足はどんな大地でも掴みとり、その翼は大空を支配する。



ヘルメスは実に強欲な男だ。欲しいものがあったらどんな手段を用いても手にいれ、手にいれるための力も持っている。そんなヘルメスがドラゴンに興味をもったのは必然だった。


古今東西ありとあらゆる獣を手にいれたヘルメスだったが、ドラゴンと巡り会うのには相当の苦労と時間を有した。それでも手にいれたのはドラゴンではなく、その死骸だった。それでもヘルメスは大変、心を踊らせた。数百年かけてやっと手にいれたそのお宝を大切に宝物庫に納め、以後数十年に渡って眺め続けた。


だが次第に次なる欲望に刈られる。動いている姿が見たい、食事の風景を観察したい。その力を試したい、と。


そこでヘルメスは魔獣を合成させ、ドラゴンを作り出すことにした。そして何百年もの歳月をかけ、ようやく形になるものを作り出した。その力は本物には劣るものの、たかが人間を数人焼き殺すことぐらいは実に簡単なことだった。



そして今、そのドラゴンはゼロたちを焼きつくそうと口を大きく開けている。



「来るぞ! まともに受ければ骨も残らない!」



ゼロは皆に声をかける。もうほとんど消失してしまった為か、ドラゴンは森へのダメージを一切考えず、その力を存分に奮う。炎を吐き出さずともその手足で少しなぶれば、人間の体内など簡単に破壊され、水風船のように破裂するだろう。その羽ばたきに巻き込まれれば体の意思とは関係なく空に巻き上げられ、大気に漂うチリのように吹き飛ばされてしまうだろう。



ゼロたちの前にいるのは自然の驚異とも呼べる存在だ。戦う手段、対抗法など存在しない。出会ってしまったら最後、逃げるか死ぬかだ。




ドラゴンの炎は地面を灼熱地獄へと変えていく。なんとか避けたゼロたちだが、このまま攻撃をくらい続けたらいずれ逃げ場所を失い、森とともに滅んでしまうだろう。


クイーンは矢に毒を塗りつけ、ドラゴンに向かって放ち続ける。だがドラゴンが少し息を吐いただけで矢は吹き飛ばされ、なんとか届いた矢もその皮膚には刺さらない。


「ああ、もう!」


悔しさのあまり大切な弓を地面に叩きつけるクイーン。


「おいクイーン、熱くなるな」


ゼロが冷静になるように諭すが、死を感じているクイーンには何の効果もない。


「頭を冷やせって? 無理に決まってるでしょ!? 死にかけてんのよ、私たち!」



クイーンとは違い、リザベルトは冷静だった。ドラゴンの攻撃を何度も間近で受けながら生き延びているということが謎の自信を与えていた。それは一種のまやかしではあるものの、今の彼らにとって一番重要な落ち着きを持っていた。



「慌てるな。相手が嵐や台風なら勝ち目はないが、たかがデカイ蜥蜴だ。生きていれば殺せる。だろ? 殺し屋諸君」



リザベルトは殺しのプロたちに微笑みかけ、ドラゴンに向かって突き進んでいく。


「ハァァァァァァ!!!」


剣を握りしめ、炎の海を掻い潜り、災厄の象徴へと向かっていく。


「なんなのよあの子! あんなこと言われて……黙ってみてるわけにいかないじゃない!!」


クイーンは弓を拾い、ふたたび矢を放つ。先ほどまでとは違いやみくもに撃つのではなく、矢が刺さりそうな目や鼻、口や爪の間を狙っていく。



「だな!」


ジャックは体をほぐし始める。そしてドラゴンに向かって全速力で駆けていく。組織最速の足は健在で、直ぐにリザベルトに追い付く。


「な、何をする!」

「慌てんな、俺が連れてってやる」



リザベルトを抱えあげるジャック。困惑するリザベルトだが、ジャックは気にせずにそのままドラゴンへと向かって走っていく。




「リザベルト、お前には本当に救われる。誰よりも幼いというのに……恐れ入るよ」


ゼロもナイフを握りしめ、巨大生物を睨み付ける。体の内にあるすべてのエネルギを殺意に変換し、この世最強の生物に向かってぶつける。それはさすがのドラゴンも無視できないレベルで突き刺さり、一瞬ではあるものの動きを止めることに成功する。


「今だ! やっちまえ!」


ジャックの掛け声でリザベルトは剣を振るう。そのままのスピードで空中へ飛び上がり、その剣激はドラゴンの固い鱗を突破し、その足の指を切断することに成功した。



「グギャオァァァァァ!!」



ドラゴンは生まれてはじめて感じた痛みに苦しみ、空の支配者は地面へと落ちていく。


「蜥蜴さん、這いつくばるのが上手ね!」


クイーンは毒がたっぷりと塗られた矢をドラゴンの目玉に正確に発射する。ドラゴンは足の痛みに夢中で全く矢に気がついていない。


(海獣も気絶させる猛毒よ! せいぜい苦しむといいわ!)



クイーンは勝利を確信するが、その勝利を目にする前に突如目の前が真っ暗になる。


(え?)



「よくもまあ、可愛がってくれたもんだ」



クイーンの体は大きく弾みながら地面を転がっていく。矢はドラゴンに届くことなくへし折られ、ドラゴンはまた空中へと上っていく。


「ヘルメス……!」



ゼロにヘルメスの登場で期待と困惑と恐怖が同時に襲ってくる。




「ゼロ、もういい。死んでくれ」





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