episode 24 「盗賊団」
ゼロたちは街道を歩いていた。
人が多ければそれだけトラブルも多い。金品目当てに何度も盗賊に襲われる。もちろんゼロはおろかケイトにすら敵う者はいないので難なく対処できるのだが、見ず知らずの人間にいきなり襲われるというものは精神的にくる。特にレイアはだいぶ憔悴していた。
そこで襲ってきた盗賊の一人を縛り上げ、アジトを吐かせることにした。
どうやら盗賊たちは近くの岩場にアジトを構えているらしい。そこにはさらってきた女や奪ってきた食料が保管されていて、闇取引で売りさばかれているようだ。
それを聞いたレイアはひどく悲しみ、そして怒った。
「人をさらって売りさばくなんて許せません!助けに行きましょう!」
「レイア、気持ちはわかるが俺たちは追われる身だ。人の事までかまっている余裕はないぞ。」
下を向いてしまうレイア。もちろんそんなことはわかっていた。
「でも・・・!見過ごすなんて。」
レイアの頭をポンっとたたくゼロ。
「誰も助けに行かないとは言っていない。お前がそうしたいというなら俺もそうする。俺はお前のボディガードだからな。」
「ゼロさん・・・」
上目づかいで喜ぶレイア。
「お前も手手伝ってくれ、頼りにしている。」
レイアにかまってばっかりで不貞腐れていたケイトにも声をかけるゼロ。当然ケイトも快く承諾する。
捕えた盗賊に無理やり協力させ、アジトを目指す。
アジトには三十人ほど仲間がいるらしい。
「中にはお尋ね者もいるぜ。今のうちに俺を開放して逃げた方が身のためだと思うがね。」
盗賊の話を無視して先に進む。
アジトに到着し、レイアとケイトを縛るゼロ。
ゼロは茂みに隠れて様子をうかがう。
「おーい。女を連れてきたぞ。」
盗賊は銃で狙われているため、ゼロの指示通り三人をとらえたと報告する。
「オー良くやった。こいつは上玉だな。うん、このチビもマニアに高く売れそうだ。」
見張りの盗賊はなめまわすような目でレイアとケイトの品定めをする。縮こまるレイア。それを見ていやらしそうに笑う盗賊。今にも手を出しそうだ。たまらずゼロも前に出る。
「ん?なんだ貴様は。そこで何してる。」
見張りはサーベルを取り出す。
「待ってくれ、俺も仲間に入れてくれないか?」
演技をするゼロ。何とか注目を自分に集めようとする。
「仲間にだと?それは俺が決める事じゃない。ボスが決めることだ。とりあえずボスに会わせてやる。万が一御眼鏡にかなったら仲間にしてやろう。だがボスの気に障ったらお前は殺す。わかったな。」
手をあげながらゆっくりと盗賊に近づくゼロ。盗賊はゼロのボディチェックをし、武器がないことを確認するとロープで縛ってアジトへと入れる。
アジトの中にはたくさんの盗賊がいた。血のにおいが充満し、そしていたるところでとらえられた女が凌辱されていた。
レイアはケイトの目を覆い、自らも目を背ける。新しい女の登場に湧き上がる盗賊たち。
ゼロは怒りを抑えながら盗賊についていく。
「ははは。怖いか?ボスはもっと怖いぜ。気に入らなければ容赦なく仲間も殺す。裏社会の人間って噂だ。ま、この話をすると殺されちまうから本当かどうかわからないがな。」
顔を見合わせる三人。ケイトは冷や汗をかいている。三人とも縛られ武器もない。ボスが組織の人間だとしたら非常にまずい。何とか対抗手段を考えるが、その前にボスのいる洞窟についてしまった。
「この扉の向こうにボスがいる。気をつけな、態度を間違えれば気が付いたらあの世だぜ。」
盗賊の言葉に覚悟を決めるゼロ。
ふと異変に気付く。
この周りだけ空気が違う。血の匂いはもちろんのこと、あれほど岩場に充満していた獣臭さも全くしない。心地よささえ感じる。その原因は扉の向こうにあった。
「ボス、仲間になりたいという男を連れてきました。」
扉を開ける盗賊。
その向こうは部屋になっていて、ボスらしき者が椅子に座っていた。
ボスと目が合うゼロ。
「なッ!」
ボス見るや否やすぐさま逃げ出そうとするゼロ。が、しかしすぐに動きが止まる。
「あら、逃げ出そうとするなんてひどいわ、ゼロ君。」
ボスを見て震えるケイト。
「そんな・・・何であんたが。」
「あらケイトちゃんじゃない?どうしてあなたがゼロ君と一緒にいるのかしら。」
ボスは女だった。
ロングコートを羽織り、抜群のプロポーションを誇るその女はゼロとケイトの顔見知りのようだ。
「あなたは、組織の人間なのですか?」
恐る恐る尋ねるレイア。
女は足を組んで妖艶な笑みを浮かべる。一瞬ドキッとしてしまうレイア。ゼロは未だにピクリとも動かない。自分たちを連れてきた盗賊も目がうつろになり、硬直している。
「あの女はN、組織の殺し屋ニコル。」
ケイトはニコルから目をそらして話す。
「ニコルよ。よろしく、レイアちゃん。」




