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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
304/621

episode 304 「呪われた土地」

ファウスト、それは呪われた土地。モルガント帝国に棲む者なら誰もが知っている。だが誰も近づこうとはしない。そこに近づけば命がない、そう言い伝えられているからだ。


「ファウスト、確かにあそこならば魔族が潜んでいるかもしれない。いや、潜んでいなければ説明がつかない」


ガイアの顔が曇る。


ファウストはその土地そのものが加護を受けていると信じられている。だが詳しいことは何一つわかっていない。調査に向かった兵士たちは誰一人として戻っては来なかったからだ。


「さ、急ぎましょ。シオンが待っているわ」


ファウストへは帝国軍の六将軍であるシオンが向かっていた。



「で、ですが……」


そそくさと準備を進めるジャンヌ。だがフェンリーやワルター、リースは未だに目を覚まさないままだ。それが気になって仕方がないレイア。


「ああ、そうだったわね。さっさと起こしましょ?」


ジャンヌはワルターに近づき、脇腹に蹴りを繰り出す。


「どーん!」

「うっ……ごはっ!」


最悪の目覚めに苦しむワルター。


「ちゅ、中将……もう少し優しく」


お腹をさするワルター。だがすぐに倒れている妹に目を移す。


「リース! なんでお前がここに!? どうしたんだい!」


リースに駆け寄り、体をさする。



「あなたはすぐにやられちゃったから知らないでしょうけど、あのあとローズたちが駆けつけたの。そこにリースもいたのよ」


ジャンヌの言葉を聞いて青ざめるワルター。すぐにリースの体をまさぐり、傷がないかを確かめる。



「やめるのだ、この変態!」

「誰だ君は! リースは俺の妹だ!」



ヴィクトルを怒鳴り付けるワルター。リースに外傷が無いことを確かめると、ほっと息をつく。


「しかし中将、なぜリースが? 明らかに場違いだ」


リースはもともとこの旅に同行する予定ではなかった。だがファウストへと向かったシオンの代わりとして彼女自身が志願して付いてきたのだった。



「少し過保護すぎるじゃない? 一応彼女も軍人よ?」


リースの階級は曹長、しかも今回の任務がうまくいけば確実に少尉に昇進する。決してしたっぱではない。それは充分にワルターも理解している。ただそれでもリースはワルターのたった一人の家族なのだ。ワルターにとってリース以上に大切な人物など一人も存在しない。



「それでも俺にとっては大切な妹です」


ワルターはきっぱりと答える。


「そ、じゃあリースは帝国へ置いていきましょう。さあそこのおじさんをさっさと起こしなさい」


ジャンヌはフェンリーを指差す。ワルターは剣を握り、そこから微弱な電流を流してフェンリーを起こそうとする。


「そういえばレヴィ元帥はどうしたんですか?」

「逃げられちゃった」


ワルターの質問にジャンヌがお茶目な声で答える。


「はぁ、そうですか。いえあの場を生き延びただけでも上出来ですね。それで、これからどうするつもりですか?」

「ファウストへ行くわ」


ジャンヌが即座に答える。


「へぇファウスト……」


そのあとの反応はガイアと全く同じだった。あまりの驚きように電流の加減ができなくなり、フェンリーはワルター以上に最悪な目覚めを迎えた。



「なんだってんだよ!」


怒りを撒き散らすフェンリー。よく見ると新しい顔がいくつも増えている。


「あれ、ガイア准将まで居るじゃないですか」


ようやくガイアの存在に気づいたワルター。ガイアからこれまでのいきさつを伝えられる。



「そんな……」

「まじかよ……」


ワルターとフェンリーは肩を落とした。絶対的な信頼をおき、生涯の目標として掲げていた男。一度殺され、そして一度命を救われた男。二人にとってイシュタルの死はとてつもない衝撃だった。



「イシュタル元帥の死は帝国にとっては大きな痛手なの。おまけにレヴィの裏切り、四人いる元帥の内二人が欠けたというのは決して小さな問題じゃないわ。他国に知れ渡れば攻めてくるかもしれない」


真剣な表情のジャンヌ。彼女の帝国軍中将としての顔が現れる。


「だからこそレヴィの問題だけでも早急に解決する必要があるってこと。すぐにでも向かうわよ。さ、リースを頼んだわ、ワルター」


ワルターはリースを背負いながら例の質問をする。


「もうその質問飽きたわ」


ジャンヌはファウストの名を伏せ、先頭を歩いていく。十人以上の大所帯となった一行は、再び帝国へと向かって歩き始めた。




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