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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
274/621

episode 274 「忠告」

マークが次に目を覚ましたのは診療所ではなく、軍の牢屋だった。当然のように鍵がかけられており、外に出ることは出来ない。それどころか体は完全にベッドに固定されており、身動きすら取ることが出来ない。


「クソッ!!」


込み上げてくる怒りの感情を言葉にする。


「なぜどいつもこいつも俺の邪魔をする!」


バタバタとベッドの上であばれるマーク。それでも拘束は固く、外れる予感は全く無い。



それから三日間、マークは水すら与えられなかった。


四日目の朝、疲労しきったマークの元に見覚えのある女性が姿は現した。軍の施設内だというのにまるで私服のようなラフな格好の女性、ジャンヌ・ヴァルキリアだ。


「中将……!」


マークは疲労しつつもいささかも衰えない眼光でジャンヌを睨み付ける。


「あら、意外と元気そうね?」


ジャンヌは牢屋の前に腰かける。



「どう? 少しは頭が冷えたかしら?」


とてもそんな風には見えないマークに問いかけるジャンヌ。案の定、マークからは怒りの感情が返ってくる。



「……冗談ではない! 早く俺を解放してくれ!」


目が血走っているマークに対してため息をつくジャンヌ。



「あなた、自分のことばかりね。一応シオンちゃんがどうなったとか気にならないの?」


マークの頭の中からシオンの事は完全に抜け落ちていた。


「……どうなったのですか」


多少落ち着きを取り戻したマークににっこり笑いながら答えるジャンヌ。



「もちろん処罰したわ。一応命令違反ですもの」



ジャンヌの言葉に血の気が引くマーク。


「……殺したのですか」


聞きたくはない。だが、確認せずにはいられない。




「まさか。彼女は立派な軍人よ? あなたたち兄弟とは違って」


ジャンヌは立ち上がり、剣を抜く。鉄の格子ごしにもグサグサとジャンヌの殺気がマークに突き刺さる。


「上からはあなたを生かせとは言われていない。今後、少しでも妙な気を起こそうとしたなら処分するようにとは言われてるけどね?」


ジャンヌの殺気が更に増す。今だけはこの鉄格子にありがたみすら感じる。



「そして、もし今回のように私の妹たちにまた手を出したら……必ず殺しに行くわ、私自ら」



それだけ言い残してジャンヌは去っていった。


皮膚が震える。水分補給をおこなっていないにも関わらず、大量の汗が滴る。


「……クソ」


マークは力なく呟いた。





「やりすぎなのでは?」


牢屋の外で待機していたローズがジャンヌに問いかける。


「あら、これでも優しくした方よ? 一応殺さなかったでしょ?」


ジャンヌは至って真面目に答える。


「ですが、心は死んでしまったかもしれません」


三日間鳴り止まなかった騒音が今では全く聞こえない事に不安感を覚えるローズ。



「ならそれまでの男だったってことね」


ジャンヌはローズの前を通りすぎ、施設を出る。




「……ほんと男ってバカ」


ジャンヌは同じ三剣士の事を想いながら石ころを蹴る。


「いいわ、後始末はいつでも女の仕事だもの」


そう呟いてジャンヌは身支度をするため、ヴァルキリア邸へと戻っていった。




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