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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
329/621

episode 329 「再起」

アーノルトたちが森に侵入している間、森の動物たちは遠くへと避難していた。そして今、アーノルトたちが去ったあとも動物たちは森に戻ろうとはしていない。森に未だに殺気が渦巻いているからだ。それはなにもアーノルトのものだけではない。



「……」



森は一人の青年の殺気に震え上がっていた。



「……なぜだ」



ゼロが呟く。すると木々もざわめき始める。



「俺は何をやっている?」



その一言一言が空気を揺らす。



「この血はなんだ?」



ゼロはクナイにこびりついた血を指で拭う。



「俺が眠っている間にここで誰かの血が流れた」



ゼロはクナイを強く握りしめる。



「ふざけるな」



ゼロの視界が暗くなる。



「ふざけるな」



ゼロの頭が黒くなる。



「ふざけるなぁ!!」



ゼロは地面を強く叩きつける。拳の砕ける音がするが、構わず叩き続ける。



「何をしている!」


駆けつけたリザベルトがゼロの腕を掴む。すでにその拳は紫色に腫れ上がり、血が滴っている。



「触るな」


容赦のない殺気がリザベルトに浴びせられる。体全体がリザベルトに警告をする。この男に関わるなと。それでもリザベルトはゼロに話し続ける。



「何をしているかと聞いている! レイアはどうした!」


レイアの名が出たとたん、さらにゼロの闇は深くなる。リザベルトの腕を逆につかみ、その体ごと地面に叩きつけ、馬乗りの形になる。



「黙れ」



軍人として日々鍛えぬいたリザベルトの体は一切動かない。彼女から見たゼロは、魔族と見分けがつかないほど恐ろしかった。


「退いてくれないか……腕が痛む」


リザベルトの腕は強く叩きつけられ過ぎて赤く腫れていた。石か何かで切ったのか、血も流れている。その流れる血が指を撫で、ようやくゼロは正気を取り戻す。


「リザ……ベルトか」


手を離し、リザベルトの手を握り引き上げるゼロ。


「済まない、俺は……」


うつむくゼロの頬を叩くリザベルト。



「……叩かれて当然だな」


それでもなおうつむくゼロの反対の頬も叩くリザベルト。



「いつまでそうしている! その様子を見ればレイアたちに何があったのは容易に想像できる! ならなぜここで立ち止まる? あきらめてしまったのか!?」


ゼロの両肩を掴みながら叫びかけるリザベルト。



「レイアはゼロが来るのを信じている! ならなぜ行かない!」


叫んでもなおゼロの心には響いていない。



「相手はアーノルトだ。どこに居るのかもわからない」


情けないことを言うゼロの肩を強く握りしめるリザベルト。



「どこかには居る! この世界の何処かには! だが急がなければこの世界から居なくなってしまうかもしれないんだぞ!? なら急ぐ他にはない! レイアが助けを待っているのだから!」



レイアが助けを待っている。


俺が来るのを待っている。



ゼロの脳裏にレイアの笑顔が映る。それと同時にアーノルトの姿も。



ゼロはリザベルトの手を払い、引き寄せ、抱き締める。




「な、なな!!!」


思わず顔を赤らめるリザベルト。



「礼を言う。お前のお陰で俺はまた立ち上がれた」


「礼はいい。態度で示せ」



胸にゼロの鼓動を感じながら返すリザベルト。


ゼロは再び前を向いた。




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