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スティールスマイル  作者: ガブ
第五章 最後の戦い
241/621

episode 241 「力の恐怖」

ヴィクトルは見覚えのある場所で目を覚ました。ひどくからだが痛み、何があったのかすぐには思い出せない。


「む……」


誰の姿も見えない。


(シェイクはどうしたのだ。ドエフは?)


少しずつ頭が冴えてくる。


(たしか、レイアさんを助けに……)



ガイアの居場所を聞くためにメイザースに会いに大神殿に向かったヴィクトルたち。しかしそこでメイザースにレイア奪われてしまった。そのメイザースに戦いを挑んだはずだった。


だがここは明らかに大神殿ではない。テノン神殿のどこかだろう。



「起きたっすか。よかったっす」



シェイクが死人のような顔で部屋に入ってくる。いつもはムードメーカー的立ちいちのシェイクのそのような表情を見たのは出会ってから初めてのことだった。



「レイアさんは助けられなかったのだな……」


ヴィクトルの質問にシェイクは目をつぶる。その顔に救出失敗以外の何かを感じるヴィクトル。


そういえばドエフがどこにも居ない。背筋が凍るヴィクトル。シェイクの方を見るが、今にも泣き出しそうな顔をしている。ヴィクトルはドエフの死を確信した。



「……墓はどこなのだ?」



墓はこの神殿の下にあった。このテノン神殿の下には比較的墓は少なく、ドエフの墓はすぐに見つけられた。


ドエフの体のようなとても大きな墓だった。知らない人が見たら権力者と勘違いするかもしれない。


「ドエフ……」


ヴィクトルは墓に近づく。そして墓に刻まれたドエフの文字を見たとたん、泣き崩れて墓に抱きついた。



「済まぬ、済まぬ!」



ドエフに涙を擦り付けるヴィクトル。地下にヴィクトルの鳴き声が響き渡る。シェイクも天を見上げ、涙を流す。また一人、仲間を失った。




大神殿。レイアは体の内から溢れそうな力に耐えきれず目を覚ました。体は縛り付けられているようで、身動きがとれない。


「うう……」

「起きたか。まったく、寝相の悪いお嬢さんだ」



目を見開くレイア。そこには想像を絶する量の血が飛び散っていた。それがメイザースのものである事、そしてそれをやったのが自分である事がおもいしらされる。


「君が眠っている間、私は三十二回も殺されたよ」


首をコキコキとならすメイザース。レイアの両目から涙が溢れそうになる。



「戻してください! もとのわたくしに……!」



悲痛なレイアの叫びを、メイザースは軽く聞き流す。


「それはダメだ。そもそもそんなこと私にはできない。私は神ではないのだから」


レイアに近づき、顔に触れるメイザース。が、次の瞬間、その手は大量の血を撒き散らしながら爆発して消滅する。


「おお、怖い怖い」


メイザースはあっという間に手を復元し、レイアから離れていく。レイアは顔面に大量の血を浴びながらメイザースを睨み付けている。


「あなたが神でないのなら、あなたから与えられたこの加護もまた、完全ではないのでは?」


レイアの言葉ににやけ顔が収まるメイザース。


「賢い人間だ。確かに今君の力はこの神殿から引き出しているものだ。ここから遠ざかれば自然と力は失われるだろう。だがそれも時間の問題、時が経てば経つほど力は君に馴染み、君のものになっていく。そうすれば君は立派な兵器さ」


メイザースはこれまでにないほど満面の笑みをレイアに向ける。



「それまでここでおとなしくしていてくれないか?」


そう言ってメイザースはレイアを残して部屋を出ていく。


(ガイアさん……ゼロさん……助けて)


レイアは大粒の涙をぐっとこらえる。底知れぬ不安と恐怖に抗う。必ず助けが来ると信じて。

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