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スティールスマイル  作者: ガブ
第五章 最後の戦い
245/621

episode 245 「ミシェル神殿」

サンジェロの都。ここでゼロは老人に連れられ、ミシェル神殿へ向かっていた。。


「本当にそこに十闘神が現れたのか?」


老人に車イスを押され、神殿を目指すゼロが尋ねる。


「そうさ。私も孫が死んだ頃、よくここを訪れた」


ミシェル神殿にはたくさんの人が訪れていた。十闘神が現れたという噂は誰もが知っているようで、それを目当てに来ているようなものだった。



大天使ミカエル。十闘神第八神の名前だ。かつて世界を魔女から守った十人の子供の一人、ここサンジェロを創った神だ。ここではその伝説は本当の出来事だと信じられており、ミカエルは正に絶対的神として崇められている。



ミカエルが授けてくれるとされる加護は光の加護。すべてを打ち消す力だ。多くの場合、その力は他の加護を軽減、または消滅させる力を持つ。帝国軍元帥、イシュタルが手にする七聖剣エクスカリバーもミカエルの加護を受けていると言われている。


だがその強力にして異質な力ゆえ、この加護を手にしている者は非常に少なく、とても重宝されている。



そしてこの神殿の神官たちはその数少ない力の持ち主だ。




「ようこそ、ミシェル神殿へ。私はミハイル。ここの神官をしております」



ミシェル神殿に到着するなり一人の男が出迎えてくれる。長身で顔立ちのいい男だったが、その表情は柔らかい言葉遣いとは裏腹に固く、まるで人形のようだった。



「これはご親切に。ありがとうございます、ミハイル様」


老人が挨拶をすると、ミハイルは違和感のある笑顔を残してその場を去る。


「あの男……何者だ?」


去っていくミハイルから目をそらさずに尋ねるゼロ。


「あの方はミハイル様。ミカエル様から力を授かったとても信仰心の強いお方だ。くれぐれも粗相の無いように」


老人の言葉の通りミハイルは熱心な男のようで、その証拠に神官たちにも巡礼者たちにも好かれているようだった。だがゼロはどうもミハイルの事が信用できなかった。彼の表情がまるでアーノルトや自分を見ているようだったからだ。



「ミハイル様は信仰心以外の感情を無くされているんだ」



ゼロの心を呼んだかのように独り言をいう老人。


「ミハイル様だけではない、加護を授かった他の神官様も同様に感情を無くされている。まるで感情は必要がないかのように。加護によって否定されているかのように」


老人を不思議そうな顔で見るゼロ。思わず口を押さえる老人。


「いかんいかん。喋りすぎてしまったね。さあ中に入ろう。しっているかい? ここは怪我の治りが早いんだ。これもきっと神のご加護なのだろう」


そう言って老人はゼロを乗せた車イスを神殿の中へと押していく。



「……」



ゼロはその中の光景に言葉を失った。外見からは想像ができないほど人が溢れているからではない。明らかに空気が違うのだ。彼ら神官の力が目に見えるほどに強い。自分の力にある程度自信を持っていたゼロだが、彼らには敵わないと本能で悟る。いや、たとえ組織全員でかかったところで、彼らの内の何人かを戦闘不能にするのがやっとだろう。


光の力。それはすべてを打ち消し、すべてを覆い、すべてを否定する力。対抗する術はない。そもそも闇の住人であるゼロが叶う道理など無かった。



それだけではない。ここに踏みいってから明らかに体が軽い。全く力の入らなかった足に僅かだが力を感じる。



(俺は敵ですらないということか……神よ)



ゼロは全身の力を抜く。そして神の力を身に浴びる。


(いいだろう。その力、利用させてもらう。俺にはやるべき事がある。神でも悪魔でも利用できるものは利用させてもらう)


心のなかでニヤリと笑うゼロ。その懐は光さえ届かない。その心は光でさえ覆うことはできない。


ゼロは力を蓄える。大切な人を救うために。








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