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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
255/621

episode 255 「蟻と象」

「まさか十人も生き残るとはな。讃えるべきか、哀れむべきか」


魔女の言葉が聞き取れる。眷属となったからだろうか。


「今度は前のようにはいかない」


アスラたちは身構える。魔女の力に触れたお陰か、漠然としか感じられなかった魔女の気配がしっかりと感じられる。だが、それと同時に確かな差も実感させられる。正直十人束になったとしても埋められることができぬであろう圧倒的な差。それもそのはず、アスラたちの力は魔女によって与えられたものなのだから。



「言葉が理解できるか。お前たちも晴れて眷属だ。喜べ、そして膝まづけ」


有無を言わさぬ強烈な圧力がアスラたちを襲う。その圧力に押し潰されて強制的に膝をつかされる。


「いい眺めだ」


満足そうな表情の魔女。だがその表情はすぐさま曇った。


「……なに?」


圧力に押し潰されながらも立ち上がるハデス。ハデスだけではない、他の子供も徐々に立ち上がっていく。一番小さなモルガナでさえ魔女の圧力に対抗し、立ち向かう。



「そうか、結局死を選ぶか。賢いつもりか?」



魔女は手のひらをハデスに向ける。身構えるハデス。両手を目の前でクロスさせ、万全の態勢に入る。今なら巨大なゾウの体当たりも防げそうだ。


そんなハデスの防御をやすやすと打ち砕く強烈なエネルギー波が魔女から放たれる。ハデスの両腕はボロボロに粉砕され、ただの飾りと成り果てる。


「かっ!」


その攻撃がハデスの両腕に留まるわけもなく、数十メートル後方に吹き飛ばされる。



「次」



魔女の冷たい視線が残りの九人に浴びせられる。肉弾戦最強のハデスが瞬殺されたことで少なからずも彼らの中に動揺が走る。ルインもすぐにハデスの元へと駆けつけたかったが、目の前の怪物の視線から逃れられない。


背を向けたら殺される。確かな予感が感じられる。



「はぁああああああ!!」


しびれを切らしたのはモルガナだった。小さな手のひらにエネルギーをためていく。



「懐かしい。私が初めて魔術を覚えた頃、五千年前を思い出すな」



魔術は瞬間移動としか思えないほどのスピードでモルガナの目の前に現れる。そしてモルガナが全力で作り出したエネルギー弾に息を吹き掛ける。するとそれはまるでシャボン玉のように破裂する。


「え、そん……」


力量差に絶望する暇もなく意識をたたれるモルガナ。



「次」



次に冷静さを欠いたのはルインだった。幼馴染のハデスと可愛がっていた妹分がやられたのだ。危険だとわかっていてもそれを怒りが凌駕する。


「いい加減にしろや!」


魔女に鋭い蹴りをあびせるルイン。人類史上最速最強の蹴りが魔女の顔面に炸裂する。


「どうだ、少しは……」


倒せるとは思っていなかった。致命傷になるとも思わなかった。


「鬱陶しい」


魔女はルインの額に指を当てる。次の瞬間ルインは大量の鼻血を吹き出し、気絶する。ルインの蹴りは一ミリもダメージを与えられていなかった。



「次」



ハデスが、ルインが、モルガナが、為すすべなく倒された。認識が甘かった。結託すれば対抗できると信じていた。



蟻なのだ。象に勝てる道理など存在しない。



残された七人は誰一人として前に出ようとはしなかった。そこで魔女はローブの中からあの黒体を取り出す。



「再びこれに触れろ。そうすればお前たちの意思など軽く飲み込んでやる。楽しいぞ。世のしがらみから解放された無の世界は。もちろん楽しいのはお前たちではなく、私自身だが」



魔女が初めて笑顔を見せた。あれを笑顔と呼ぶならば。その顔を説明することなど出来なかった。アスラたちには到底理解できない、理解したくない表情だった。狂気、その言葉ですら優しく聞こえる。


「さあ、死にたくない者から前に出ろ」



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