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スティールスマイル  作者: ガブ
第一章 ゼロとレイア
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episode 33 「リザベルト」

リザベルトは剣を一本ゼロに投げる。


「それを使え。」


ゼロはその剣を拾う。軍で支給されているもののようだ。


「やめてくださいリザベルト!ゼロさんは敵ではありません!」


リザベルトは聞く耳を持たない。


「問答は無用。剣を交えれば分かる。」



そう言うなりリザベルトはゼロに向かって斬りかかる。鋭く、そして速い。が、ゼロは易々とそれを凪ぎ払う。


「フ、さすがは殺し屋。人殺しの道具の扱いには長けているというわけか。だが私は帝国軍六将軍第五席、リザベルト・ヴァルキリアだ!悪に屈したりはしない!」


リザベルトの剣は更に鋭さを増す。が、実力は明らかにゼロの方が上だった。


リザベルトは息が切れてきて動きが鈍くなっているのに対して、ゼロは汗一つ掻いていない。


暫くは様子見で受けに徹底していたゼロだが、リザベルトが疲れてきたのを見計らって攻撃に転じる。もはやリザベルトにゼロの攻撃を受けきる力は残っておらず、なすすべなく地に崩れ落ちる。


ゼロはリザベルトに剣を突き付ける。




リザベルトは敗けを認め、剣を捨て目をつぶる。



「・・・認めよう。貴様の勝ちだ、殺せ。だが三万の軍が貴様を必ず追い詰める。覚悟しておけ!」



ゼロは剣を捨てる。



「それは御免だな。だがその程度の実力では到底レイアは任せられない。俺もついていく。ケイトもだ。文句はないな。」


ゼロは駐屯所を出ていく。

リザベルトは何も言えなかった。


レイアはリザベルトに手を貸す。


「大丈夫ですか?」


レイアの手を取り、立ち上がるリザベルト。



「あの男、信用に足る人物なのか?」


「勿論です。何度も命を救っていただきました。」


レイアの笑顔につられたのか、笑みがこぼれるリザベルト。



「正直六将軍に任命されて浮かれ・・・いや自惚れていた。姉上たちに一歩近づいたとな。だがまだまだ修行が足りないということか。」


立ち去るゼロの背中を見つめるリザベルト。その拳は強く握られていた。



ゼロは脇腹にできた真新しい傷を押さえながら、リザベルトの事を考えていた。


(中尉であの強さか。なめてかかると足元をすくわれるな。)


後ろからリザベルトが追いかけてきた。



「ゼロ、いやゼロ殿。先程は申し訳なかった。船は明後日こちらに到着する。是非同行してくれ。」


リザベルトは頭を下げる。


「そうか、助かる。」


その場を去ろうとするゼロをリザベルトが遮る。


「何の真似だ。」


リザベルトはゼロに片膝をつき、剣を差し出す。何があったのかと他の軍人たちも興味深そうにその光景を眺める。


「貴方に頼みがある。私に稽古をつけていただけないだろうか。」


「断る。他の軍人共に付き合ってもらえ。」


リザベルトはもう片方の膝も地面につける。軍人たちは上官のまさかの行動にあわてふためき始める。


「お願いだ。手合わせしてわかった。貴方は私の遥か高見にいる。船が来るまでの間だけでいい!付き合ってくれ!」


「わたくしからもお願いします。」



困り果てているゼロにレイアが追い討ちをかける。


ゼロはため息をつく。



「雇い主の頼みとあれば引き受けるしかない。ただし、何があっても自己責任だ、いいな?」


リザベルトは立ち上がり、ゼロの手を握る。


「感謝する!では早速始めてくれ!」


「橋の修繕作業はいいのか?」


「構わない!部下たちに任せる!レンバー伍長、頼んだぞ!」


早く稽古をつけてもらいたくてウズウズしているリザベルト。

いきなり話を降られてビックリする伍長。


「わ、私ですか!?」


部下たちはやれやれといった表情でイアンの肩に手を置く。





ハァハァ


稽古を開始してから二時間ほど経過し、リザベルトの体力は限界に来ていた。



「ここまでだ。きりあげるぞ。」


ゼロは剣をしまう。しかしリザベルトは納得いかない様子でゼロに詰め寄る。


「な、まだ私はやれる!続けてくれ!」


リザベルトを手で制止するゼロ。


「俺が休みたいんだ。」


ゼロは全く疲れてはいなかったが、ここでリザベルトに倒れられ、万が一船に乗ることができなかったら大変だ。



リザベルトは渋々剣をしまう。



「なぜゼロ殿は殺し屋になったのだ?」


タオルで顔を拭いながらリザベルトが訪ねる。


「つまらない話さ。」


「今はそのつまらない話が聞きたい気分なんだ。」


引き下がろうとしないリザベルトに根負けして話し出すゼロ。


「両親が事故で死に、生き残るにはそれしかなかった。それだけの事さ。」


水遊びをするレイアとケイトを眺めながら、しみじみと答えるゼロ。


「私が軍人になった訳は聞かないのか?」


「聞いてほしいのか。」


リザベルトは首をたてに降る。


「私だけ聞いてしまっては不公平だからな。」


そう言って語り出すリザベルト。



「レイアから聞いているかもしれないが、私の家は由緒正しい騎士の家計でな、姉二人共軍人だ。物心ついた頃から皆国に仕えることを望んでいたし、私自身もそうなりたいと思った。」


リザベルトは話ながら傷だらけの手を撫でる。


「だが、今日の事もそうだが最近どうも自分の力の無さが嫌になってしまうときがあるんだ。とても姉上たちと肩を並べていられる自信がない。」


小さなリザベルトの肩に手を置くゼロ。


「お前の姉たちの事は知らないが、お前はお前が思っているよりもずっと強いさ。」


「気休めはやめてくれ。ゼロ殿は強いからそんなことが言えるんだ。」


うつむくリザベルト。


「気休めではない。」


ゼロは先程リザベルトから受けた傷を見せる。


「お前はそんな強い俺に傷を負わせたんだ。きちんと胸を張れ。でないと部下たちが何時までも心配したままだぞ。」


顔を上げるリザベルト。するとイアンを始め、部下たちがこちらを覗きこんでいた。


「すみません中尉。やっぱり中尉がいないと作業が捗りません。我々には中尉が必要です。」


「レンバー伍長・・・フ、仕方のないやつらだ。」


リザベルトは立ち上がり部下たちのもとへ駆け寄っていった。そしてゼロもこちらに手を降るレイアたちの元へと向かうのであった。









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