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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
337/621

episode 337 「とらわれた人々」

ゼロはじりじりと後ずさりを始める。


(マリンの能力……イシュタルやニコルと同様の洗脳系の力。一対一でこれをくらえば敗北は確実……)


マリンの近くに集まっている兵士たちはその様子からして既に彼女の手中にあるようだ。


「ここはいいわね。男がたくさん居て。そうは思わない?」


マリンが問いかけてくるが、迂闊な返答は控えるゼロ。


洗脳されたと思われる男たちは魔族の作り出すワープホールによってどこかへと送られているようだ。


(既に大部分は移動されてしまったか。どうりで姿が見えないわけだ)


どこへ送っているのか予想はつかないが、他の魔族の元であることは間違いない。どんな目的があるにせよ、恐らくもう通常の生活に戻ることは叶わないだろう。一度捕まってしまえば、ゼロでさえその運命は変わらない。



「ワルターとフェンリーは元気にしているかしら?」


兵士たちを転送しながらゼロに問いかける。


「そう黙っていないでお話ししましょ? なにもしないから」


メディアは執拗に話しかけてくるが、ゼロはそれをことごとく無視する。


(ヤツが人を操るのには何かしらの条件があるはずだ……それがわからない以上、迂闊な行動はできない)


警戒を続けるゼロ。マリンはそんなゼロの様子を見て思わず吹き出してしまう。



「ぷっはっはははは! もしかして私と口を利いたら操られるとでも思ってる? それとも目を合わせたら? そんなこと気にしなくていいのに」


マリンは立ち上がり、ゼロの方へと歩いていく。ゼロは距離をとろうとするが、足が動かない。



「だって、もうあなた操られているもの」



絶望的な情報がゼロに届く。その言葉に偽りが無いことを証明するかのようにゼロの足はマリンのいる方向へと移動していく。ゼロ自身もそれについてためらいはなく、むしろ自分の意思で移動していた。


「操られている? なんの事だ」

「そう、操られてなんかいないわ。あなたは自分の意思で私の方へと歩いてきた」


ゼロはマリンに近づくことになんの違和感も覚えなくなっていた。



「さあ、一緒にいきましょう」



マリンはゼロをワープホールへと誘導していく。ゼロは一切躊躇することなく、兵士たちと一緒にその中へと進んでいった。




リザベルトはすっかり静まり返った屋敷で目を覚ました。ゼロの姿が無いことを確かめると、激しい怒りがこみ上げてきた。


「姉上に置いていかれた姉上の気持ちがよくわかります」


リザベルトは剣を握りしめ、帝国軍本部へと向かい始めた。




ゼロたちが転送された先は森の中だった。その森はゼロが今まで訪れたどの森よりも暗く、どの森よりも薄気味悪かった。どことなく自分が暮らしていた小屋と似ているため、親近感を覚えながらも慎重に歩を進めていく。



(いくら兄弟とはいえ、この森の主がマリンに危害を加えない保証はない。いざとなれば俺が盾にならなければ)


マリンを守る決意を固めながら、名も知らぬ森を進んでいく。


木々たちがまるで道を案内するかのようにざわめいている。そして洗脳された兵士たちは逆らうことなく歩いていく。いざなわれているとも知らずに。


しばらく進むと森の木々が急に落ち着きを取り戻す。目的地へと誘い終わったようだ。少し開けたその空間には一人の女性が立っていた。服はボロボロだが、それは確かにモルガント帝国の軍服だった。入っている紫のストライプからして将官なのは間違いない。あふれでるオーラもそれを示している。



「ジャンヌ……!」



唯一答えを見つけたゼロが声をあげる。一方ジャンヌは既に満身創痍でゼロに気が付く様子はない。それでも本能だけで目の前に現れた敵たちを排除しようと剣を握る。


「……また来たわね」


折れた足を無理矢理引きずり、血だらけの腕で握った剣を振り上げる。


「……くっ!」


ゼロも襲いかかるジャンヌ。仕方なくゼロも迎撃の構えを見せる。


「ジャンヌ! おい! ジャンヌ!」


いくら呼んでも反応はない。


「仕方がないな……少し手荒だが」


ゼロはジャンヌを敵として認識する。


「お前なら死ぬことはないだろう。本気でいく!」







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