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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
341/621

episode 341 「服従」

大地を抉るようなドラゴンの咆哮でゼロたちの体は宙に投げ出され、そのままなす統べなく吹き飛ばされる。回りにいる仲間のはずの魔獣たちも同様に吹き飛ばされ、小さな魔獣や植物型の魔獣はそれだけで命が尽きていく。


「姉上!」


飛ばされながらジャンヌに手を伸ばすリザベルト。ジャンヌも必死に手を伸ばすが、その手は届かない。


ヘルメスは満足そうにその様子を眺めながら口を開く。


「安心しろ。ジャンヌ、ゼロ、お前たちは殺しはしない。だがリザベルト、お前はいらない」



ヘルメスがドラゴンに向けて合図を送る。するとドラゴンは体の向きをリザベルトへと向ける。口を大きく開くと、口の奥の方から轟音が聞こえてくる。



「リズ! 避けなさい!」



何がくるのか予感したジャンヌが大声を上げる。リザベルトにもジャンヌの必死さが伝わる。ドラゴンから来る死の予感もひしひしと皮膚を刺激している。



「死ね」



ヘルメスの合図でドラゴンの口からは激しく煮えたぎるマグマのような物が噴出される。それは空気を焼きつくしながらリザベルトへと迫る。ジャンヌはリザベルトを助けようと必死にもがくが、ドラゴンの咆哮によって遥か後方に投げ出された今、とてもリザベルトのもとへは辿り着けない。それまでに彼女の体は消し炭になってしまうだろう。



「待って! 待って!」



ジャンヌが涙を流しながらヘルメスに訴えかける。駆け引きも隠し事もない。心からの叫びだった。


「私はどうなってもいい! リズを助けて!」


ヘルメスはジャンヌの顔を見て背筋をゾクゾクと震わせる。待ち望んだ展開に心を踊らせる。



「言う言葉があるだろう?」



ジャンヌはヘルメスに頭を下げる。頭を地面に擦り付け、帝国軍中将が魔族を前にして醜態を晒す。



「あなたの物になるわ」



その言葉を聞き遂げると、ヘルメスは紋章を掲げる。するとリザベルトの体が引き寄せられ、ドラゴンの攻撃は彼女ではなく、他の獣たちを焼きつくしていく。攻撃を受けた獣は骨すら残らず、初めからこの世に存在していなかったかのように完全に生きていた痕跡を消した。



ドラゴンの攻撃を脱したリザベルトは、恐怖で未だに起き上がることが出来ない体を無理矢理動かし、這いながらジャンヌの足元へと移動する。ヘルメスは体を震わせながらその様子を眺めている。


「あ、姉上! 無事ですか!?」


ジャンヌを見上げ、声をかけるが反応がない。


「あ、姉上?」


ジャンヌの顔からは生気が失われていた。いくら呼んでもリザベルトの方を向く気配もない。顔は虚ろでまるでこの森の獣たちのようだ。



「無駄だ。ジャンヌの心はここに封じ込めてある」



ヘルメスは紋章を指差しながらリザベルトに説明する。


ジャンヌは機械のようにその場に立ち尽くし、一切の反応を見せない。


二人のやり取りを見ていたいヘルメスだが、背後から感じる強烈な殺気に否が応でも対応せざるを得ない。銃声が聞こえ、ヘルメスはそれを紋章の力によって防ぐ。


「利口とは言えない判断だ、ゼロ」


ゼロは銃をナイフに持ち替え、ヘルメスに突撃していく。ヘルメスも紋章を構え、ゼロの攻撃に備えるが、ゼロは寸前で方向を変え、リザベルトを抱えて退却する。



「は、離せ! 姉上がまだ……!」

「現実を見ろ! ジャンヌはもう無理だ!」



暴れるリザベルトを抱えながら走るゼロ。後ろを振り返る余裕もない。ただひたすらに走り続ける。ジャンヌを見つけたときの状況からしてここに出口は無いことはわかっていた。だがそれでも走らなければこの場で全滅してしまう。



ヘルメスに二人を追いかける様子はない。ただ魂の抜けたジャンヌの顔をじっと見つめている。


「さあ、いこうか。我が屋敷へ」


ヘルメスは紋章を掲げる。すると扉が現れ、ジャンヌをつれてその中へと入っていく。


「どうせここからは出られんが、あまりうろつかれるのも面倒だな。お前たち、適当に相手をしてやれ。ゼロは殺すなよ。あ、ドラゴン、お前は待機しろ。森を焼きつくされたらかなわないからな」


魔獣たちに合図をだし、ヘルメスはジャンヌとともに消えていった。




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