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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
269/621

episode 269 「シオンVS不死身の怪物」

まさに異形。謎の怪物の登場に、兵士たちは何の対応もできずにいた。ガクガクと足が震え、剣を持つ手もおぼつかない。もはや機能を持ち合わせていないアンの顔面を見つめることはおろか、その姿さえ視界にとらえたくはない。


このまま放っておくことはできない。そんなことはわかりきっていたが、一歩前へと進むことができない。


そんなどうしようもない雰囲気の中、一際若い一人の女兵士が前へと飛び出す。



「あなたたちは道作りに集中して! あの子は私が対処します!」


怯えきった兵士たちにも叫び、アンに飛びかかるシオン。拳に力を込め、魂を込め、氷を纏う。


『氷牙!』


鋭く尖った氷を纏った拳でアンを殴り付ける。見事その拳はアンに命中し、肉を切り裂きダメージを与える。血が流れ、肉が裂け、見るに耐えない惨状と化す。だがそれでもアンには何の変化もみられない。


(効いてない? 確かに前も奥義を耐えたけど、何の反応も無いなんて……)


アンは港に流れ着いた大量の死体を飲み込みながら進んでくる。その体積はどんどん大きくなっている。このままにしておけば、たとえマグマを対処したとしても帝国にとって大きな障害と為りかねない。それどころか世界の崩壊に繋がるかもしれない。



シオンはアンに攻撃を加え続けた。肉の固まりを殴る嫌な感触。鼻につく腐敗臭。


アンはまったく反撃してこない。もうそこに心は無いようだ。


(気分が悪い、無抵抗の相手をいたぶり続けるなんて)


心を痛めるシオン。だが自分がやらなければと攻撃を続ける。その攻撃の甲斐もなく、アンの進行は止められない。


『氷牙!』

『氷牙!』

『氷牙!』


氷を纏った拳で殴り続ける。殴った部分は抉れ、アンの体はボロボロになる。しかしアンは地面を吸収し、すぐに体積をもとに戻してしまう。気がつけばボロボロなのはシオンの拳の方だった。それでもシオンは攻撃をやめなかった。



「頼んだぞ」


ガイアのその言葉がシオンに力を与えた。


(准将が私に任せてくれた。私はそれに応える!)


シオンの腕の血が固まりだす。


「氷牙拳法第陸の形!」


シオンの血は凍り、立派な牙へと変化する。



『氷牡丹!』



血の氷がアンの肉体に入り込み、そこで花を咲かせる。アンの肉体を内側から破壊し、凍らせる。


「ハァ、ハァ」


シオンの体力も血も限界に来ていた。攻撃を放った拳は、シオンの真っ白な皮膚を真っ赤に染め上げていた。


(これで倒れてくれなきゃ、私が倒れちゃう……)



それでもアンは止まらなかった。体がボロボロと崩れ去りながらもその歩みは止まらない。


(……そういえば生首でも生きてたんだっけ)


体の力が抜け、膝が折れる。シオンにアンを止める力は残されていなかった。


「参ったなぁ。ならせめて、氷牙拳法第玖の……」


諦めの表情を浮かべるシオン。体がどんどん冷たくなっていく。が、ふと肩に暖かさを感じる。



「よく耐えた。後は俺たちに任せてくれ」



金髪をなびかせた剣士が二人現れた。


「マーくん! リズちゃん!」


嬉しそうに叫ぶシオン。



「「その呼び方はやめてくれ!!」」



二人はアンに攻撃を仕掛ける。シオンの攻撃によって動きの鈍っていたアンの肉体は勢いよく転び、初めて後退する。


「あれが報告にあったアンなのか? ずいぶんと外見は違うようだが……」


マークが首をかしげる。


「確かに。姉上の話では一応人間との事だったが、あれを人間と呼ぶことは出来ないな」


リザベルトの剣を握る腕に力が入る。


「向こうには兄上がついている。きっと作戦は成功する。俺たちがこいつを退ければな」



マークは背中に背負ったもう一本の剣を手に取る。七聖剣、ウォーパルンだ。


「行くぞ! 中尉!」

「はい! 中佐!」


帝国のため、民のため、そして自分の誇りを守るため、二人は目の前の敵に立ち向かう。


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