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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
296/621

episode 296 「醜く、美しい」

マリンはゆっくりと語り始める。


「母はここに現界した際、世界によって七つの枷をはめられている。それはすなわち怠惰、憤怒、色欲、傲慢、強欲、嫉妬、暴食。そして子である我々にもその枷は付きまとっている。まぁ、分散はされたがな」



ゼロはマリンの言葉に耳を傾けつつも、その瞳は真っ直ぐにマリンをとらえている。


「私が怠惰で良かったな。もしそれ以外の枷がはめられていたのなら、お主は既に死んでいる」


マリンは三発目の攻撃を仕掛ける。攻撃を見ることも避けることも出来ない。だが研ぎ澄まされたゼロの精神は、攻撃を仕掛けようとするマリンの行動を完全に察知する。察知してもなおダメージは避けられないが、それでも致命傷は受けずに済む。ゼロは左手を犠牲にして三発目も耐えきる。



「あと七発だ。問題ない。もっともその前にお前は殺すがな」


レイアを攻撃された怒りがおさまらないゼロ。左腕の痛みなど全く感じない。


「やるじゃないか。正直驚いたよ」


手を叩くマリン。すると突如腹に激痛が走るゼロ。



「ガッ!」



からだの中身をぶちまけるゼロ。


(バ、バカな! 全く気配が感じられなかった!)


よろめきながら吐血するゼロ。



「少し本気を出してしまったかな? あと六発だ」



マリンは飲み干したカップに再び紅茶を注ぐ。


体の内側が熱い。息が出来ない。頭痛が酷い。手足が痺れる。マリンの攻撃を無防備な腹に喰らったゼロは命をすり減らしていた。


(これ以上攻撃を受けたら確実に死ぬな)


腹を押さえながら銃を構える。


「まだ私に対して敵意を向けられるか、驚きを通り越して呆れてしまうよ」


マリンは右手の薬指と小指に力を込める。


「これで終わりにしよう。いたぶるのは趣味ではないのでな」



ゼロはレイアの元へと走る。そしてレイアに覆い被さり、ぐっと体に力を込める。



「……実に醜い光景だ。それが愛というものか?」


マリンは汚物を見るかのような表情でゼロを見る蔑む。


「貴様には一生解るまい。俺は何があってもレイアを守ると決めている」


ゼロの言葉に眉をしかめるマリン。


「たしかに我ら魔族にそのような感情は存在しない。だが、興味が湧いてきた」


マリンの指が力を失う。気のせいか、敵意も無くなっている。



「何のつもりだ」



ゼロはレイアを背中に庇いながらマリンの方を向く。


「油断を誘うつもりか? だがそれにどんな意味がある? 俺の不意を突かずとも俺を殺すことなど容易だろう」


マリンはティーカップを置き、重い腰を上げる。



「愛とは、自己を犠牲にしてもよいと考えるほどなのか?」

「当然だ。俺にとってレイアは全てだ」


マリンの質問に即答するゼロ。それを聞いてマリンは大きく口を開けて笑い出す。



「はーはっはっは! 面白い、面白いぞ! 訂正しよう、それは醜くなど無い。酷く滑稽だ! それでいて美しい! これが人の美しさというものか!」



マリンは一通り笑い終えると、あっけにとられているゼロにさらに驚きの一言を告げた。



「私も恋というものがしたくなった。ゼロ、私を愛してみせよ」



マリンの言葉にゼロは反応できなかった。ゼロの反応が薄いことに気がついたマリンは指を鳴らす。するとマリンの容姿が変わり、その姿はレイアそっくりだった。


「どうだ? 似ているだろう?」


レイアの顔で笑いかけるマリン。ゼロはその眉間に弾を撃ち込む。弾はマリンの脳天を貫通し、マリンはその場に倒れる。



「貴様はレイアではない」



そう呟くゼロ。だが直ぐに身を隠せる場所を探す。マリンがこの程度の攻撃で命を落とすなど到底思えなかった。だが、隠れ場所を探す必要は直ぐに無くなる。マリンの背後にあの穴が現れたからだ。


穴の繋がっている場所はどこだかわからない。だが目の前で倒れているマリンの相手をし続けるより事態が悪化することなど無い。そう結論付けたゼロは迷わずその穴に飛び込んでいく。右腕にしっかりレイアを抱えながら。



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