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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
345/621

episode 345 「ドラゴンの驚異」

「……何だ、これは?」


ヘルメスは空間に映し出されたいざないの森の様子を見て愕然とする。自分が手にいれてきた魔獣、人間たちの動きを封じ込めた木が次々と焼かれていく。大切なコレクションが奪われていく。怒りでどうにかなってしまいそうな頭をなんとか働かせ、被害を食い止める方法を考える。


(やつらめ、一体何が目的だ? この俺を呼び寄せようとしているのか? なんのため? ここから逃れるためか?)


考えているうちにもどんどん被害は広がっていく。



「仕方がない、ドラゴンを向かわせるか。ゼロ以外は殺しても構わない」



ヘルメスは紋章を掲げる。すると待機していたドラゴンの目が光り、その巨体を動かし始める。


「行け、焼きつくせ」


ドラゴンは大きな翼を震わせ、ゼロたちの方へと飛んでいく。




「おいおいやべぇな……沈下する弾なんて無いぜ?」


ジャックは頭を抱えている。


「落ち着け、焼死するにはまだ余裕がある。それにクイーンも居るんだろう? 何か手はないのか?」


ゼロは地面にぴったりと体をつけながらジャックに問いかける。


「ああ、だけどあいつにできることなんて俺たちを置いて逃げることぐらいだぜ!?」

「出来ればよかったけどね」



日の向こうからクイーンの声が聞こえてくる。


「クイーン! バカ! 逃げろ!」


ジャックが声をあらげる。


「バカはあんたよ。ここで死なれたら後味悪いでしょ……サンも悲しむしね」


弟であるサンとは長い間会っていなかった。安否も不明だ。弟を思い出して少し落ち込むクイーン。


「ゼロ、そこにいるんでしょ? あんたから何が見える?」

「……火だ」


クイーンから問いかけられるが、答えの通り、ゼロから見えるのは見渡す限りの炎だった。


「そうじゃないわよ、その先。あの女の子は見えないわけ?」


あの女の子。おそらくレイアの事だろう。ゼロは自分を恥じた。目の前の炎を見て若干諦めを感じていた自分を。


「まさかお前に励まされるとはな」


今ははっきりと見える。助けを求めているレイアの姿が。あの笑い顔が。


力がみなぎるゼロ。頭も冴え、辺りの状況も掴めてくる。何か突破口は無いかと探る。が、冷静に成ったことでようやく気づいた。ヤツが近付いてくることに。



「何だ……この悪寒は」



炎の外のクイーンも気がついたのか、一切言葉を発しなくなった。ジャックとリザベルトはまだ気がついていない様子だが、その姿が見えてくると否が応でも気がつかされる。




「ドラゴン……!」




全長十メートルはあるだろう巨大な翼を羽ばたかせながらドラゴンが姿を現した。その存在感は凄まじく、目があっただけで体が硬直してしまいそうだ。


「おいおい! あんなのもいるなんて聞いてねぇぞ!?」


ジャックが慌てて銃を構え発砲するが、全く効いていない。それでもドラゴンの機嫌を損ねるくらいの効果はあったらしく、ドラゴンの口の奥から嫌な音が聞こえてくる。



「あれは……!」



リザベルトがいち早く察知する。数分前自分が焼き殺されそうになったあの音だ。


「ぐずぐずしている暇はない、飛び込むぞ!」

「お、おい!」


そう言ってゼロは前方の炎に飛び込んでいく。全身にあっという間に火がつき、地獄の苦しみがやってくる。服を脱ぎ捨て火種を消し去るが、その全身に刻まれた痛々しい火傷のあとがゼロのダメージを物語っている。



「ハァハァ、来い!」



ゼロの言葉とドラゴンの轟音に押され、二人も火の海へと飛び込んでいく。防火性のある軍服に身を包んだリザベルトと暑いジャケットに身を守られたジャックはゼロほどのダメージを受けずに脱出できた。


「あちちちちち!」


ジャックはジャケットを脱ぎ捨て、体にまとわりついた火を叩き消す。


リザベルトも髪に燃え移った部分を切り捨てる。


「……最悪だ」


クイーンはそんなリザベルトの様子を見ながら申し訳なさそうに告げる。


「もっと最悪なものがそこにいるわよ」


クイーンが指を指した先には、先ほどまでゼロたちが居た場所を焼き尽くすドラゴンの姿があった。


「正念場だ」


ゼロは火傷だらけの体を奮い立たせ、ドラゴンに立ち向かう。








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