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スティールスマイル  作者: ガブ
第五章 最後の戦い
238/621

episode 238 「大司祭メイザース」

大神殿はその名の通り、とても巨大な建造物だった。それを目にとらえたとたん、レイアは歓喜の声をあげる。


「あ! あ! あれはなんですかヴィクトルさん! 神殿ですか? 神殿ですね!?」

「う、うむ」


レイアの異様なテンションに若干引きぎみのヴィクトル。



(よかった。わたくしは邪悪では無かった!)



満面の笑みを見せるレイア。そんなレイアの様子を見て、気まずそうなヴィクトルの脇腹をつつくシェイク。


「な、何をするのだ!」

「あんな無垢な子を騙すなんて……リーダーの方がよっぽど邪悪っすね」

「うるさいのだ!」


顔を真っ赤にするヴィクトル。


「どうしたのですか? 早くいきましょう」


なにも知らないレイアはヴィクトルの手を引っ張る。


「うぅ……」


ヴィクトルは罪の意識に苛まれる。



メイザース大神殿。テノン神殿の大元。万を越える信者たちがここに集まってくる。テノン神殿の最大の特徴は信者たちにはもれなく加護が授けられることにある。その力に大小は存在するものの、その特典は人々を大変魅了した。


そのなかで特に戦闘系の加護を受けた者は戦僧として国の保護、そして異教徒殲滅任務にあたるのである。


メイザース大神殿は十闘神アテナよって直接加護を与えられたメイザースがつくった神殿である。メイザースに与えられた加護は不老不死。アンと同様のものである。この力を使い、メイザースは千年にもわたって神に尽くしていると噂されている。




「人が千年も生きることなど可能なのでしょうか?」


ヴィクトルから説明を受けたレイアが不思議そうな顔をする。


「もはやあの方は人ではないのかもしれんな……」


ヴィクトルは冷や汗を流す。


ヴィクトルはメイザースが嫌いだった。ヴィクトルだけではない、シェイクもドエフも死んでいった戦僧たちはみなメイザースが憎かった。


神に導かれたくて神殿の扉を開けた彼らに待っていたのは救いとは正反対の殺戮の日々だった。それをさせた張本人であるメイザース。戦僧たちはそんなメイザースを殺したいほど憎んでいた。


もちろん、不老不死の加護を持つメイザース相手にそれはできない。その現実が彼らを余計に苦しめた。



「着いたぞ」


ヴィクトルは大神殿の扉に触れる。すると扉はひとりでに開く。



「待っていたよ、ヴィクトル・ルドガー」


大神殿の内部には一人の少年が立っていた。その服装からしてただ者ではなさそうだ。レイアは直感でその者がメイザース大司祭だと理解した。



「君がレイア・スチュワートだね。よろしく」


メイザースが手を差し出す。どうして名前を? と訪ねようとするレイアだったが、すぐに愚問だと考え、口を閉ざす。相手は千年も生きている人間だ。


メイザースの手を握った瞬間、レイアの中に何かが流れてくる。


「おめでとう。これで君も加護を受けた」


衝撃的な事を口にするメイザース。横にいたヴィクトルたちも唖然としている。


「さてさて、どんな加護を受けたのかな?」

「え? え?」


混乱するレイア。そんなレイアを思い切り突き飛ばすメイザース。


「きゃ!」


レイアは抵抗することなどできずに床に倒される。




「だ、大司祭様! 何をするのだ!」


我慢できなくなったヴィクトルがメイザースと前に立ちはだかる。



「ヴィクトル・ルドガー。さがりたまえ」


メイザースは人差し指をヴィクトルの額に当てる。するとヴィクトルは有無も言わせぬ謎の力で遥か後方に吹き飛ばされる。


「リーダー!」


シェイクとドエフが急いでヴィクトルの方へと向かう。気絶しているようだが、命に別状は無さそうだ。



「何て事を……」


床に転ばされながらもメイザースを睨み付けるレイア。自らに向けられる敵意に喜ぶメイザース。


「いいぞ、その調子だ。さあ、何でもいい、私に攻撃してみろ! 安心したまえ、私は不死身だ!」


叫ぶメイザース。レイアは怒り、混乱している。



「何をしている。次はシェイク・スーを吹き飛ばすぞ?」


メイザースの手のひらから黒い塊が出現する。それがシェイクに当たればどうなってしまうか、想像すらしたくない。



「この人でなし……」

「ああ、そうだ。私は人ではない」



メイザースに攻撃をやめる意思は見られない。レイアはメイザースに敵意をぶつける。


シューと音がする。みるみるうちにメイザースの肌がしぼんでいく。


「お? お?」


艶々な子供の肌を持つメイザースが徐々によぼよぼになっていく。


「私の中の……水分を……奪っているのか?」



シェイクはその光景に恐怖を覚えていた。


「レイアさん?」



レイア自身も目の前で死に近づいていく少年の姿を見て発狂寸前だった。何しろそれを行っているのは自分自身の謎の力なのだから。



「きゃ……」


レイアはその場で気絶する。



「なんだ、もう少しだったと言うのに」



よぼよぼになったメイザースは一瞬でもとの姿に戻る。そしてレイアを抱え、その場を去ろうとする。



「シェイク・スー、ドエフ・スキー。感謝しよう。新たな戦僧の誕生だ。そしてお前たちも感謝しろ。お前たちにはまだ利用価値があるようだ、処分は先延ばしにするとしよう」



シェイクとドエフにメイザースを止めることはできなかった。メイザースはレイアとともに姿を消した。





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