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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
302/621

episode 302 「第六感」

視覚、何も見えない。聴覚、何も聞こえない。触覚、何も感じない。全てが暗闇に包まれた世界。はたから見ればただそこに無防備な状態で立ち尽くしているに過ぎない。背中はがら空きで、今なら簡単に突き飛ばせそうだ。だが、それでもガイアはジャンヌに近づこうとはしなかった。


ガイアの額から汗が流れる。自らの手には七聖剣ダインスレイヴ、ジャンヌは闇の中でしかも素手だというのに一歩も近づけない。



「どうしたの? 私を倒すんでしょ?」



見えているはずの無い目が動き、聞こえてくるはずの無い声がする。


(どこまで化物なんだ、この女は……)


もう二、三歩ほど近づけばダインスレイヴの攻撃範囲に入る。あと少し、あと少しでいい。だがそれが出来ない。ガイアの脳がそれを許さない。


(殺られる……)


ガイアに残された道は一つ、この場から逃走することだった。


ジャンヌを闇に残したまま、その場を去ろうとするガイア。だが、ジャンヌの感覚はそれを許さない。


「どこへ行くのかしら?」


ジャンヌの声がガイアの脳を揺らす。そして動くはずのない足が、一歩一歩近づいてくる。


(くっ!)


ガイアは覚悟を決め、ジャンヌに斬りかかる。


(何を恐れている。この状況、ここを逃していつ戦うと言うんだ!)


ガイア渾身の一撃がジャンヌに振り下ろされる。だが、いや当然と言うべきかガイアの攻撃は避けられてしまう。


(見えていないはずだ……そもそも避けているという感覚すらないはずなんだ!)


今まで一度も破られたことのない技。絶対的な信頼をおいていた技。一対一において最強と自負していた。ガイアは目の前で起きている光景を受け入れられず、ただ闇雲に剣を振る。



「見えていないのはあなたの方ね」



ジャンヌはがら空きの腹に鋭い蹴りをくらわせる。


「ごっ!」


体の中の空気を無理やり外へと出され、地面を転がるガイア。ガイアの五月闇はとっくの昔に解除されていた。


「技の切れたことにすら気がつかないなんて。おまけにダインスレイヴにそれだけ力を吸われちゃ、私にかすり傷すらつけられないわよ?」


ガイアの体は衰弱していた。闇雲に力を使い込んだことで、ダインスレイヴによる生気の吸引はさらにその速度を増し、ガイアを苦しめていた。


「どのみちあなたじゃ勝てないわ。私ですらみすみす逃がしてしまったんですもの」


ジャンヌは少し残念そうに、それでいて悔しそうに、そして責任を感じた顔で呟く。



(逃がした? 誰を? レヴィをか?)


疑問が疑問を呼び、ガイアの頭を駆け巡る。


「まさか、レヴィと戦ったのですか?」


恐る恐る尋ねるガイア。ジャンヌはこくんと頷く。



「はは」


ガイアはバタリと仰向けに倒れる。剣を放り投げ、空を見上げる。


「逃がした? 逃げたのではなく? それではまるで追い詰めたかのようでは無いですか」


独り言のように呟くガイア。答えは求めていなかったし、答えはわかっていた。ジャンヌも答えようとはしない。



ごくりと唾を飲み込むヴィクトル。


「先程、彼女がメイザースから助け出してくれたと言っておったか?」


目を見開いてジャンヌの姿を見ながら、ゼロに問いかけるヴィクトル。


「……ああそうだ。メイザースはジャンヌによって滅んだ」


ゼロの答えを聞いて、ヴィクトルとシェイクは涙を流しながら崩れる。


「ドエフ……」


泣きながらドエフの名を口にする。


「よかった、本当に良かったっす!」


シェイクも細い目から溢れんばかりの涙を流す。



「俺の敗けだ。殺人に加え、上官への反逆。言い逃れは出来ない。どんな罰でも受け入れる」


ガイアは降伏した。


「あらそう、ならあなたにはもう一度レヴィと戦ってもらうわ。ああは言ったけれど、一応あなたの戦力は評価しているのよ? それに私一人では勝てそうにないんですもの」


ジャンヌは倒れているガイアに手を伸ばす。


「みんなもそれでいいわね?」


ゼロもレイアもヴィクトルたちも、反対するものは誰もいなかった。


「ああ、よろしく頼む」

「はい! もちろんです!」


ゼロとレイアはガイアを歓迎した。


「その男は許せん。だが、ジャンヌ殿、あなたの頼みなら別なのだ。我々もレヴィの討伐に協力させてもらうのだ」

「ジャンヌちゃんについていくっす!」


ヴィクトルとシェイクも涙を吹き、ジャンヌへの忠誠を誓う。


「あら、ちゃんだなんて。まだ私をちゃん付けで呼ぶ人間がいたのね」


恐ろしさをはらんだ笑顔を見せるジャンヌ。その手をとるガイア。



「ふ、あなたには一生敵いませんね」

「越えてもらわなきゃ困るわ。ま、一応そう簡単には越させはしないけれど」


二人は手を取り合う。今ここに帝国最強のタッグが誕生した。







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