episode 214 「ガイアとレイア」
「うぅ」
レイアは神殿のような場所で目を覚ました。直前の記憶がまるで無く、なぜここにいるのかわからない。
「気がついたな」
一人の男が近づいてくる。
「あなたは確か……」
「ガイアだ。どうやらここに流れ着いたのは俺たち二人だけのようだな」
やって来たのはガイア・レオグール准将だった。足は怪我をしているのか引きずっている。
「あの、わたくしたちどうしたんでしょうか?」
「覚えていないのか。無理も無い、あんなものを見てしまったのだからな」
三時間前。
二人は海岸に流れ着いた。ガイアはレイアを濁流から庇った衝撃で足の骨を折ってしまった。
ガイアに庇ってもらったため比較的外傷も少なくすぐに目覚めたレイア。ゼロと握っていた手は離れてしまっていた。
「だ、大丈夫ですか!?」
足がおかしな方向に曲がるガイアを発見し、すぐに駆け寄るレイア。
「問題ない。お前は無事か?」
折れた足を流れ着いた木片で固定しながら答えるガイア。
「はい。一体何があったのでしょうか?」
記憶が混乱しているレイア。
「わからん。中将の叫び声がしたとたん、いきなり島が崩壊し始めた。おそらく他の者たちもどこかに流れ着いているはずだ。生死は不明だがな」
「え?」
ガイアが反らした視線の先を見つめるレイア。そこには四肢が飛び散っており、辺り一面が赤く染まっていた。
「うぅぅっ」
吐き気を催すレイア。そしてそのまま意識を失った。
レイアが運ばれてきた神殿は人の気配がせず、無人のようだった。だが生活に必要な設備はすべて揃っており、まるでホテルのようだ。
「どうやらここは巡礼者たちの宿泊施設のようだ。怪我がなおるまでしばらく使わせてもらう」
ガイアは用意されていた椅子に腰かけ、パンを頬張る。
「そのあとはどうするのですか?」
「国へ戻り、元帥殿に報告する。そして部下の捜索部隊を編成してもらう。お前はどうする? 俺はこの足だ。送ってやることは出来ないが、先を急ぐなら俺に付いている必要はない」
レイアにここを離れる意思はなかった。
「あなたをこのままにして行くことはできません。わたくしが看病いたします」
「そこまでする必要はない。俺は軍人だ、民間人の世話になるわけにはいかない」
きっぱりと答えるガイア。
「でしたら取引いたしましょう。わたくしはあなたを支えます。ですからあなたもわたくしの頼みを聞いてください」
「どういうことだ?」
レイアはベッドから立ち上がり、ガイアのもとまで行って手を握る。
「ゼロさんを探してください! 元帥さんに部下の皆さんを探していただく際に、ゼロさんも探してください! お願いいたします!」
涙を浮かべながら頭を下げるレイア。
「……あの青年か。お前にとってあの青年は何なんだ」
「大切な人です!」
恥ずかしげもなく、ガイアの目を見て答えるレイア。ガイアも真剣にレイアの目を見つめる。
「……腹が減ったな」
「えぇ!?」
思いがけぬ言葉に変な声が出てしまうレイア。
「久しぶりに誰かの手料理が食べたい気分だ」
レイアにウインクするガイア。
「は、はい! すぐに準備いたします!」
レイアは涙を拭き取り、元気よく答えて久しぶりに自慢の腕を奮った。




