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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
272/621

episode 272 「除籍」

マークと軍の診療所で目を覚ました。隣にはシオンの姿もあった。大分疲労しているようだが、目立った怪我はないようだ。マークはというと腹にできた傷が深く、しばらくはまともに動けそうにない。


(アンは、溶岩は一体どうなったんだ)


考えるが答えはわからず、教えてくれる人物もいない。だが、自分達がここに運ばれたということ、そして帝都にあるこの診療所が無事ということは解決したということだろう。


意識を失う前に最後に見た光景は、走ってくるリザベルトとガイアの姿だったが、二人の姿はどこにも見当たらない。


(まさか、まだ事態は収束していないというのか? ならばこんなところで寝ているわけには……)


立ち上がろうとするマークだったが、強烈な腹の痛みに襲われ、ベッドから転がり落ちてしまう。その音でシオンも目を覚ます。


「あれ、ここ……ってマー君大丈夫!?」

「……その呼び方はやめてくれ」


床に伏せながら答えるマーク。




ガイアは帝国軍の軍法会議にかけられていた。イシュタル元帥への攻撃、一般人であるセルバの殺害、そしてイシュタル元帥を殺したレヴィ元帥とのかかわり。問われることは山ほどあった。


「あなたは英雄です。数々の危機から帝国を守り、今回も何百人もの人間の命を救った」


判事がガイアに語る。


「私にはわからない。そんなあなたがなぜ罪を犯すのか」


一般人の殺害。どんな理由があろうとも許されることではない。ガイアは軍の除籍が決定していた。


「あなたの最後の任務は大罪人、元元帥レヴィの捜索、及び拘束」


ガイアはそれを黙って聞いていた。


「その任務を達成してはじめてあなたは除籍されます。それさえも達成できずにいるというならば、我々はあなたを拘束し、罪人として処罰する他にありません」



軍法会議が終わってからも、ガイアはしばらくその場に立ち尽くしていた。


人を殺した。もちろん始めての経験ではない。何十人、何百人とこの手にかけてきた。だがそれでも私怨で人を殺したのは始めての経験だった。


セルバを殺害したときのあの感触、そして殺されたセルバとムゲンの顔。それらはこれから一生忘れることはできないだろう。いや、忘れてはいけない。それが罪というものなのだから。



「もう、後戻りは出来ないな」



次の朝日を待たずに、ガイアは帝国を出発した。


自らもレヴィ捜索に向かうはずだったマークは、ベッドの上でリザベルトからガイアの件を聞いた。


「兄上が除籍……? 」


マークの驚きはシオンの比では無かった。まだ完治とは程遠い体を無理矢理起こす。


「その体で何をするきですか!」


リザベルトが倒れそうなマークの体を支える。


「兄上の元へ、俺は足手まといかもしれない……でも、兄上の助けにはなるはずだ!」


傷口が開いたのか、マークの腹の包帯が赤くにじんでいる。シオンはそんなマークの横顔を見つめる。


「リズちゃん、マー君は止めても行くよ」


シオンはマークに肩をかす。


「少佐まで!」


リザベルトは二人を止めようと扉の前に立ちふさがる。


「確かにこれはもともと我々に与えられた任務です。ですが今の二人では私を倒すこともできない! そんな二人を行かせるわけにはいきません!」


リザベルトは鞘に手をかける。


「分かってくれとは言わない。ただ、どいてくれ」

「どきません」


剣を抜くリザベルト。


「リズちゃん、私たち友達でしょ?」

「友達だからこそです!」


リザベルトは剣を二人に向ける。


「もう少し、寝ていてもらいます!」





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