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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
279/621

episode 279 「無情な再会」

ゼロは一人海の上にいた。正確には船乗りといるので二人だが、ゼロにとっては久しぶりの一人旅だった。


老人が用意してくれたお金を船代でほとんど使いきってしまったが、なんとか残ったわずかな金で水とパンを買い、それを一人で食す。


食べながらゼロは様々な想いを馳せていた。



(フェンリーやワルター、それにオイゲンは無事だろうか。あれほどの事故だ。無傷とはいかないだろう……だが、彼らならきっと生きているはずだ)


頭がモヤモヤする。


(……集中できていない。こんなことではメディアはおろか、ただの盗賊にすら敗北をきするかもしれない)


ゼロは残りのパンを口に押し込め、水で流し込む。


(とにかく今は集中だ。まずは確実にメディアを仕留める。そして力を手に入れ、レイアを探しだし、助け出す)


ゼロはやるべき事を確認する。そして老人から譲り受けた拳銃の手入れを始める。



(やはりこうしていると落ち着く)



拳銃をいじっていると、ゼロの感覚が少しずつ研ぎ澄まされていく。


(しかしよく手入れされている。しばらく使われてはいなそうだが、これでは俺のすることはほとんど無いな)


ゼロはこれまた老人にもらった弾を拳銃に詰め込む。装填数は六発だ。


実弾の詰まった拳銃をホルスターに収めると、ゼロの感覚は戦場にいた頃と変わらないまでになっていた。


ゼロが装備の最終確認をしていると、急に船が動きを止める。もう着いたのかと辺りをみわたすが、一面は海のままだ。陸はおろか、小島ひとつ見当たらない。いや、それどころか生き物の姿すら全く見えない。



すぐさま船長の元へと向かうゼロ。船室の扉を開けると、船長は真っ赤に染まった紙を手に持ちながら頭を抱えていた。



「なぜここに止まった? なにかトラブルか?」


ゼロが尋ねる。だが、どうやらそうでは無いらしい。


「いや? 確かにここのはずなんだが……」


船長は地図と船のレーダーを交互に見ながら呟く。ゼロも地図を見るが、地図には座標が記されており、船のレーダーにも同じ座標を示していた。


(おかしい……ミハイルの地図によればメディアの住みかは確かにここだ。間違い? いや、そんなはずは)



ゼロはおもむろに外へと出る。


(まさか、海中か? だが、仮にそうだとしたらどうやって向かえばいい?)


頭を悩ませるゼロ。ふと何かに気がつく。


(まてよ、なぜこんなにも暗い? まだ昼過ぎだぞ)


船は完全に影に覆われていた。はじめは雲が太陽に掛かっただけかと思っていたが、一向に影がとれる気配がない。



(まさか……)



息を飲むゼロ。すると上からパラパラと砂が落ちてきた。恐る恐る上を見上げるゼロ。



「!!!!」



そこには確かに島があった。大きさは家一軒分くらいだが、確かに島が浮いていた。


(これも加護の力だと言うのか?)


すぐさまラティックの風の加護を思い出すゼロだが、あれは矢を浮かせる程度の力、今回とは比べ物にならない。


ゼロが呆気にとられていると、島から何かが落ちてきた。


砂ではない。石でもない。



(あれは……人!)



天から降りてきた人物は剣を構え、船に向かって振り下ろす。



「な、なんだ!?」



船のなかにいた船長はあわてふためく。それも無理はない、いきなり船が真っ二つに割れてしまったのだから。


激しい波がゼロと船長を襲う。ゼロは必死に泳ぎながら船長を捕まえる。気絶してしまっているようだが、なんとか生きてはいるようだ。ゼロは船の残骸に船長を乗せる。



「一体何者だ……まさか、メディア本人か?」



船を割った人物は残骸に腰かけていた。その人物の顔は島の影でよく見えなかったが、その声は確かにあの男だった。



「久しぶりだね、ゼロ。まさか侵入者が君だったとはね」


「ワルター……」



その声は紛れもなくワルターのものだった。目が徐々に暗闇に慣れてくる。無くした筈の腕には義手をはめていたが、確かにその姿もワルターに間違いなかった。



「早速で申し訳ないけど、死んでくれないか?」





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