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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
328/621

episode 328 「何度でも」

「下がって! この男は私が食い止めます!」



恐怖でおかしくなりそうになりながらもレイアとセシルを守るために必死で前にでるリース。震える手を押さえながらアーノルトに向けて剣を持つ。


「……一度だけ警告する。失せろ。その女を残してな」


アーノルトの冷たい言葉がリースの鼓膜を揺らす。


「断ります!」



次の瞬間リースは意識を断たれた。静かに地面に崩れ落ちるリース。セシルは恐怖のあまり自然と涙が溢れ出す。



「なんなんですの……なんなんですの!」


「次はお前の番だ。失せろ」



泣き叫ぶセシルに対してもあくまで冷徹に告げるアーノルト。



「オイゲン、オイゲンどこなんですの!?」


オイゲンの名を叫ぶセシルだが、その声は森の雑踏にかき消されてしまう。



レイアは目の前で二人が倒されるのをただ見ていることしかできなかった。



「なぜ、わたくしを狙うのですか?」

「それが俺の使命だからだ」



レイアに向かって手を伸ばすアーノルト。一応ゼロが現れないかと警戒するが、その気配は一切ない。


(ゼロ、お前の光は俺がいただく。恨むなら己の無力さを恨むんだな)



レイアに触れようとしたアーノルトの手がふと止まる。後方から強い気配がしたからだ。そしてそれは直ぐに強烈な殺気へと変貌を遂げる。



(ゼロ……ではないな。この気配は……)



「ワルターか」


振り返るアーノルト。そこには鬼の形相をしたワルターが立っていた。



「妹に、何をした? アーノルトォォォォ!」



横たわるリースの姿を見て、我を忘れるワルター。怒りに身を任せて突撃する。



「絶対に許さない! お前だけは!!」


あまりの攻撃の激しさにアーノルトのクナイが弾き飛ばされる。


「この程度で我を忘れるとはな。やはりお前は殺し屋には向いていない」

「だまれェ!」


ワルターは雷撃を込めた鋭い蹴りを、アーノルトの脇腹めがけて繰り出す。見事に命中するが、アーノルトの体はピクリとも動かない。


「な……」


口から血を流すワルター。



「たしかに怒りは体を動かすエネルギーになり得る。だがその分、体を殺す毒にもなる」



アーノルト指は、深々とワルターの脇腹を貫いていた。


「冷静なお前なら俺の殺気に気が付いていた筈だ」


アーノルトがワルターの腹から指を引き抜くと、ワルターの体はそのまま倒れる。


「どうやら無理な戦いかたで既に体はボロボロだったようだな」


ワルターの体は雷を帯びすぎて所々ガタがきていた。



「妹に……触れるな」


なんとか意識を保ちつつ、アーノルトの足を掴むワルター。


「案ずるな、殺しはしない。お前たちがおとなしく捕まるのならな」


アーノルトのその言葉を聞き終えるよりも早く、ワルターの目は閉じてしまう。





「さて、残りはお前だけだ。助けも来ない。あきらめて俺に付いてこい」


アーノルトはレイアに告げる。するとレイアは特に反抗するようすもなく、素直にアーノルトのもとに歩いてくる。



「……やけに聞き分けがいいな。この者たちを傷つけられたくないか? それとも単純に自分が傷つきたくないか?」


アーノルトの問いかけに、レイアは直ぐに答える。



「はい。傷つけられたくもないですし、傷つきたくもないです。ですが、諦めるわけではありません」


レイアが何を言いたいのか、アーノルトにはわかっていた。



「きっとゼロさんが助けに来てくださいます。ですからわたくしは貴方についていきます」


アーノルトはワルターとフェンリーを抱える。


「……ついてこい」


アーノルトは自分の中に芽生える苛立ちに気がつかないまま、レイアをイルベルト達の元へと連れていく。パーシアスは未だに目を覚ましてはいなかったが、イルベルトとリラは頭を押さえながらなんとか立ち上がっていた。


「やったのか?」


二人とレイアを連れてきたアーノルトの姿を見て、イルベルトが問いかける



「ああ、問題ない」



アーノルトは二人を乱雑に投げ捨てる。その様子を見てリラもアーノルトに対する疑念が無くなっていった。


「バカを連れてくるわ」


リラはアーノルトよりも乱雑にパーシアスを引きずって来る。


頭を押さえながらもイルベルトは扉を開く。そこへパーシアスとフェンリー、ワルターを投げ入れる。レイアに入るように促しながら、アーノルトは耳打ちをする。



「もう一度言う、助けは来ない」



それに対してレイアは堂々と返答する。



「何度でも言います。ゼロさんは来ます」



アーノルトはレイアを扉へと突き飛ばす。


(来るなら来てみろ。その時は、お前の目の前でゼロを殺してやる)



そして侵入者たちは消えていった。




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