表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
267/621

episode 267 「帝国のため」

辺りはまるで地獄のようだった。炎を纏った岩石が無慈悲にも村に降り注ぐ。と同時に山頂から灼熱のマグマが容赦なく流れてくる。


「早くこちらへ! 急いで!」


マークが他の兵士とともに村の人々を避難させる。


「あっ!」


子供がつまずき転んでしまう。急いで助けにはいるマーク。


「大丈夫かい? たてる?」

「ありがとう、お兄ちゃん」


マークに手を差し伸べられ、笑顔を浮かべる少女。だがその顔はすぐに恐怖にひきつる。その目はマークを見ておらず、その先にある岩石に怯える。二人に向かって降り注ぐ岩石。


「くっ!」


細かい岩石を背中に背負った七聖剣、ウォーパルンで沈下し、弾く。が、規格外の岩石が二人を襲う。ウォーパルンの刀身が体積を肥大させ、岩石に大量の水を発射する。辺りは霧につつまれる。


「やったか?」


岩石の行方を見つめるマーク。だが岩石はいささかもその威力を失っていない。マークは破壊を諦め、少女を逃がそうと担ぎ上げる。焦ったのか、マークは後頭部に忍び寄る小さな岩石の存在に気が付かなかった。岩石はマークの意識を軽く飛ばす。


「お兄ちゃん!」


少女が叫ぶが、マークの意識は戻らない。他の兵士もその様子に気が付くが、とても間に合いそうにない。そもそも彼らに岩石をどうこうできる術はない。


それでも少女は逃げなかった。自分を守ってくれたマークの上に覆い被さって目を閉じる。


「きゃぁぉぁぉぁぁ!」


少女の悲鳴が響きわたる。誰もが耳を塞いだ。その悲鳴が、肉を潰す音に変わるのを聞きたくなかったからだ。




『双氷葬!』




繰り出された掌によって岩石は粉々に砕け散った。


「大丈夫?」


シオン・ナルス、帝国軍少佐である彼女もマーク同様呼び出された。少女はシオンを見上げる。


「ありがとう、お姉ちゃん」


少女は涙を浮かべてシオンに抱きつく。シオンは少女の頭を優しく撫でる。


「ううん。お礼を言うのは私の方だよ。マークを守ってくれてありがとう!」


シオンが笑いかけると、少女の泣き顔も笑顔に変わる。少女は他の兵士によって避難した。



「リズちゃん、マークをお願い」


シオンは気絶するマークを、同じく呼び戻されたリザベルト・ヴァルキリア中尉に手渡す。


「了解した」


リザベルトはマークを抱え、その場を去る。


「さてと、大変なのはむしろここからね」


シオンはどんどんと流れてくるマグマを見ながらポキポキと指と腕を鳴らす。




ムゲンはセルバの遺体と共にすでに姿を消していた。ガイアは追うことも止めることもせず、ただただうなだれていた。


(そんなことはわかっている)


マークの言葉、いやイシュタルの言葉を思い出すガイア。


(だが、俺は……)


苦痛の表情を浮かべるガイアの元にリザベルトがマークを抱えて走ってくる。


「レオグール准将! こちらに居られましたか。すぐに村の方へ! ナルス少佐が現在対処にあたっていますが、とても彼女一人では……」


リザベルトの言葉など一切耳には入っていなかった。その腕の中の弟が後頭部から血を流して気絶していたからだ。


「マーク!」


駆け寄るガイア。すぐに安否を確かめる。何とか息はあるようだ。



「村の少女を助けたんです」



ようやくリザベルトの言葉が耳に入いる。




「何があっても帝国のために尽くせ」




マークとイシュタルの姿が重なる。


下を向き、涙を流すガイア。


「レオグール准将?」


リザベルトはガイアの見たこともない姿に動揺する。



「まさか、お前に教えられるとはな」


ガイアは涙を拭き、前を向く。


「マークを頼んだ。ヴァルキリア中尉」

「はい!」


ガイアは村の方へと走り出した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ