表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
311/621

episode 311 「謎の青年」

ジャンヌは目を覚ますと、自らの体を包み込む謎の温もりを感じとる。そしてそしが自分が何者かに抱き抱えられているためだとわかり、すぐさまその手を逃れる。


「おや、目を覚ましたのか」


ジャンヌを抱えていた青年は別段慌てもせず、ジャンヌに話しかける。それにひきかえジャンヌは状況が理解できず、柄にもなく焦った表情で青年の様子を伺う。


(この男、明らかに人間じゃないわね。シオンはどこかしら? あの赤ちゃんは? そもそもここはファウストじゃない……)


青年はジャンヌの首もとめがけて手を伸ばしてくる。考えが整理できないジャンヌだが、この手に捕まってはいけないことだけは充分に理解できる。


「どこへいく? お前は俺の所有物だぞ?」


ジャンヌは青年から逃れるべく、ヨハンによってつけられた傷を庇いながら走っていく。


(加護は……戻っていないわね。本当に食べられちゃったのかしら)


ジャンヌの加護は一切発動しない。恐らく今でもヨハンの中なのだろう。それはヨハンが生きているということを示しているのか、それとも死んでいても加護は戻らないのか、それについて今知る術はない。


(恐らくこの男は魔族。そして私は拐われたようね。まったく、私が拐われる側にまわるなんてね)


小さくため息混じりに笑うジャンヌ。


(ゼロ君の仮説が正しければ、ヨハンかこの男のどちらかがワープホールを開いたということになる。ここがファウストではないなら、恐らく前者ね。それが助けを求めてか、勝利の報告かはわからないけれど)


ヨハンとシオンの姿が見えないことに不安を感じながらも、今は自分が逃げることで精一杯のジャンヌ。


(せめて剣が有ればね……)


ジャンヌは握ったままの折れた剣を、追ってくる青年に向かって投げつける。


「ん、

俺にくれるのか?」


男は投げつけられた剣を簡単に受け止る。そして左の手のひらにある紋章を剣に押し付ける。すると剣は消滅し、左手の紋章へと吸い込まれていった。


「もう、なにそれ」


満足げな表情の男に向かって叫ぶジャンヌ。




シオンはファウストの奥へ奥へと進んでいった。だが、進めど進めど景色は変わらない。地獄が有ればこんな感じなのか? などと考えながら進むシオン。


「んー誰もいない」


ヨハンによって食い尽くされてしまったのか、犯罪者たちの姿も見られない。宛もなくさ迷い続けるシオン。


(大丈夫、きっと大丈夫)


そう自分に言い聞かせながら進むシオン。するといきなりうなじに冷気を感じる。


「ひぃ!」


氷を押し当てられたような感覚に悲鳴をあげるシオン。振り返るが、そこには何もない。


「まさか、いやまさか。いや、でも……」


お化けの三文字が頭をよぎるシオン。幽霊の存在など信じてはいないが、これほど出そうな場所もそうそう無い。



「いやだぁ!」



シオンは夢中でもと来た道を引き返す。




ローズたちはファウストの入り口まで来ていた。


「引き返してもいいんだぞ」


ファウストについて詳しく聞き、身を震わせるヴィクトルとシェイクに告げるローズ。


「も、問題ないのだ!」


擦りきれそうな声で返すヴィクトル。


「安心しろ、お前たちの身は俺が必ず守る」


ガイアが二人に声をかけるが、二人は無視をする。それでもガイアは二人の前にたち、身を呈して守ると誓う。



「無理はしないでください。あなたの剣も中では機能しません」


リザベルトがガイアを心配するが、ガイアは問題ないと返す。


「中尉、心配は無用だ。むしろダインスレイヴに生気を吸いとられない分、いつもよりも体が軽くなっているのを感じている」


それは強がりなどではなく、ガイアの体は本来の力を発揮できそうだ。



「よし、行くぞ。気を抜くな」


ゼロは完全に手入れを済ませた武器を体に忍ばせ、ファウストへの一歩を踏み出した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ