表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
282/621

episode 282 「メディアの魔力」

ワルターは本気でフェンリーに剣を向けてきた。


「おい、シャレになんねぇぞ!」


フェンリーは氷の盾を作り出し、ワルターの攻撃を防ぐ。


「仕方がないじゃないか。メディアが君のこと嫌いだと言うんだ」


ワルターは至って真面目な表情で攻撃を続ける。その様子をリラックスしながら眺めるメディア。


「いいわ。ワルター、頑張ってちょうだい」

「ああ、期待していておくれ!」


メディアの声援を受けてワルターの剣は更に鋭さを増す。



「調子に乗るんじゃねぇ!」



フェンリーはワルターの剣を氷で絡めとり、そのまま飲み込んでいく。


「あら、面白い力ね。私も手を貸しましょうか?」


フェンリーの加護を見て、メディアがワルターに尋ねる。


「いいや、必要ないさ。はぁぁぁぁ!」



ワルターが力を込めると剣から雷撃が放たれ、フェンリーの氷を粉々に砕く。


「な!」


驚愕するフェンリー。


「驚いたかい? この剣には十闘神スサノオの剣の破片が入っているんだ。雷電丸には遠く及ばないけれど、氷を砕くくらいは、わけないさ」


スサノオの名を聞いてピクリと顔の筋肉を動かすメディア。



(十闘神スサノオ……間違いなく母の敵ね。まさかこんなところでその名を聞くなんてね。良かったわ、こっちの坊やを捕まえておいて)


メディアの顔はすぐに笑顔へと変わる。



「ワルター! お前、操られてんだよ! 気をしっかり保て! 俺のことがわかんねぇのかよ!」


必死に叫ぶフェンリー。しかしワルターは攻撃をやめない。


「もちろんわかるさ。でもね、俺にとってはメディアが一番なんだ。確かに操られているのかもしれない。俺はメディアを愛しているんだ」

「あらやだ」


ワルターの言葉にわざとらしく顔を隠すメディア。フェンリーは苦虫を噛み潰したような顔をする。



「そうかよ! なら目ぇ冷ましてやるぜ!」



フェンリーは力を解放する。地面に手をつき、地中の水分を凍らせ、地上に氷の槍を作っていく。


「どこを狙っているんだい?」


易々と避けるワルター。



「ああ、狙いはお前じゃねぇからな!」

「しまっ!」



無数の氷の槍がメディアに向かって突き進んでいく。ワルターが急いでメディアの方へと向かっていくが、氷のスピードに追い付けない。


「メディアぁぁぁぁぁ!!」


ワルターの悲痛な叫びが響き渡る。四方八方から迫り来る氷の槍は、到底回避することは出来ない。それはメディアに突き刺さるかと思われた。



だが、突き刺さったのはメディアではなく、ワルターの方だった。



「がっあぁぁぁぁ!」



ワルターは血と悲鳴を口から吐き出す。


「バカな……なんでだよ」



ワルターの体はメディアから遠く離れたところにあった。確かにワルターはメディアを助けようとそちらに向かってはいたが、到底追い付ける距離ではなかった。だが、実際に攻撃を受けたのはワルターだ。



ワルターの体は瞬間移動した。いや、正確にはさせられた。氷の槍の先へと。



「はははふふふ! どうかしら? お仲間を貫いた感想は? 悲しい? くるしい? むなしい?」



無傷のメディアは二人を嘲り嗤う。



「でも安心して。私、残虐な性格ではないのよ」



そう言ってメディアはワルターに口づけをする。するとワルターの血はみるみるうちに止まり、傷口も塞がってく。


「どうかしら?」


ワルターは意識を失っているようだが、その顔には血の気が戻っていく。


「てめえ……」


フェンリーはメディアを睨み付け、再び地面に手を当てる。



「あら、良いのかしら?」


メディアはワルターの体に手をのせる。


「何回でも繰り返しましょうか?」

「チィ!」


フェンリーは舌打ちをする。


「逃げるのなら今のうちよ。私はこの坊やに死んでほしくは無いの。あなたもそうでしょう? 人を生き返らせるのって結構骨がおれるのよ。あなたを殺すのは簡単だけれど、坊やに影響が出たら困るもの」


そう言いつつも、メディアはフェンリーに殺意を浴びせる。その殺意はフェンリーが今まで浴びたどの殺意よりも強大で、逃げ出すのには充分なものだった。



気がついたときには、フェンリーは海の中へと姿を消していた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ