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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
321/621

episode 321 「闇の声」

モルガナが何処かへと消えた頃、ゼロは屋敷の前へと到着した。


戦いの火の粉がここまで届かなかったことに安堵しながら扉を開ける。屋敷の中はもぬけの殻だったが、それは避難したためだろうと勝手に解釈し、念のため屋敷の中を探索していく。



(良かった……最悪の事態も想定していたが)



ゼロはレイアと再会した彼女の屋敷を思い出していた。


バロードによって侵攻され、屋敷の人々を皆殺しにされた。ここのようにかつては人々がせわしなく働き、ローズたちのようにレイアが生活していたのだろう。だがゼロは血塗られた所しか見ていない。


(そういえばあの時はこの胸の高鳴りに気付くことは出来なかったな)


ゼロは激しく打ち付けられる心臓に手を当てる。もしここがあの屋敷と同じようになっていたならばと想像するだけではちきれそうだ。


(避難したのならそれでいい。騒ぎが収まれば戻ってくるだろう)


一息つき、客間のソファーに腰かけるゼロ。


「やっとここまで来た。ここまで来られた」


屋敷の天井を見上げる。


「あと少し、あと少しで俺は自由だ」


ほころびそうになる口もと。あれほど望んだ自由が目の前にある。



「レイ、ア……」


ゼロは目を閉じる。疲れがどっとでたのか、そのまま眠りについた。




レイアたちは屋敷の裏手の森に避難していた。ヨハンたちの様子を確認しに行っていたリースが戻ってくる。


「皆さん! もう安心です! あの怪物は何処かへ転送されてしまいました!」


元気よく手を振りながら走ってくるリース。



「て、転送された? それって本当に安心なのかい?」


妹の報告に疑問を感じたワルターが尋ねる。


「それがすごいの見ちゃった!」


リースは興奮ぎみに目撃しことを話す。




「十闘神……それは本当か?」


話を聞いたフェンリーが眉をひそめる。


「疑ってるんですか!? あれは間違いなくモルガナ様です! 私刷りきれるまで読んだんですから!」


そう言ってリースは荷物の中から一冊の絵本を取り出す。


「十闘神物語、昔からよく読んでいたね」


ワルターが妹のフォローにまわる。リースはモルガナの絵がかかれているページを開き、興奮した様子で話し始める。


「本当にいたんですよ! この本の通りちっちゃくて可愛がったです! そして強すぎます! あの怪物、手も足も出なかったんですから!」


本をバンバン叩きながら説明するリース。


「それで、どうなったのですか?」


肝心なことを話さないリースに問いかけるレイア。



「逃げたんですよ! 脅威は去ったんです!」


リースはにっこりと笑って答える。それを聞いたレイアの顔は明るくなる。


「それじゃあ早く戻りましょう! ゼロさんがきっと戻ってきています!」

「あ、ちょっと!」


レイアはどんどん屋敷の方へと戻っていく。


リースはあえてマリンの事は話さなかった。神の存在を確認できたことに興奮していたし、その強さに希望を感じた。だからこそ突然現れたマリンの力に恐怖し、絶望した。神でさえも歯が立たない存在を認めたくはなかった。


(これでいいんです。どちらにせよ敵は去ったんですから)


そう自分に言い聞かせ、レイアの後を追う。




ガイアは真っ暗な闇へと飛ばされた。そして直ぐに身構える。


(ここには魔族がいる……それは確かだろう)


あとからやって来たローズもガイアと同様に警戒する。


「准将、状況は?」

「不明だ。離れるな」


そう答えたガイアの体が目の前からふと、消える。



「え?」



ガイアの体は空中へと持ち上げられ、逆らえぬ力でおしつぶされる。



「誰の許しを得てここに来た?」



闇に声が響く。魔の声が。




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