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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
260/621

episode 260 「色欲の魔女」

とある小島。とても小さなその小島には一軒の家が建っていた。家の大きさもさほど大きくはなく、おそらく一人暮らしだろう。


その家から男の声が聞こえてきた。


「さあレディ、食事の用意ができたよ」


どうやら一人暮らしではないようだ。男の声に誘われて女が出てくる。


「あら美味しそうね。それにしても意外、あなた料理なんてできたのね」


女性はやけに露出度の高い服を着ている。正直目のやり場に困るくらいだ。


「この程度、たしなみさ。これのお返しもしたいしね」


男の左腕は義手だった。


ワルター・フェンサー。帝国軍大佐にして組織の殺し屋。そして組織本部での戦いで濁流に巻き込まれ、この小島に流れ着いた。



「いいものでしょう? とても古いものだけれど」


ワルターは瀕死の状態でこの島にたどり着いた。この島の主である女性はワルターを快く受け入れた。そしてその人を越えた力で瞬く間に治療してしまったのだ。


「ごめんなさい。本当はその腕ももとに戻してあげたかったのだけれど……何か呪いのようなものでもかかっているのかしら?」


申し訳なさそうな顔の女性。


ワルターの腕を奪ったのは帝国軍最高戦力の一人、イシュタル。彼のもつ七聖剣エクスカリバーは加護を断つ剣。おそらく彼女の治癒の加護も届かないのだろう。


「とんでもない! 元の腕よりも調子がいいよ!」


ワルターは元気良く義手を動かす。



二人はワルターの作った料理を頬張る。


「美味しい。あなた料理人になれるんじゃないかしら」


女性はワルターの料理を賛美する。


「大袈裟だな。俺よりも妹やレイアの方が美味しいさ」


レイアの名が出たとたん、女性の料理を口に運ぶ腕が止まる。




「どうしたんだい? もしかしてニンジンは苦手だったのかい?」


ニンジンが刺さったままのフォークを見てワルターが尋ねる。



「……ごめんなさい。実はそうなの」



女性はフォークを置く。


「少し席をはずしていいかしら?」

「どこへ……いや野暮ってものだね」


この家にはトイレがなかった。ワルターは家を出る女性を、特に怪しむ様子なく見送る。




(レイア……)




家を出たとたん、女性の体は跡形もなく消え去る。




「わ! どうしたの姉さん!」


突然現れた女性に驚くメイザース。ここはテノンにあるメイザース大神殿地下。ここにはレイアが監禁されている。


女性はメイザースを無視し、レイアがとらわれている祭壇へと近づいていく。


「ちょっと姉さん! レイアに何しようってのさ。僕のレイアにさわらないでくれ!」

「うるさい」


女性はメイザースを睨み付ける。するとメイザースの体は金縛りにあったように動かなくなる。



「やっぱりあなたがレイアなのね」



レイアの姿を確認し、満足そうに微笑む女性。そしてそのレイアの唇に口づけをする。



「ああああああああ!!」



それを見て叫び声を上げるメイザース。体を縛っていた女性の術も簡単に破れ去る。


「僕のレイアだぞ!」

「あらメイザース、相変わらず女々しいわね」


猛突進してくるメイザースを触ることなく地面に叩きつける女性。


「あなたのような子供が私に逆らえるとでも?」


まがまがしい空気が神殿の中に流れる。それに反応したのか、同じ神殿内に安置されている魔女の体が震え出す。



「あら、お母様を怒らせてしまったかしら? 今日のところはこれで帰らせてもらおうかしら」

「待て!!」



叫ぶメイザースを嘲笑うかのように姿を消す女性。


メイザースは急いでレイアの元に駆け寄る。レイアの唇にはくっきりと跡が残っていた。


「くそ! くそ! くそ! 僕だってまだしてないんだぞっ!」


メイザースはレイアの唇に触れようとするが、弾かれてしまう。女性の魔力が邪魔をしているようだ。メイザースの背中から悪意に満ちた殺気が溢れる。



「メ~ディ~アァァァァァ!!」



メイザースは獣の叫び声のような、狂った声をあげた。








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