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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
271/621

episode 271 「南十字星」

触れてはならないもの。目の前のアンを見て、マークの全身がそう警告してくる。強い弱いという話ではない。怖い怖くないという話でもない。一言で表せば神々しい。海岸を照らす赤い太陽がアンをより神々しく見せる。


アンの目は完全に死んでいた。怒りを見せるわけでもなく、悲しみを見せるわけでもない。単純な敵意の入れ物と化していた。



「マー君……」

「ああ、敵う相手じゃない」



シオンとマークはすぐさまいまのアンとの力量の差を把握する。リザベルトに至ってはガタガタと震え出す始末だ。


「倒すなどと考える必要はない、耐えるんだ。兄上が来るまで」


そんなマークの弱気な考えが見透かされたのか、アンはマークめがけて突進してくる。武器ひとつ持たない手ぶらの少女だというのに、マークから見た彼女はまるで戦車のようだった。


「マー君!」


シオンが叫ぶ。マークは七聖剣ウォーパルンを構え、突っ込んでくるアンに向かって振り下ろす。アンの体は肩から腰にかけて真っ二つに割れ、体内から大量の血を撒き散らす。が、まるで逆再生をしたかのようにその血は一滴も砂に吸い込まれることなく、すぐに体内に戻り体ももと通りくっつく。


「な!」


驚くマークの腹に無慈悲なる蹴りを繰り出すアン。マークは体内の空気だけでは足りず、血も一緒に吐き出す。


「かっ!」


蹴りの衝撃でアンの足もボロボロになるが、瞬時に回復する。マークの体は五メートルほど吹き飛ばされ、そのまま動かなくなる。


「リズちゃん、マー君を!」


そう叫びながらアンに飛びかかるシオン。


『氷牙!』


シオンの氷を纏った突きを、左手を犠牲にして受け止めるアン。怯むことなく追撃するシオンだったが、アンの蹴りの方が僅かに速く炸裂する。


「くぅ!」


腹に氷を纏い、何とかダメージを軽減するが、それでも体を裂かれるようなダメージが残る。


「リズちゃん! 准将に伝えて! すぐに!」

「だ、だが!」


立ち向かおうとするが、手足の震えが止まらないリザベルト。



「早く! このままじゃみんな殺されちゃう!」



アンの攻撃を何とか防ぎながら叫ぶシオン。


「急……げ、中尉。兄上に……」


マークもふらふらしながら立ち上がる。


「りょ、了解した」


リザベルトは来た道を引き返していく。



「正念場だな」

「乗り越えよっ! 私たちならできる!」



シオンはマークの抉れた腹を凍らせる。


「ごめんね、私治癒術使えなくて……」

「いや、充分だ」


マークは痛みをアドレナリンでごまかしながら、剣を十字に構える。


「決めるぞ」

「うん!」


二人に突進してくるアン。シオンはマークの後ろに回り、マークが迎え撃つ。



「はぁぁぁぁぁ!」



マークは十字に構えた剣を振り下ろす。


『聖十字!』


十字の剣圧がアンに直撃する。アンの体は四つに分かれるが、先程と同様にもとに戻ろうとする。が、それは剣圧の後ろからやって来たシオンが許さない。掌を交差させ、四散したアンの体を打ち抜く。



『南十字星!』



攻撃を受けたアンの体は凍り、くっつくことなく地面に落ちる。そしてそのまま動かなくなった。


「ハァ、ハァ」

「やったな」


疲労しきったシオンの肩をたたき、二人して地面に倒れこむ。


向こうからリザベルトとガイアが走ってくるのが見える。そして安心した二人はそのまま目を閉じた。



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