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スティールスマイル  作者: ガブ
第五章 最後の戦い
234/621

episode 234 「ヴァルキリア」

ジャンヌの初撃はなんの変哲もない正面からの斬りつけだった。だがその一撃はアーノルトが今まで受けてどの攻撃よりも重く、鋭かった。


「あら、一応一撃で決めるつもりだったのだけれど」


ジャンヌは必殺の攻撃を止められたことに多少驚くが、追撃の手を緩めない。


激しい打ち合いか続く。何とかジャンヌから距離をとりたいアーノルトだったが、そんな隙は存在しない。攻撃を受けるのがやっとのことだった。



戦いの様子は小屋に押し込められている子供たちにも伝わった。


「この衝撃……あの人だ」

「来てくれたんだ」

「来てしまったんだ」


歓喜に震える者、感嘆の声を漏らす者。アーノルトの勝利を誰もが望んでいた。


だがアーノルトの力はまだまだ本気のジャンヌには及ばないようだ。


だんだんとジャンヌの手数にアーノルトが対処しきれなくなっていく。マリンにもらった魔法の服がなければとっくに血を撒き散らしているだろう。その魔法の服の性能にはジャンヌも驚きを隠せなかった。


「それにしてもその服、加護でも受けているのかしら。とても普通じゃないわ」


マリンの服はジャンヌの攻撃を完全に防いでいた。服に剣が食い込む瞬間、まるでどこかに衝撃を飛ばされているような感覚だ。


(空間転移? 時間操作? どちらにせよ十闘神第二神の力ね。でもこの三日間でどうやって……あ、時間操作の加護を受けているなら時間の超越が可能なのかしら)


戦闘の最中に堂々と考え事をするジャンヌ。今までの敵ならそれでもよかったが、今のアーノルト相手では些か驕りが過ぎる。


「うわっ!」


ジャンヌを退かせるほどにアーノルトのクナイは威力を増していた。



「余裕だな。できればそのまま死んでくれ」

「そうね。今はどうでもいいわね。そんな事。今とっても楽しいもの」


ジャンヌは体の力を抜く。


「あなたには感謝しているの。一応言っておくわ。もう言えないかもしれないから」

「どういう意味だ……」



次の瞬間、ジャンヌの体からとてつもないエネルギーが生まれる。その衝撃に耐えきれず吹き飛ばされるアーノルト。


「な、何だこれは!?」


ジャンヌから解き放たれた力はとても人間個人に引き出せる力ではなかった。


(これでは……まるで神……)



「私たちヴァルキリアはね、ただの人間だけれどただの人間じゃないの」



ジャンヌはゆっくりとした口調で語り始める。隙だらけだったが、アーノルトは近づくことすらできない。触れてはいけない何かが目の前には存在していた。



「ローズもリズも気がついていないだけ。私たちは生まれながらにして加護を受けている。いいえ、それ以上の何かを持っている」



一歩一歩とジャンヌは近づいてくる。アーノルトはただ立ち尽くすことしかできない。体が動かない。



「ヴァルキリアは十闘神アテナの子孫なの」





何もない空間。そこに黄色いツンツン頭の男が一人。服装はまるで忍者のようだった。



「現れたらしいな。あの魔女が」



その空間にまた一人男が現れる。男の見た目はごく普通の少年だった。歳は十五、六だろうか。ただひとつ人と違うとすれば頭から立派な二本の角が映えていることだろうか。


「アスラか。ああ、そのようだ」


黄色い髪の男は角の男の呼び掛けに答える。


「マリン。忌々しき魔女の血族。今度こそ息の根を止めてやる。手を貸してくれ、スサノオ」

「ああ。アレスの意思は俺たちが継ぐ。この世界を守るという意思を」



十闘神アスラ、十闘神スサノオ。二人の男はどこかに姿を消した。








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