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スティールスマイル  作者: ガブ
第一章 ゼロとレイア
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episode 22 「キャプテン」

次の日、レイリーの家を後にした一行はモルガント行きの船を求めて港に来ていた。港には大小さまざまな船があったが、何故か出航しているものは一つもなかった。


「あんたたち、どこかいきたいのか? だとしたら運が悪かったな」


立ち往生していたゼロたちに船乗り風の男が話しかけてきた。


「どういうことでしょうか」


レイアが心配そうに尋ねる。


「昨日、近海の海で巨大生物が現れたって連絡が入ってな。今モルガント帝国軍に討伐を依頼してるんだ。それまで船は出せないんだよ」


船乗り風の男は、見事な上腕二頭筋をレイアにアピールしながら答える。すかさず二人の間に割ってはいるゼロ。


「しばらくとはどのくらいだ?」

「んー今朝連絡したんだが、到着には2日はかかるだろうな。それから調査をして、場合によっては援軍を呼ぶかもしれない。10日は出せないだろう」


船乗りの言葉を受けて、不機嫌な顔になるゼロ。ケイトは、まさかまたレイリーの家に戻るのでは? と冷や汗をかいている。


「巨大生物が出没したポイントは分かっているのか」

「ん、ああ。船長なら知ってると思うぜ」


ゼロの質問に、船乗りは港にたたずむ一人の男を指差す。その男は60は越えているであろう老人だったが、肌には艶があり体つきもしっかりしていて、まさに海の男といった感じだった。


「聞きたいことがある。巨大生物が現れたポイントを知っているといのは本当か?」


ゼロが立派な白髪の髭を蓄えた黒光りする老人に訪ねる。


「ん、なんだ坊主。口の聞き方がなってないな」


老人はしっしっと手を振る。さらに不機嫌な表情を見せるゼロを見たレイアは、このままではまずいと代わりに尋ねる。


「お願い致します、おじいさん。できる限りのお礼はさせていただきますので、教えて頂けないでしょうか?」


レイアの丁寧な対応ににっこりと笑う老人。


「お嬢ちゃんはわかってるねぇ。そっちの坊主とは大違いだ。ただひとつ間違いがある。俺はおじいさんじゃない、キャプテンと呼びな」


キャプテンはついてこいと三人を船の中に案内する。それほど大きな船ではないが、くつろげるだけのスペースはあった。


「ありゃタコだった」


そういってキャプテンは一枚の写真を出す。その写真には確かにタコが写っていたが、いまいち大きさがわからない。キャプテンは10メートルはあったと騒ぐが、 そんな事例は聞いたことがない。キャプテンは一通り騒いだあと、今度は自分の若い頃の話を語り出す。嘘か本当かわからない冒険話を楽しそうに聞くレイア。すっかり気分のよくなったキャプテンは快く、巨大生物が目撃された地点まで船を出してくれることになった。


「行ってどうする気だ」

「もちろん、俺が退治する」


それを聞いて更にテンションの上がるキャプテン。


「はっ! いいじゃねぇか。見事退治できたら俺が責任もってどこまででも連れていってやる。たこ焼きパーティでもやりながらな。死んでも安心しな、俺たち船乗り全員で弔ってやる」


ゼロとキャプテンは握手を交わす。

初めての船旅にテンションの上がるレイア。対称的にゲロゲロのケイト。どうやら船とは相性が悪いらしい。


「で、本命はどっちなんだ」


船が落ち着くと、キャプテンが下品な顔で聞いてくる。


「なんの話だ」


質問の意味は何となく理解できるが、答える気など微塵もないゼロはわざと知らないふりをする。


「金髪の嬢ちゃんとちっこい嬢ちゃんのことさ。やっぱり本命は金髪の嬢ちゃんか? それともちっちゃいこに興奮するタチか?」


ぐへへへと下品に笑うキャプテンを無視してブリッジに出るゼロ。ほどよく当たる潮風が心地いい。ふと横を見るとヒラヒラと髪をなびかせてレイアがこちらを見ていた。


「最近色々と大変だったですけれど、わたくし今とても幸せです」


レイアの眩しい笑顔に思わず顔を背けてしまう。その先には不機嫌そうなケイトがいた。ケイトがゼロに抱きつこうとしたその時、キャプテンが慌てて操縦室から出てきた。その表情は先程のゲスな顔ではなく、真剣そのものだった。


「ソナーに反応だ! ヤツが来るぞ!」


その言葉の直後、ゴポゴポと海底から泡が立ち込める。そして徐々に大きな影が見えてくると、船は大きく揺れ始めた。とてつもない音をあげて現れたそれはゼロの予想を遥かに越えていた。


「10メートルだと? 倍はあるじゃないか……」


海中から現れたその怪物は、文字通り山のようだった。巨大なタコは船とそれに乗るゼロたちを発見すると、それを破壊すべく突進してきた。直撃でもされようものなら、ゼロたちは海の藻屑だ。ゼロは銃に手をかけ、ケイトもロープを握りしめる。

さぁ海上戦の始まりだ。

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