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スティールスマイル  作者: ガブ
第五章 最後の戦い
223/621

episode 223 「神と人」

アンは体の調子を確かめる。体はおかしな方向に曲がり、骨がむき出しになっている。


「問題ありませんね!」


常人ならとっくに死んでいるであろう状況だが、アンはアテナの加護により不死である。それはアテナが拾った剣、ダインスレイブとの相性も抜群だった。


七聖剣ダインスレイヴは魂をすいとる剣。そしてそれを力に代える剣。だが他者の魂をすいとらなければ自らの魂をすいとられてしまう諸刃の剣。ガイアですら使いこなすのには年月と命を費やした。だがアンにはすいとるべき魂が無限に存在している。ダインスレイヴを使う上でのデメリットは無いに等しい。


ダインスレイヴはアンの意思とは関係なく周りの死体の血を吸いとっていく。命の脱け殻でもその残り火がアンに力を与える。その死体の中には苦楽を共にしたイバルら訓練生のものも含まれていた。


「なんだか元気がわいてきました!」


アンはスキップしながら神殿の方へと向かった。自らのなかにイバルたちの魂が流れ込んでいることなど露知らず、いやたとえ知っていたとしてもアンの心境に変化はないだろうが。




「で、そろそろ話してくれても良いんじゃないすかね。あんたらが何者なのか」


シェイクがガイアに尋ねる。ガイアは少し考えるがシェイクに語り出す。


「俺はモルガント帝国軍准将、ガイア・レオグール。ある任務で彼女、レイアと共に行動していた」


シェイクはモルガントの名が出た瞬間、細い目を少し開く。


「帝国軍、やはりそうすか。その軍服どこかで見たと思いました。でも准将サマとは思わなかったっす」

「どうしたんですか、シェイクさん?」


シェイクの声に敵意が混じっていることに気がつき、不安になるレイア。


「レイア、俺たち軍人は少なからず恨みを抱かれている。他国ならなおさらだ」


ガイアはなれているといった様子でレイアの方を向く。


「まあ、あんた個人に恨みはないっすけどね」


シェイクだけではない、他の戦僧も同じ感情のようだ。





「あ、食べ物があります!」


アンが昨夜までレイアたちがいた神殿に到着した。そこにはレイアが作ったサラダが残っており、アンは嬉しそうにそれをむさぼる。だが加護の副作用によってほとんどの感覚を失ってしまったアンに、サラダの味を感じとることはできない。


「変ですね、美味しいのに美味しくない……ま、どうでも良いですけどね」


もっとも、細かいことは気にしない性格のアンにとってそれは些細なことだったが。


食事を済ませたアンはこの神殿を去ろうとするが、なぜか体が動かない。思えばなぜこの神殿に来たのかも、アン本人には説明できない。まるで引き込まれるように気がつけばここにいた。アンはあるものに目が釘付けになる。



「きれい……」



生まれて初めて発したであろう言葉と抱いた感情に驚くアン。それは十闘神アテナを描いたレリーフだった。アンは夢の中でアテナにあったときの事を思い出す。


「アテナ、様?」


アテナの姿が鮮明に浮かび上がる。


「アテナ様!」


アンはアテナのレリーフの前に膝まづく。


「アテナ様! 私殺します! 殺して殺して殺します! アテナ様の敵を滅ぼします! だから私に敵をください!」


アンは狂ったように叫び続ける。だがレリーフは何も答えない。


「わかりました、まずは異教徒ですね。探します、不穏分子を抹殺します!」


アンは一人でに頷き、神殿を飛び出していく。


「ハハハハハ! 私、選ばれたんだ! 神に選ばれたんだ!」


アンはダインスレイヴを振り回しながら人の気配のする方へと走っていく。




アンがいなくなった神殿。そこに立ち尽くす二人の人影。


「だから言ったであろう。人に未来は無いと。導く必要はないぞよ」


紫色の髪で顔を隠した女性が口を開く。気のせいだろうか、少し浮いているようにも見える。


「確かに人は愚かだ。奪い、憎しみ、殺し会う。だからこそ導く必要があると私は思う」


オレンジの髪の騎士風の女性が答える。アンの夢に出てきた女性、十闘神アテナだ。


「だとしたらお主の選んだあの少女、本当に適任かえ?」


紫色の髪の女性が走り去るアンを汚いものでも見るように睨み付ける。


「それは彼女次第だ」


アテナはそう言い残して何処かへと姿を消す。



「ミカエルのように滅ぼしてしまえば良いものを……」


紫色の髪の女性も在るべき場所へと戻っていく。



「待っていてください神様! 私、きっとお役にたちますから!」


アンにとって今ほど生きていると実感した時はないだろう。それほどアンの顔は生き生きとしていた。






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