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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
293/621

episode 293 「最強の魔法使い」

弾はマリンの体から五ミリほど離れた位置で停止した。表情が強ばるゼロの様子を眺めるマリン。


「この期に及んで急所を外す心がけは流石だが、そもそも私に急所など存在しない」


マリンは肩の近くに止まっている弾をつまみ上げ、息を吹き掛ける。すると弾はチリとなって消えていった。


直ぐに格の違いを悟るゼロ。レイアの手を引き、通ってきた穴の方へと走る。しかし穴はマリンが指をならしただけで跡形もなく消え去る。



「そう焦るな。少し話をしようじゃないか」



マリンはそう言って手を振る。すると二人の体は見えない力によって無理やり床に押し潰される。


「ガッ!」

「きゃっ!」


「おっと済まない。加減がわからなくてな」



あと数秒このままだったら二人とも床の染みになっていただろう。


きっちりとマリンに恐怖を植え付けられた二人。レイアの表情は怯えきっていた。だが隣にいるゼロの顔を見ると先程までの殺人鬼の顔ではなく、いつものゼロの顔に戻っていた。


「レイア、俺から離れるな」

「……はい!」



それだけでレイアは充分心強かった。



「しかしお主らもやるではないか。あのミカエルと対峙して生きておるとはな」



すこし柔らかな表情をしながら二人を称賛するマリン。


「ミカエル……だと?」


銃口をマリンに向けたまま質問するゼロ。


「そう、ミカエルだ」


余裕に満ち溢れた表情で紅茶が注がれたカップに手をかけるマリン。


(ミカエル、たしか十闘神様のお名前……)



十闘神ミカエルはサンジェロを創ったとされている神である。その伝承は誰もが知っている。



「ミカエル? ミカエルだと? たしか神官どももそんな事を言っていたな」


未知の力を操る神官たち。その神官たちを遥かに上回る力を有するマリンの存在。神が実在するとしてもなんらおかしくはない。そう頭ではわかっていても、認めることが出来ないゼロ。



「奴らは実在する。でなければ母がこの世界を破壊している」


リンゴをつかみ、手のひらに乗せ、それを木っ端微塵に粉砕するマリン。


完全に心を読まれているゼロ。



「……何者なんだ、お前たちは」


人の形はしているが、目の前にいるのは人ではない。それだけは確信できる。



「おっと、私としたことが。お主にはまだ名乗っていなかったな」


マリンは重い腰を上げる。


「私はマリン。偉大なる母の力を受け継ぎし、魔族だ。そして我らの目的はただ一つ、母を復活させ、この世界を再び支配する」



突拍子もないことを言い出すマリン。だが彼女から放たれるオーラは、それが嘘でも冗談でも無いことを物語っている。



「そんな、そんな事!」

「させないか?」


言葉を振り絞るレイアを一言で黙らせるマリン。


「だが、そううまくもいかない。母の復活を邪魔する奴等が存在している」


「それが十闘神とでも言うつもりか?」


ゼロの返しに初めて笑顔を見せるマリン。



「その通りだ。奴らは母を封印した。そして母の復活には奴らを一人残らず消し去る必要がある」


心臓の鼓動が速くなるゼロ。


(こいつは何を言っている? 俺たちにそんなことを話してどうするつもりだ?)



「そこだ。お主らには二つの道がある。一つはここで私に滅ぼされる道。まあ、私としてもその道は選んでほしくはない」


ゼロはもはや心を読まれることに対して驚きを見せることはなかった。レイアは背筋が凍りそうになりながらもマリンの言葉に耳をかたむける。


「ふ、二つ目は……」


恐る恐る尋ねるレイア。一つ目を選択するつもりは毛頭無いが、二つ目がまともな選択肢である保証は全く無い。



「我らに力を貸してもらう。ミカエルから生き延びたお前たちには、充分見込みがあるからな」



言葉の意味がわからないレイア。それに代わってゼロが質問をする。


「それは人類を裏切れということか? 神に敵対しろという意味か?」


マリンは間髪いれずに答える。


「わかりきったことを聞くな。下らない質問は時間の無駄だぞ?」



選択の余地はない。はなから二択にはなっていない。ここでマリンの機嫌を損なえば、二人の未来は確定してしまう。


「さあ、選んでもらおうか」


二人は人生の決断をここで下す他に無かった。






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