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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
335/621

episode 335 「ちんけな脅し」

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」



シオンの悲痛な叫びを心地良さそうに聞くオルフェウス。時折手を叩きながら至福の時を楽しんでいる。


ヨハンはそんな兄の姿を眺めながらシオンの様子を伺っている。口元にはよだれをだらしなくたらし、ごちそうをお預けされている犬のような卑しい目でシオンを見つめる。や



「兄ちゃん、兄ちゃん! まだ? まだ!?」


オルフェウスにはヨハンの言葉など一切届いていない。もがき苦しむシオンを眺めるので夢中になっているからだ。



「苦しめ、苦しぬけばそれで俺様のコマの完成だ」


オルフェウスは体を震わせながら、コマの完成に心を踊らせる。




アーノルトはフェンリー、ワルター、リース、レイアを拘束する。フェンリーたちは未だに目を覚まさない。特にフェンリーはアーノルトから受けた傷が深く、顔色もどんどんと悪くなっていく。黙って大人しく縛られたレイアもフェンリーの事を気にしている。


「手当てをしてあげてください。このままでは死んでしまいます」


アーノルトに訴えかけるレイアだが、アーノルトはそれを聞き入れない。


「断る。この男の血は非常に厄介だ。触れば命取りに成りかねない」


アーノルトは受けた傷の具合を確かめながら答える。


「ならわたくしの拘束を解いてください。わたくしが診ます」


しかし当然と言うべきか、アーノルトがレイアに力を貸すことはない。



「それこそ断る。なんのために縛り上げているとおもっているんだ?」

「わたくしが一人で逃げ切れるとおもっているのですか!? 不可能です。ですが、ここでみすみすフェンリーさんを死なせるぐらいなら、一か八かにかけて貴方に戦いを挑みます!」



そう言ってレイアは服の中からナイフを取り出す。刃渡り五センチにも満たない小さなナイフだ。それで自らのロープを切り裂き、アーノルトに向ける。



「……そんなもので俺を殺せるとでも? せいぜい木の実の皮を剥く程度しか出来ないだろう」

「これで貴方を殺せるだなんて思っていません」



レイアは自らの首にナイフを突き立てる。


「貴方は私たちを生かしたままつれてきた。殺すきなら簡単に出来たはずです。ということは殺さずに連れてこなければいけない理由がある筈です」


レイアのナイフは首に食い込み、赤い線から血が滴っている。


「くだらんな。死にたければ勝手に死ね。それに貴様の理屈で言えば俺は氷殺を殺すつもりは無いということになるが?」


アーノルトはレイアを試すように尋ねる。


「そうです、確かにその通りです。ですがこれはあくまでわたくしの憶測……自分の命をかけることはできてもフェンリーさんの命をかけることなんてできません!」


なんの迷いもなくアーノルトに自分の答えをぶつけるレイア。


アーノルトは少し考え、目をつぶる。


「なるほど、貴族にしておくのはもったいないほどの度胸だな。殺し屋であった俺に対してそんな交渉を持ちかけるとは……もっともそれほどの気概がなければゼロについていくことなどできはしないだろうがな」


アーノルトはフェンリーの拘束を解く。


「いいのですか?」

「早くしろ。だが少しでも妙な気を起こせば……」

「ありがとうございます!」



レイアは頼みの綱のナイフを簡単に投げ捨て、フェンリーの手当てへと向かう。



「どう思う?」


その様子を見ていたリラが隣のイルベルトに問いかける。


「確かにレイアに死なれては困る。だがそれならば力ずくで止めればい」

「そうよね」


二人は疑惑の目付きでアーノルトを睨み付ける。当然アーノルトもその目付きに気がつく。自分でもなぜレイアのちんけな脅しに屈してしまったのか理解に苦しむ。


(俺は一体、どうしたいんだ?)


ゼロと同様、アーノルトの中にも少しずつ何かが芽生えようとしていた。






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