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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
280/621

episode 280 「襲来」

ワルターのスピードは凄まじかった。手にした雷剣を完全に使いこなしており、義手を付けたことによるバランスの変化にも完璧に対応していた。


ワルターの剣は、一切の躊躇を見せない。容赦なくゼロの首もとへと迫ってくる。



「ワルター! 俺がわからないのか!?」



紙一重で避けるゼロ。



「ん? もちろんわかるさ。君の名はゼロ。一緒に旅をしていた仲間さ」



キョトンとした表情で淡々と答えるワルター。それでも剣はゼロの方へとしっかり向いている。


「くそ! 操られているのか! 」


避けるだけで反撃が出来ないゼロ。


「操られてなんかいないよ。俺は俺の意思で君を殺そうとしている。ここに来た理由はわかっているよ。メディアを殺しに来たんだろう? そうはさせないよ」


ワルターのスピードが更に上がる。不安定な足場の上でなければ、到底ゼロでは避けきれないだろう。


次第にゼロには無数の斬り傷が刻まれていく。しかも斬られる度に電流を流されるおまけ付きだ。



(くっ……速すぎる。一度海に潜ってやり過ごすか? いや、そんなことをすれば電撃の格好の餌食になってしまう……)



「反撃しないのかい? まあ、その方が俺は殺しやすくて助かるけどね」


口では心配するようなそぶりをみせるワルターだが、その剣は全く威力を弱める事無くゼロには襲いかかる。


(考えろ、ワルターは確実に操られている。そしてまず間違いなく操っているのはメディアだろう。なら、奴を殺せば術は解ける筈だ)




ゼロは天に浮かぶ島を見つめる。



(しかし、どうやってあそこまで……ワルターの電撃を使えばあるいは……だが、奴は決してバカではない。自分にも被害が及ぶほどの電流は流さないだろう。そもそも電流を使わずとも剣技で俺を殺せるのだからな)



ゼロが考えを巡らせていると、ワルターの剣が肩を貫く。


「ガッ!」

「よそ見厳禁だよ」


ワルターは剣がゼロに突き刺さった状態で電流を流す。



「ガァァァァァァァァ!」



ゼロは悲鳴をあげ、その場に倒れる。


「ふう。ゼロ、君やっぱり弱くなったね」



ワルターはゼロを抱える。


「メディア! 終わったよ!」


ワルターが空中の島に向かって叫ぶと、島からまた一人の人間が降りてくる。飛び降りるというよりはゆっくりと舞い降りてくるような感じだ。



「よくやったわね、ワルター」



降りてきたのは魔女の第三子、メディアだった。



「この子がゼロね。ミカエルの攻撃を耐えたというから期待していたのだけれど、とんだ期待はずれだったみたいだわ」


マリンは気絶しているゼロへと手を伸ばす。


「何をする気だい?」

「まだ息がある。なら殺さなければ」


マリンの指先に力が溜まっていく。そのエネルギーは凄まじく、いまのゼロ相手なら触れるだけでその命を終わらせることができるだろう。



「止めてくれないか」



ワルターはゼロの体をマリンから離す。




「なぜ?」


艶やかだが、その声には確かに殺意がはらんでいる。



「彼はもう動けない。君への攻撃はおろか、立ち上がることすら出来ないんだ。そんな相手に攻撃をする君なんて見たくないんだよ」



ワルターはマリンの手を握りながら囁く。


「……そうね」


ワルターの言葉を受けて、メディアは殺意を治める。


ズドン!


メディアがワルターの方を向いた一瞬の間にゼロは起き上がり、メディアの眉間に弾丸を撃ち込む。



「メディア!!」



そしてワルターがメディアに気をとられた隙にワルターの腕を脱し、海の中へと逃げ込む。


「メディア! メディア!」


ワルターは逃げたゼロの事など全く気にせず、眉間から血を流すメディアの体を揺する。



「ふふふ。あーはっはっは!」



メディアが突如笑い出す。


「いつ以来かしら、血を流したのなんて。ふふふふふ」


メディアは笑いが止まらない。美しく整った顔はひどく歪み、まるで血に餓えた獣のようだ。


「そうよ、そうでなくっちゃ! もったくもって憎たらしい」


メディアの額から弾丸が飛び出す。血ももう止まっているようだ。



「メディア! 良かった、無事なんだね?」



心配そうなワルターに対して明確な敵意を抱くメディア。


「お前の処分は後。まずはあの坊やを捕らえなくては。私、自らね」


そう言ってメディアは空中へと上っていく。



「さあ、どこからでも上ってきなさい。どこからでもあなたを捕らえてあげる。ふははははは!」



メディアは笑っていた。それを見てワルターも微笑む。それは無事なメディアに対してか、はたまた逃げたゼロに対してか、真実はワルター自身にも分からない。




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