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スティールスマイル  作者: ガブ
第六章 神々との戦い
253/621

episode 253 「幼馴染」

地上から降りてきたのは紛れもなくハデスだった。ハデスもアスラたちと同様、体に変化は表れており、彼の場合彼の持つ筋肉が異常なほど膨れ上がっていた。


厚さ五メートルはあろう岩盤を易々と砕き、高さ十メートルはあろう地下へと落ちても傷ひとつ付いてはいなかった。



「ルイン、下がれ……」



アスラがルインに話しかけるが、ルインは聞いていない。


「ルイン!」


ルインはそのまま話を無視し、ハデスに突っ込んでいく。


「目ぇ覚ませや!」


ルインは思いきりハデスの腹を殴り付ける。ルインの体は以前と変わらず細身で、その腕から繰り出されるパンチの攻撃力などたかが知れていた。鋼を越えるであろうハデスの肉体を殴りつければ、逆にルインの腕の方がダメージを負ってしまう。




ルインとハデスは同じ村で生まれ育った。物心ついた頃から親がいなかった二人は、自分たちを引き取ってくれた教会の人間に育てられた。


ルインより九つ歳上だったハデスは、ルインの面倒をよくみていた。ルインはそれがとても鬱陶しかったが、心のどこかでハデスを兄として慕っていた。


平穏な日々はいつまでも続くと思っていた。だが、魔女の訪れによって村は崩壊した。


教会の隠し通路を使って難を逃れたルインとハデスだったが、二人を逃がしてくれた教会の人々を始め、村の人々は全滅した。


絶望、その一言だけが頭に浮かんでいた。それでも先に進めたのは隣にハデスが居たからだった。その大きな体はとても頼もしかった。


だがその男は今、目の前に立ちはだかっている。それも自分たちを殺そうとして。




ルインの一撃は、おおよそその細腕から放たれたとは思えないほどの威力を生んだ。二メートル以上に膨れ上がったハデスの肉体を易々と吹き飛ばし、天井に叩きつける。またしても天井が激しく揺れ、無数の砂と石が降ってくる。


「避難するぞ!」


アスラの叫びでルインを除いた九人は地上を目指す。


「ルイン!」


モルガナがいつまでたっても上ってこないルインに向かって叫ぶ。


「アタシは残る! こいつを置いては行けないからね」


ルインはにっこり笑ってモルガナに親指を立てる。



「ルイーン!!」



モルガナの声は崩壊する地下の音で掻き消される。ルインとハデスは崩壊に巻き込まれ、消えていった。



無数の瓦礫が降り注いでくる。



(ああ、アタシここで死ぬのか。短い人生だったな)


岩を砕いていくが、次第に降り注ぐスピードに追い付けなくなり、体にダメージを蓄積させていく。



(ま、こいつと一緒ならあの世でもやっていけるかな)



隣のハデスも同様に瓦礫の攻撃を受けている。



「じゃあな、みんな」



ルインは抵抗をやめ、目を閉じる。


(なんだ、案外痛くないんだ。それとももう麻痺しちゃったのか?)


ルインの体から痛みが消える。瓦礫があたる感触もない。それでも瓦礫が降り注ぐ轟音はいつまでたってもなりやまない。


(何だか意識も途切れ……ない!)


崩壊がおさまっても意識がはっきりとしているルイン。不思議に思って目を開ける。



「ぎゃ!!」


目を開けた先にはハデスの膨れ上がった腹筋があった。ハデスは四つん這いになってルインを瓦礫から守っていたのである。思わずそれを蹴り飛ばしてしまうルイン。



「痛いじゃないか。ルイン」


「お前……」



ハデスはすっかり意識を取り戻していた。


「待たせたな」

「たっく、何百年待ったと思ってるんだよ」


二人は瓦礫をかき分け、地上へと上がる。そこにはそわそわとした表情のモルガナの姿があった。


「あ!!」


二人を見つけたモルガナは全速力で二人のもとへと駆けていく。





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