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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
256/621

episode 256 「全滅」

魔女の差し出した黒体に触れれば自我を失う。その代わりもう二度と苦しみや悲しみを味わうこともなくなる。目の前の黒体を見つめるアスラたち。


「さあ、どうした? 案ずるな、転がっている連中ももちろん助けてやる。粋のいい人間は大好物さ」


魔女は次々に黒体を発生させる。


あれに触れれば今までの苦しみもすべて消し去ることができる。だが、果たして本当にそれでいいのか? アイツとの約束はどうなる?


誰一人として黒体に近づこうとしないアスラたちを見て、次第に魔女の機嫌は悪くなっていく。


「なんだ? まだ見せしめの人数が足りないのか? 愚か愚かと罵ってはいたが、それは本当の事だったようだな」


魔女は黒体を消滅させ、変わりにハデスを葬ったエネルギーの塊を無数に出現させる。一発であの威力だ。これだけの数の攻撃を喰らえばどうなるかなど想像する意味もない。



「アスラ……」


全身を包帯で包んだネスがアスラの裾をつかむ。とても不安そうだ。


「安心しろ。お前たちは俺が守る。約束したからな」


アスラは怯えるネスに微笑みかける。



「スサノオ! ホルス! アテナ!」


アスラが叫ぶ。名前を呼ばれた三人は直ぐに意味を理解した。



「ほう、それは生きることを拒否したという認識でいいな?」

「いいや、生きることを選んだんだ」



そう言って魔女に突っ込むアスラ。


スサノオ、ホルス、アテナの三人は倒れた仲間の救出に向かう。その三人を魔女のエネルギー弾が襲う。


魔女はアスラの攻撃を軽くあしらいながらも、他の子供たちへの攻撃の手を緩めない。


猛スピードで迫り来るエネルギー弾。だがそれをしのぐ速さでハデスたちを救出するスサノオたち。



「ほう、追いかけっこか。懐かしい」



魔女は意地になったのか、残りのエネルギー弾すべてをスサノオ、ホルス、アテナの三人に差し向ける。



「ネス! ミカエル! ルナ!」



アスラは全く手応えを感じない打撃を魔女に繰り出しながら三人に指示を出す。名前を呼ばれた三人は、スサノオたちが魔女の注意を引き付けているうちにハデス、ルイン、モルガナの三人を奪取する。



「無駄なことを、それらは私の攻撃を二度も受けた。生きていようがどのみち廃人だ」



魔女はハデスらを無視し、引き続きスサノオ、ホルス、アテナへ攻撃する。


三人のスピードは既に人類最速を越えていたが、スタミナの限界が訪れようとしていた。


最初に限界に達したのは彼らの中で最速の男、スサノオだった。足がもつれ、派手に転ぶ。


「スサノオ!」


アテナが叫んで救出に向かうが、時既に遅し。その時を待っていたかのようにエネルギー弾が一斉にスサノオを襲う。悲鳴をあげることすら叶わず、スサノオは全身を破壊される。腕はおかしな方向にねじ曲がり、体に付いているのが不思議なくらいだ。


仲間の無惨な姿に一瞬目を奪われるホルス。それが命取りなのは説明するまでもない。その数秒後にはスサノオと同じ運命を迎えた。


彼らのなかでもっともバランスのとれた身体能力をもつアテナ。そんな彼女は今、魔女に集中攻撃を受けていた。


(私が魔女の注意を引き付けていれば、その間は他の皆への被害は少なくなる。モルガナたちのためにも、ここは私が頑張らなければ……)


ハデスたちを逃がすべく、必死で魔女の攻撃をかいくぐるアテナ。だがいくら人類を超越した身体能力を手に入れた彼女でも、魔女の前では本当に時間稼ぎにしかならない。そもそも相手は、はなから人類ではないのだから。




気がつけばアテナ以外の全員が魔女によって倒されていた。



「そんな……」


絶望に暮れる彼女にゆっくりと魔女が近づいていく。


「お前は良く頑張った。正直人類を滅ぼすのにここまで時間がかかるとは思っていなかったぞ」


魔女はアテナの絶望しきった顔に手のひらをかざす。


「大丈夫。全員、死んでも一緒だ」


アテナの意識はそこで途絶えた。


子供たち十人は魔女によって全滅させられた。



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