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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
281/621

episode 281 「メディアとワルター」

メディアは遥か上空から海全体を見渡していた。彼女の体からは無数の玉が飛び出しており、どうやらそのすべてが彼女の目として機能しているようだ。



「ふふふ。早く出てきなさい。死んでしまうわよ?」






ゼロは死に物狂いで泳ぎ続けた。メディアの眉間に弾丸を撃ち込む事には成功したものの、何故かあの程度ではメディアを殺すことが出来ないと確信するゼロ。そして万が一メディアに捕まってしまえば、もう二度と逃れることはできない。死ぬまで、確かにそう実感していた。



ワルターに刺された肩が激しく痛む。息はまだ持ちそうだが、このままでは命が危ない。かといって外に出てしまえば狙い撃ちされて一貫の終わりだ。ゼロは完全に八方塞がりになっていた。


考えれば考えるほど酸素は失われていく。



(く、危険だが一度外に出るしか……)



覚悟を決めて海面へと向かうゼロ。が、そんなゼロの足を何者かが掴んだ。



突然の出来事だったがゼロは冷静に対処し、ナイフを構えて後ろを振り向く。しかしその目線の先の人物にはさすがに驚きを隠せなかった。


(まさか……いや、しかし)


足を引っ張った男はゼロについてくるようにと合図する。ゼロは残されたわずかな息でついていく。万が一この選択が間違いだとしたら、確実に窒息してしまうだろう。



男の進む先には氷で出来た建造物があった。水中だというのにその氷は溶ける様子はない。男はその建物の中へと入っていく。もはや罠だのなんだのと考えている余裕など無いゼロも急いで男に続いていく。



「っはぁ!!」



ゼロは大きく呼吸をする。氷の中は空気が充満しており、外と何ら変わらない状態だった。



「よう、大丈夫か?」



男が心配そうに声をかけてくる。


「ああ、本当にお前なのか?」


ゼロは男を見上げる。トレードマークであるサングラスやタバコは身に付けてはいないが、その背丈、その髪色はフェンリーを連想させるのには充分すぎるほどだった。


だがそれでも完全に彼だと信じることは出来ない。正確には、たとえ彼だったとしても安心することは出来ない。ついさっきワルターに襲われた傷を押さえながら疑いの表情でフェンリーを見つめるゼロ。



「安心しろ、俺だ。ワルターの事も把握してる」



フェンリーはそう答えてゼロの傷の手当てをする。安心したのか、血が足りないのか、それともその両方なのか、ゼロは意識を失った。




ゼロが目を覚ました頃にはフェンリーはお馴染みの姿となっていた。濡れた空色の髪は天を指すように逆立ち、三角のサングラスをかけながらタバコをふかしている。完全に彼だと安心したゼロはもう一度バタリと倒れる。


「おいおい大丈夫かよ」


フェンリーがタバコを消しながら覗き込んでくる。


「ああ、気が抜けてしまった。無事だったんだな」


ゼロの言葉に複雑な表情をするフェンリー。


「まあ、一応な」

「?」



フェンリーは組織本部から流されたあとの事をゼロに説明しだす。



フェンリーとワルターは一緒にこの付近の島に流れ着いた。その島は明らかに無人島だったが、しばらくそこで生活していると突如一人の女性が現れた。その女性はこの場所にはとても似合わないほど美しく、明らかに不自然だった。


「お前、ここで何してんだ」


女性は困った表情を浮かべ、もじもじとしている。


「遭難してしまいまして、もしよろしかったら食料をわけて頂けないでしょうか?」



フェンリーは女性を疑い、近づこうとはしなかったが、ワルターは平気で近づき握手まで求めていた。


「おい!」

「フェンリー、こんなにも美しい女性が困っているんだ。男として助けない訳にはいかないだろう?」


止めるフェンリーの意見を無視し、ワルターは女性を迎え入れた。



「ありがとう。私の名前はメディア。あなたは?」

「ワルター・フェんサー! こっちはフェンリーだ。よろしく頼むよ」



メディアとワルターはもう一度握手をした。


異変が起きたのは次の日からだった。ワルターの様子が明らかにおかしい。いくら女性好きとはいえ、メディアとの距離感が近すぎる。まるで何年も一緒に生活しているかのように振る舞っている。


「おい、ワルター。ちょっと警戒しなさすぎじゃねぇか?」


フェンリーの言葉は耳には入っているようだが、全く聞き入れようとはしない。


「フェンリー、君の気持ちもわかる。だけどメディアは大丈夫さ」


徐々にワルターはおかしくなっていった。生活の優先順位がメディアとなり、たとえ食料が少量しかなくともすべてをメディアに与えた。以前から女性優先の性格ではあったが、それはあくまでも自分自身よりはという話である。フェンリーの事を全く考えずに行動するなどあり得ない話だった。


そして事件は起きた。


突如ワルターがフェンリーに対して剣を向けた。


「おい、なんの真似だよ」


フェンリーの頭の中は嫌な予感で溢れていた。そしてその予感は的中する。


「フェンリー、君……死んでくれないか?」






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